著者
百瀬 公人 三和 真人 赤塚 清矢 伊橋 光二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0067, 2007

【目的】正常歩行中の遊脚相における膝関節屈曲は、積極的なハムストリングスの筋活動によるものではないと言われている。正常歩行中には遊脚相の後半でハムストリングスの筋活動が認められるが前半には見られない。遊脚相の膝関節屈曲は、下肢全体が伸展している時に大腿部の屈曲が生じることにより下腿が二重振り子状態となりその結果屈曲すると報告されている。片麻痺患者ではハムストリングスの単独収縮が困難なことや大腿四頭筋の筋緊張の亢進もあり、歩行中の膝関節屈曲は困難である。しかし、片麻痺患者でも二重振り子の作用を用いれば積極的なハムストリングスの筋収縮を必要とせず、大腿四頭筋の筋緊張の調整を学習することで、遊脚相の膝屈曲が可能となることが示唆される。正常歩行中にはハムストリングスの筋活動が遊脚相前半では見られないが、歩行速度が遅くなると二重振り子の働きが弱くなり、下腿を筋力で保持しなければならないと思われる。二重振り子の作用が有効に働く歩行速度以上であれば、片麻痺患者でもハムストリングスの筋収縮を必要とせず下腿を屈曲することができ、遊脚時のクリアランスは十分にあることになると思われる。そこで今回の研究の目的は、健常者において歩行速度を変化させ、遊脚相のハムストリングスの筋収縮状態から二重振り子を利用し始める歩行速度を明らかにすることである。<BR>【方法】被験者は健常な男性7名で、平均年齢20.0±0.5歳、平均身長170.7±2.7、平均体重642.4±6.2kgであった。歩行の計測には3次元動作解析装置と床反力計、表面電極による動作筋電図を用いた。3次元動作解析で得られたデータはコンピュータにて解析し、関節角度などを算出した。筋電図は内側広筋、大腿二頭筋長頭等より導出しバンドパス処理後、全波正流し、最大収縮時の積分値をもとに歩行時の筋活動を積分値の百分率として求めた。歩行はメトロノームにてケイデンスを規定し、ゆっくりとした歩行から速い歩行までを計測した。<BR>【結果】ハムストリングスの筋活動はゆっくりとした歩行から速い歩行まで計測された全ての歩行で筋活動が見られ、筋活動がほとんど無い二重振り子の作用が明らかとなる歩行速度は求めることができなかった。<BR>【考察】いわゆる正常歩行ではハムストリングスは遊脚相の後半で筋活動が認められる。今回の結果では、ハムストリングスの筋活動は歩行速度に影響を受けなかった。歩行速度をケイデンスで規定しようとしたため、メトロノームに合わせることが歩行時のハムストリングスの筋活動に影響したと考えられる。今後は歩行速度を厳格に規定しない方法での研究が必要であると思われた。<BR>【まとめ】歩行速度がハムストリングスの筋活動に与える効果について、3次元動作解析と筋電図を用いて解析した。ケイデンスを規定するとハムストリングスの活動は速度による影響をあまり受けなかった。
著者
赤塚 清矢 神先 秀人 内田 勝雄 永瀬 外希子 高橋 俊章 佐藤 寿晃 千葉 登 後藤 順子 藤井 浩美 熊谷 純 八木 忍 日下部 明
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 : 山形県立保健医療大学紀要 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-34, 2013-03

生涯を通した健康づくりと総合的な介護予防の推進は,やまがた長寿安心プランの重点課題の一つとして掲げられており,急速な高齢化に向けた対策が急務である.本研究の目的は,我々が開発した介護予防体操の負荷の大きさと安全性を検討することである.日常生活が自立した地域在住者12 名を対象に,花の山形!しゃんしゃん体操(Ver.Ⅰ),新たに開発した介護予防体操(Ver.Ⅱ),対照としてNHKラジオ体操第一(ラジオ体操)を実施し,体操中の酸素摂取量を計測して比較した.その結果,Ver.Ⅰと比較しVer.Ⅱが、酸素摂取量,二酸化炭素排出量,代謝当量が大きく,Ver.ⅡはVer.Ⅰより負荷量が大きかった.呼吸商,呼吸数,心拍数,自覚的疲労度は3 つの体操において同程度であった.Ver.Ⅱは,心拍数や疲労感を上げずに負荷量を増加させることができ,高齢者や運動習慣のない者にとって安全で効果的な介護予防活動の手段であることが考えられた. キーワード:介護予防体操,酸素摂取量
著者
早坂 恵莉 志鎌 瑶 赤塚 清矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.53-58, 2019 (Released:2019-10-07)
参考文献数
9

【目的】 医療系大学生は医療や健康に関する関心が高く,良好な生活習慣の維持に努めていると予測され,行動変容ステージは高位であると予測される。今回,医療系大学生を対象に,身体活動量,運動耐容能,生活習慣および行動変容の指標を用い評価した。【対象】 A大学保健医療学部の理学療法学科,作業療法学科,看護学科に在籍する学生30名(男性15名,女性15名)【方法】 身体特性として,身長,体重,推定体脂肪率,推定骨量,推定骨密度,推定筋肉量を測定した。 ランプ運動負荷試験にて,無酸素性作業閾値での酸素摂取量と二酸化炭素排出量を測定し, 身体活動量は 1 週間の平均歩数を用いた。また,質問紙を用いて健康度と生活習慣,行動変容,栄養摂取状況を調査した。【結果】男女ともに健康日本21(第 2 次)で推奨する目標歩数,日本人の食事摂取基準(2015版)のエネルギー摂取量を下回った。また,DIHAL. 2の健康度・生活習慣パターン判定より,半数以上が「要注意型」「生活習慣要注意型」「健康度要注意型」に該当し,行動変容評価では,「前熟考期」から「準備期」に該当した。【結語】 医療系大学生のヘルスプロモーションにおいては,個人が個々の生活習慣を自覚した上で性差を考慮し,身体活動量のみならず食事に関する状況を踏まえ,行動変容ステージを把握しアプローチする必要があると考える。
著者
永瀬 外希子 伊橋 光二 井上 京子 神先 秀人 三和 真人 真壁 寿 高橋 俊章 鈴木 克彦 南澤 忠儀 赤塚 清矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.G0428, 2008

【目的】理学療法教育において客観的臨床能力試験(OSCE)の中に取り入れた報告は散見されるが、多くは模擬患者として学生を用いている。今回、地域住民による模擬患者(Simulated Patient以下SPと略)の養成に取り組んでいる本学看護学科(山形SP研究会)の協力を得、コミュミケーションスキルの習得を目的とした医療面接授業を実施した。本研究は、効果的な教育方法を検討するために、授業場面を再構成し考察することを目的とする。 <BR>【対象と方法】面接授業は、本学理学療法学科3学年21名を対象とし、臨床実習開始2週間前に行った。山形SP研究会に面接授業の進行と2名のSPを依頼し、膝の前十字靭帯損傷患者(症例A)、脊髄損傷患者(症例B)のシナリオを作成した。事前打合せや試行面接を行い、シナリオを修正しながらより実際の症例に近い想定を試みた。学生に対しては、授業の1週間前に面接の目的、対象症例の疾患名、授業の進行方法についてオリエンテーションを行った。面接授業実施30分前に詳しい患者情報を学生に提示し、4つに分けたグループ内で面接方法戦略を討論する機会を設けた。症例A・BのSPに対し、各グループから選出された学生が代表で10分間の面接を行い、それ以外の学生は観察した。それぞれの面接終了後に、面接した学生の感想を聞き、その面接方法に関して各グループで20分間の討論を行った。この面接からグループ討論までの過程を各症例につき交互に2回ずつ合計4回行い、全体討論としてグループごとに討論内容を発表し合った。最後に、SPおよび指導教員によるフィードバックを行った。<BR>【結果と考察】今回の医療面接の特徴は、第一点が情報収集を目的とするのではなく、受容的、共感的な基本的態度の習得を目的としたこと、第二点はトレーニングを受けている初対面のSPを対象としたこと、第三点は代表者による面接後グループごとに討論する時間を設定したことである。理学療法場面における医療面接では、医学的情報収集が中心となる傾向にある。今回の学習目的は、初対面の患者の話を拝聴し信頼関係を築くこととした。これにより、SPの訴えや思いなどを丁寧に聞いている学生の姿勢が認められた。また、初対面のSPとの面接を導入したことで、より臨場感あふれた状況の中で、学生が適度な緊張感を持って対応している場面が認められた。一巡目の面接では、SPに対して一方的に質問する場面が多くみられたが、二巡目ではSPが答えた内容に対して会話を展開させていく場面が際立った。これは、初回の面接終了後の討論により、面接者自身の反省や第三者の視点から得られた新たな方策を、次の面接に生かすことができたためと推測される。理学療法教育にSP参加型医療面接を導入することは、コミュニケーションスキルの向上を図るうえで有効な教育方法であると考えられる。 <BR>
著者
永瀬 外希子 伊橋 光二 井上 京子 神先 秀人 三和 真人 真壁 寿 高橋 俊章 鈴木 克彦 南澤 忠儀 赤塚 清矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P1572, 2009

【はじめに】我々は第43回日本理学療法学術大会において、地域住民による模擬患者(Simulated Patient以下SPと略)を導入した医療面接の演習授業の紹介を行った.今回、授業後に行った記述式アンケートを通して、SP参加型授業による教育効果を検討したので報告する.<BR>【対象】対象は本学理学療法学科3学年21名で、本研究の趣旨と目的を説明し、研究への参加に対する同意を得た.<BR>【方法】医療面接の演習目的はコミュニケーションスキルの習得とした.演習方法は2症例のシナリオを作成し、2名のSPに依頼した.学生には1週間前に面接の目的と進め方、症例の疾患名を提示した.さらに面接30分前に症例の詳しい情報を提示した.グループを4つに分け、面接方略の討論後、各グループの代表者1名がSPと面接を行い、それ以外の学生は観察した.1回の面接時間は10分以内とし、面接後、学生間のグループ討議、SPならびに教員によるフィードバックを行った.演習終了後、授業に参加した学生を対象に、授業を通して学んだことや感じたことについて自由記載による記述式アンケート調査を行った.得られた記述内容を単文化してデータとし、内容分析を行った.得られた127枚のカードから3名の教官が学生の学びに関するカードを抽出し、同じ内容を示すカードを整理しサブカテゴリー化した.その後さらに関連のあるカードを整理してカテゴリー化し、それぞれの関係性について検討した.<BR>【結果と考察】「学び」に関与すると判断されたカードは40枚であった.それらを分析した結果、「SPと自分との乖離」、「自分自身の振り返り」、「基本的態度の獲得」、「対応技術の習得」の4カテゴリーが抽出された.「SPと自分との乖離」は、「表出されない相手の思い」、「思いを知ることの難しさ」のサブカテゴリーで構成されていた.また「自分自身の振り返り」は「基本的なコミュニケーションスキルの知識不足」、「疾患についての知識不足」、「話を発展させる技術不足」、「質問攻めの一方的なコミュニケーション」、「基本的態度の獲得」は「傾聴的な態度」、「共感的態度」、「相手を分かりたいという思い」、「対応技術の習得」は「患者をみる視点・観点」、「目をみて話すことの大切さ」、「相手に合わせた関わり方」のサブカテゴリーから構成された.これらの結果より、SPからのフィードバックを通して、SPと自分の感じ方や捉え方の違いや、言葉では表出されない思いがあることに気付き、それらを理解することの難しさを実感するとともに、学生自身の不足している点を認識したことがわかった.そして、相手と信頼関係を築くためには、相手を思い、傾聴し、共感するなどの基本的態度の大切さに加え、目をみて話すことや相手に合わせた関わり方などの対応技法の習得も必要であることを学んでいた.