著者
日下部 明彦 馬渡 弘典 平野 和恵 田辺 公一 渡邉 眞理 結束 貴臣 吉見 明香 太田 光泰 稲森 正彦 高橋 都 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.153-162, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
18

【目的】終末期がん患者のセクシュアリティへの支援に対する看護師の現状を明らかにする.【方法】2018年12月に神奈川県内緩和ケア病棟18施設の看護師313名を対象に終末期がん患者の「パートナーとの愛を育む時間」に対する認識,感情,支援への行動意図と実践について質問紙調査を行った.【結果】165名中(回収率52.7%)「パートナーとの愛を育む時間」への支援経験があるのは82名(49.7%)であった.行ったことのある具体的な支援内容は「スキンシップを勧める」,「傾聴」,「ハグを勧める」,「入室の際に,ノックや声掛け後に返事を待つなど十分な時間をとる」が多かった.一方,病棟カンファレンスで「パートナーとの愛を育む時間」について話したことがあるのは11名(6.7%)であった.【結論】現状,「パートナーとの愛を育む時間」への支援は個人に任され,組織的には行われていないことが示唆された.
著者
赤塚 清矢 神先 秀人 内田 勝雄 永瀬 外希子 高橋 俊章 佐藤 寿晃 千葉 登 後藤 順子 藤井 浩美 熊谷 純 八木 忍 日下部 明
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 : 山形県立保健医療大学紀要 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-34, 2013-03

生涯を通した健康づくりと総合的な介護予防の推進は,やまがた長寿安心プランの重点課題の一つとして掲げられており,急速な高齢化に向けた対策が急務である.本研究の目的は,我々が開発した介護予防体操の負荷の大きさと安全性を検討することである.日常生活が自立した地域在住者12 名を対象に,花の山形!しゃんしゃん体操(Ver.Ⅰ),新たに開発した介護予防体操(Ver.Ⅱ),対照としてNHKラジオ体操第一(ラジオ体操)を実施し,体操中の酸素摂取量を計測して比較した.その結果,Ver.Ⅰと比較しVer.Ⅱが、酸素摂取量,二酸化炭素排出量,代謝当量が大きく,Ver.ⅡはVer.Ⅰより負荷量が大きかった.呼吸商,呼吸数,心拍数,自覚的疲労度は3 つの体操において同程度であった.Ver.Ⅱは,心拍数や疲労感を上げずに負荷量を増加させることができ,高齢者や運動習慣のない者にとって安全で効果的な介護予防活動の手段であることが考えられた. キーワード:介護予防体操,酸素摂取量
著者
稲森 正彦 飯田 洋 日下部 明彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.16-21, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
7

慢性便秘の診療は,医師として基本的な診療能力(技能・知識)の1つである.「慢性便秘症診療ガイドライン2017」(日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会,2017年)1)では,警告症状及び危険因子の概念の他,ブリストル便形状スケールの利用や二次性便秘を念頭に置いた検体検査,除外診断としての大腸内視鏡検査等の画像診断について記載され,専門施設で行われる検査についても触れられている.実地診療で遭遇する慢性便秘症の診断に関する医学的エビデンスは少なく,今後の検討が必要である.
著者
日下部 明彦 野里 洵子 平野 和恵 齋藤 直裕 池永 恵子 櫁柑 富貴子 結束 貴臣 松浦 哲也 吉見 明香 内藤 明美 沖田 将人 稲森 正彦 山本 裕司 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.906-910, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
13

死亡診断時の医師の立ち居振る舞いは,その後の遺族の悲嘆に大きく影響を及ぼすと考えられているが,現在の医学教育プログラムのなかには,死亡診断時についての教育内容はほとんど含まれていない.われわれは遺族アンケートを基に「地域の多職種でつくった死亡診断時の医師の立ち振る舞いについてのガイドブック」(以下ガイドブック)を作成した.本ガイドブックを用い,横浜市立大学医学部4年次生に対し授業を行い,授業前後で死亡診断時の困難感,自己実践の可能性を評価するアンケート調査を行い解析した.有効回答を得た39名において死亡確認についての困難感についての項目は,「死亡確認の具体的な方法」が最も高く,89.5%であった.しかし,授業前後では,死亡診断時における自己実践を評価する項目で有意な改善がみられた.死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについての卒前教育にわれわれが作成したガイドブックは有効な可能性が示唆された.
著者
沖田 将人 日下部 明彦 秋葉 涼子 八木 宏章 田村 陽一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.560-563, 2014-11-25 (Released:2015-02-26)
参考文献数
1

94歳女性,アルツハイマー型認知症の末期,寝たきり,意思疎通は不可能.胃瘻からの人工的水分,栄養補給法(以下,AHN)を行っている患者の娘からAHNの中止を求められた.そこで,日本老年医学会が発行した高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン(以下,ガイドライン)1にそって,約2カ月の時間をかけて複数医師の診察,家族,訪問看護師ステーション責任者,ケアマネージャー,訪問介護事業所責任者,訪問入浴事業所責任者,介護用具貸出事業所責任者と話し合いを重ねた末に,AHNの中止を決断した.その後患者はインフルエンザに罹患し,肺炎を併発したため,AHNは中止せずに肺炎発症から7日目に永眠した.今回の症例で,胃瘻を中止することが命を断ち切る心の葛藤に家族は悩まされることや意思疎通のできない患者の本人らしさをどのように引き出すのかの難しさをあらためて実感した.今までにガイドラインにそってプロセスをふみ,AHNの中止を検討した報告はなく,今後の課題などを考察して報告する.
著者
三瀧 英樹 伊藤 友一 三和 真人 日下部 明
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.136-143, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,屈曲弛緩現象(Flexion Relaxation Phenomenon; 以下FRP)が年代および測定部位に関係なく腰痛評価の一手段として使用できるかを明らかにすることである.対象は,健常若年群12名,慢性腰痛若年群6名および健常高齢群7名,慢性腰痛高齢群7名である.測定は,表面筋電計を用い,測定部位はL2およびL5レベルとした.FRP出現頻度は,年代別では慢性腰痛若年群より健常若年群が有意に高かったが,健常高齢群と慢性腰痛高齢群では差がなかった.また,測定部位ではL5よりL2でFRP出現頻度が高い傾向にあった.若年者はFRP出現の有無で客観的な腰痛評価が可能であり測定部位は上位腰椎が良いと考えられる.高齢者ではFRPの評価だけでは正しい評価ができないと思われる.