- 著者
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赤江 雄一
- 出版者
- 中央大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究の目的は、活版印刷術に先立つ大量言説普及装置であった托鉢修道会の説教の諸側面を研究することのうち、本年度は、その中心課題であった、托鉢修道会の説教の「心的暦」(mental calendar)について、成果をまとめることに多くの力を注いだ。具体的には、説教集執筆の段階で「心的暦」が説教執筆者に及ぼした規範的な影響と、そのなかで執筆者がどのような創意工夫を発揮しようとしたかを、ひとつの説教集全体を取りあげ分析する「垂直的アプローチ」の成果を、これまでの主な研究が用いた、多数の説教集の一部のみを扱う「横断的アプローチ」の成果と組み合わせることによって、なぜ同じジャンルの範例説教集が新たに数多く執筆されねばならなかったのかという問いに一定の結論を出した。この内容については論文を2008年1月に学会誌へ投稿した(現在、査読・審査の結果をまっている)一方、「心的暦」を復元する過程において検討することが必要となった説教形式について、ベルギーの国際的学術出版社Brepolsから共著書を出すことができた。この説教形式の探求の結果は、聴衆がどのように説教を理解(情報処理)することを説教者が期待していたか、という説教の受容に関する問題系に示唆するところが大きく、古代の記憶術とアウグスティヌスの「記号論」の関連を論じるにあたって、説教形式の問題を含みこむかたちで成果を論文にまとめているところである。