著者
越智 光夫 味八木 茂 亀井 直輔 中佐 智幸
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

偽関節等の難治性骨折はしばしば治療に難渋する。microRNA(miRNA)は様々な生命現象に重要な役割を担っており、疾患の病態にも関与している。本研究は、骨形成を促進するmiRNAを同定し、難治性骨折モデル動物に合成miRNAを磁気ターゲッティングと併用することにより骨癒合を促進することを目的とした。ヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を骨分化誘導し、分化前後で発現変動するmiRNAを網羅的に解析し、microRNA-222 (miR-222)を抑制すると骨分化が促進することがわかった。miR-222 inhibitorを、ラット難治性骨折モデルに局所注射したところ、骨形成が促進されていた。
著者
平田 和彦 伊藤 義広 安達 伸生 木村 浩彰 越智 光夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0233, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝関節軟骨損傷は,しばしばスポーツによって発生し,膝関節の疼痛や機能障害を引き起こす.関節軟骨は自己修復能力が低く,関節軟骨損傷は保存的治療のみでは修復困難であり,徐々に増悪し,変形性膝関節症に移行する.そのため近年,軟骨損傷に対し,外科的治療法が選択されている.軟骨損傷に対する外科的治療として,マイクロフラクチャー(MF)や骨軟骨柱移植(OAT),自家培養軟骨移植(ACI)などが選択され,術後の膝関節機能について多くの報告がある.しかし,患者にとって最も重要と思われる術後のスポーツ復帰状況に焦点を当てた報告は少ない.今回,当院で軟骨修復術を受けた患者のスポーツ復帰状況を調査したので報告する.【方法】 2004年8月から2008年9月までに膝関節軟骨損傷と診断され,当院で外科的手術をうけた患者を対象とした.術前・術後2年でフォロー可能であった33患者のデータを収集した.患者の内訳はMF11名(男性9名,女性2名,平均年齢31.4±16.9歳),OAT9名(男性7名,女性2名,平均年齢33±18.1歳),ACI13名(男性8名,女性5名,平均年齢30.0±9.6歳)だった. 臨床データは,膝機能評価として術前と術後2年のLysholm socreを測定した.活動レベルの評価は,Tegner activity scoreを使用し,受傷前と術前,術後2年で評価した.また,術式毎のスポーツ復帰率とスポーツ復帰までの期間を評価した.統計学的解析として, Lysholm scoreの経時的変化の比較には対応のあるt検定を用いた(P<0.05を有意).Tegner activity scoreの経時的変化の比較には,Bonferroni補正法によるt検定を用い,P<0.017=0.05/3を有意とした.統計解析にはPASW statistics ver.18(SPSS Japan,日本)を使用した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究では,世界医師会による「ヘルシンキ宣言」及び厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し行った.また,本研究に参加するにあたり研究の趣旨について十分な説明を行い,同意が得られた症例を対象とした.【結果】 Lyholm Scoreは,MF(術前76.4±18.5点,術後2年97.2±4.1点),OAT(術前56.1±18.5点,術後2年94.7±10.7点),ACI(術前61.3±20.4点,術後2年92.5±8.75点) と3つの術式ともに術前と比較して術後2年で有意に高かった(P<0.05). Tegner activity scoreにおいては,MF(受傷前7.7±2.5点,術前3.9±4.7点,術後2年8.0±1.8点),OAT(受傷前6.4±2.4点,術前1.1±2.4点,術後2年5.7±2.4点), ACI(受傷前7.3点±1.5点,術前1.3±2.5点,術後2年5.9±2.0点)だった.すべての術式で受傷前と術前,術前と術後2年の間に有意な差を認めた(P<0.017).ACIのみ受傷前と術後2年の間に有意な差を認めた(P<0.017).スポーツ復帰率は,MF81.8%,OAT77.8%,ACI61.5%であった.スポーツ復帰までの期間は,MF6.9±3.4ヶ月,OAT12.9±8.1ヶ月,ACI18.9±7.4ヶ月であった.【考察】 今回の結果では,膝機能はMF,OAT,ACIで術後に同程度の改善がみられた.しかし,スポーツ活動レベルでは,ACIで術後2年の時点で術前レベルまで回復が見られていなかった。軟骨修復術後のスポーツ復帰は,手術侵襲の大きさや修復軟骨の成熟過程に基づいて計画される.ACIはOATやMFよりも手術侵襲が大きく,修復軟骨の成熟に長期間を要すため,スポーツ復帰に時間がかかる。Mithoeferらは,術後活動制限が長い程,スポーツ復帰に時間がかかると述べている.したがって、早期スポーツ復帰を目標とするアスリートにとっては,MFは有利である.しかし,理論上ACIは,修復軟骨の長期的な耐久性に関してMFやOATより優位でありより長期間のスポーツ活動を希望する場合,ACIは良い適応である.今回の結果より,軟骨修復術の選択はスポーツ復帰時期やスポーツレベル,さらに長期的な予後を考慮し,患者の希望と照らし合わせて行われるべきである.【理学療法学研究としての意義】 軟骨損傷を受傷したスポーツ選手にとって,手術後にスポーツ復帰が可能かどうかは,治療を選択する上で最も重要な情報である.さらに,スポーツ復帰に関する情報は,今後軟骨損傷リハビリテーションプログラムを発展させていく上での基盤となる.

1 0 0 0 OA 軟骨再生

著者
安倖 伸生 越智 光夫 石川 正和
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.117-119, 2007-06-15 (Released:2010-10-28)
参考文献数
14
著者
河野 愛史 浦辺 幸夫 前田 慶明 笹代 純平 平田 和彦 木村 浩彰 越智 光夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101040-48101040, 2013

【はじめに、目的】 膝関節の靭帯損傷はスポーツで頻発する外傷のひとつであり,なかでも膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷は発生頻度が高い.治療には靭帯再建術の選択が一般的で,術後は関節可動域の改善や筋力増強などの理学療法が必要になる.筋力増強の効果判定のひとつとして大腿周径が用いられるが,臨床では大腿周径の回復と筋力の回復が一致しない症例を経験する.一般に,四肢周径は筋や骨の発達状態の把握に役立ち,筋力と有意な相関があるとされ(渕上ら,1990),筋力の発揮には筋量などの筋的要因や運動単位の動員などの神経的要因が影響し,筋力増強はそれらのいずれか,または両者の変容によるものとされる(後藤,2007).本研究の目的は,ACL再建術後の筋力の回復に筋量の回復がどの程度影響するのかを大腿周径と筋力を測定することで検討し,かつそれらを測定する意義を明確にすることである.【方法】 広島大学病院にてACL再建術(STG法)を受け,術後12ヶ月以上経過した初回受傷患者106名(男性50名:平均27.9±11.3歳,女性56名:平均24.8±11.2歳)を対象とした.大腿周径は膝蓋骨上縁から5,10,15,20cmを術後6,12ヶ月時に測定し,非術側に対する術側の割合(以下,患健比)を求めた.筋力測定はBIODEX System3(BIODEX社)を用いて,術後6,12ヶ月時に60°/s,180°/sの角速度での膝関節伸展,屈曲筋力を測定し,患健比を求めた.統計処理は術後6,12ヶ月の各時期での大腿周径と筋力の関係をPearsonの相関分析を用いて検討し,危険率は5 %未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会,広島大学疫学研究に関する規則に基づき実施した.対象には本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た.【結果】 大腿周径の患健比は,術後6,12ヶ月で,男性は5cmで97.1%,98.1%,10cmで95.9%,96.9%,15cmで95.7%,96.9%,20cmで96.4%,96.9%,女性は5cmで97.2%,98.2%,10cmで96.4%,96.4%,15cmで96.3%,96.6%,20cmで96.5%,97.6%であった.筋力の患健比は,術後6,12ヶ月で,男性は60°/sでの伸展筋力は67.2%,77.1%,屈曲筋力は80.9%,83.7%,180°/sでの伸展筋力は75.7%,81.6%,屈曲筋力は85.3%,86.5%であった.女性は60°/sでの伸展筋力は69.1%,82.6%,屈曲筋力は84.3%,89.8%,180°/sでの伸展筋力は77.5%,86.2%,屈曲筋力は87.8%,92.6%であった.大腿周径の患健比と筋力の患健比は,術後6ヶ月で,男性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,60°/s,180°/sでの屈曲筋力と周径20cm,女性は180°/sでの伸展,屈曲筋力と周径20cmとに有意な正の相関を示した(r=0.29~0.48).術後12ヶ月で,男性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,女性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,60°/s,180°/sでの屈曲筋力と周径5cmとに有意な正の相関を示した(r=0.28~0.45).【考察】 男性は術後6,12ヶ月,女性は術後12ヶ月で大腿周径の患健比と膝伸展筋力の患健比の間に有意な相関を示したことから,膝伸展筋力の回復に大腿周径すなわち大腿部の筋量の回復が影響し,術後12ヶ月ではその影響が大きいと考える.しかし,女性は術後6ヶ月で大腿周径の患健比と60°/sでの膝伸展筋力の患健比の間に有意な相関を示さなかった.これは,女性はもともと男性に比べて大腿部の筋量が少ないため(Abeら,2003),筋量が筋力に反映されにくいことや,術後6ヶ月は筋量の回復が不十分で神経的要因の回復により筋力が回復したことなどの可能性が考えられる.以上より,ACL再建術後に大腿周径および膝伸展筋力を測定することで,筋力の回復のどの程度が筋量の回復によるものかを評価でき,回復状況を把握することでリハビリテーションプログラムの再考につながる.また術後12ヶ月では筋量が筋力にある程度反映しているため,大腿周径がスポーツ復帰の指標のひとつとして有用である可能性が示唆されたが,例外もありこのような症例には注意が必要である.【理学療法学研究としての意義】 ACL再建術を受けたスポーツ選手のスポーツ復帰時期を決定するために筋力の回復は重要で,男性は術後6,12ヶ月と大腿周径および筋力が順調に回復する傾向にあるが,女性は各時期での回復状況に特に注意し運動療法を行うべきである.