著者
癸生川 義浩 郷右近 歩 野口 和人 平野 幹雄
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-94, 2004-03-31

本稿では、知的障害養護学校小学部で行われている"遊びの指導"について、実態と課題について明らかにすることを目的とした。教師を対象としたアンケート調査の結果から、1)知的障害養護学校の教員の多くは"遊びの指導"について必要性を感じていたこと、2)授業の計画立案時には昨年度の活動案を重視していたことが示された。知的障害養護学校における"遊びの指導"の授業内容と、就学前施設における調査結果との比較より、養護学校において就学前施設で行われている遊びとほぼ同じ内容の遊びが行われていたことが明らかにされた。加えて、養護学校においては、就学前に受けてきた指導についての把握が十分に行われないままに指導が行われていることが指摘された。これらの問題の背景として、就学前施設と養護学校間の情報の共有が十分ではないということが考えられた。
著者
郷右近 歩 舛本 大輔
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.97-102, 2012

2011年度、三重大学教員免許状更新講習では、聴覚障害を有する教員に向けた学習支援を実施した。聴覚障害を有する教員の受講に際して、5項目の課題が明らかになった。すなわち、①情報の効率的な取得に関する配慮、②担当講師の授業展開や話し方の特徴に対する支援者の即応力、③速記者における熟達の度合いと講義内容の理解水準、④音声文字変換ソフト導入の可否、⑤受講者と支援者との関係性の構築、である。都市部とは異なり、地方の講習開設主体(大学等)は聴覚障害教育に関する専門職員を雇用できるとは限らない。しかしながら、各都道府県には聾学校があり、聴覚障害を有する教員も勤務している。それぞれの地域で、聴覚障害を有する教員が合理的配慮のもと教員免許状更新講習を受けられる体制の構築が喫緊の課題であり、三重大学における取り組みは、そのモデルケースとなり得るものであった。
著者
内田 愛 郷右近 歩 菊池 紀彦 平野 幹雄 野口 和人 熊井 正之
出版者
東北大学大学院教育情報学研究部
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-43, 2007-07

記憶の外的補助具を利用することは、記憶障害を抱える人々にとって有効であることが指摘されてきた。本研究では、補助具の一つであるメモリーノートに着目し、記憶障害を有する一事例を対象として、メモリーノートが利用される場面や記入される内容など実生活場面での利用実態について分析を行った。その結果、自宅や作業所では自発的にメモリーノートを利用するものの、それ以外の場面では自発的な利用はほとんど見られないことが明らかになった。しかしながら、本人にとって印象的な出来事が生じた場面や必然性のある場面、メモリーノートの利用を想起させる手がかりがある場面では主体的にメモリーノートが利用されることも明らかになった。このことから、記憶障害者が主体的に補助具を利用するためには、継続的な利用の促進と同時に、本人にとって意味のある動機や必然性をもつことが必要であり、補助具は記憶障害者にとって単に不足する情報を補うために用いられるものではないことが示唆された。
著者
鈴木 徹 平野 幹雄 北 洋輔 郷右近 歩 野口 和人 細川 徹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.105-113, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1

従来、自閉症児の対人相互交渉の困難は、他者理解の困難が背景要因として指摘されてきた。しかしながら、心の理論課題の結果と日常生活の様相について実証的な研究は行われてこなかった。本研究では、高機能自閉症の一事例を対象に、心の理論課題の実施と実際の様相、とりわけ自身の言動と他者の言動の因果関係の理解の様相から対人相互交渉の困難の要因について検討を行った。その結果、心の理論課題を通過した対象児は、対人相互交渉において、過去の他者の言動と現在の状態との因果関係について適切な解釈を行っていた。一方、過去の自身の言動と現在の状態の因果関係について誤った解釈を行うことが多かった。このことから、対人相互交渉の困難を招く一因として、自己の言動の認識の困難という可能性について論じた。
著者
丹羽 克文 郷右近 歩 NIWA Katsufumi GOUKON Ayumu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.129-132, 2018-01-04

近年、特別支援学校においては、スケジュール表を用いた指導が多く行われている。本稿では、国内の教育現場において導入が進められた背景について検討を行った。先行研究を分類した結果、スケジュール表を用いる目的には「子どもの安心・安定を目的として用いる場合」と「自発的な行動を促すために用いる場合」があること、そして、スケジュール表の形式には「活動の手順を示すもの」と「生活の時間の流れを示すもの」があることが明らかとなった。従来、スケジュール表を用いた指導の有用性や効果は多く報告されてきたものの、いくつかの課題も浮かび上がってきた。すなわち、事前にスケジュールを伝えることでかえって不安になる場合や、順序や時間という概念を一様ではない形式で表現している場合である。今後は、上記の課題を解消するために、教育実践を通したさらなる検討が必要であることが示唆された。