著者
平野 幹雄 鈴木 徹 長谷川 武弘 野口 和人
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.7, pp.69-76, 2012-06

筆者らは、高機能自閉症児およびアスペルガー症候群の子どもを対象とした放課後支援を通じての、社会性発達支援をおこなってきた。今回は、三年間の取り組みを通じて対象児の社会性にどのような変化が生じたのかについて報告した。対象児は高機能自閉症あるいはアスペルガー症候群児5名であった。鉄道に関するブログの運営、定例会の開催を通じて支援を行ってきた結果、ブログ上では、自分の撮影した列車の説明に加えて、撮影時の状況や心情の説明もできるようになってきた。また、例会でも、大学教員やボランティアなどの発言に耳を傾ける姿が見られるようになってきた。以上のような変化には、自他の発言を振り返ることの出来る仕組みと、リスペクトできる他者からそうした振り返りを行うことを長期間促されてきたことが関係しているものと推察された。
著者
癸生川 義浩 郷右近 歩 野口 和人 平野 幹雄
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-94, 2004-03-31

本稿では、知的障害養護学校小学部で行われている"遊びの指導"について、実態と課題について明らかにすることを目的とした。教師を対象としたアンケート調査の結果から、1)知的障害養護学校の教員の多くは"遊びの指導"について必要性を感じていたこと、2)授業の計画立案時には昨年度の活動案を重視していたことが示された。知的障害養護学校における"遊びの指導"の授業内容と、就学前施設における調査結果との比較より、養護学校において就学前施設で行われている遊びとほぼ同じ内容の遊びが行われていたことが明らかにされた。加えて、養護学校においては、就学前に受けてきた指導についての把握が十分に行われないままに指導が行われていることが指摘された。これらの問題の背景として、就学前施設と養護学校間の情報の共有が十分ではないということが考えられた。
著者
野口 和人 氏原 慎弥 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.484, pp.205-210, 2009-03-06
被引用文献数
1

カメラ付き携帯電話を入力デバイスとした画像認識では,撮影した画像のぶれやぼけが認識精度低下の原因となる.そのため,ぶれやぼけに対処する手法が重要となる.本稿では,局所特徴量の近似最近傍探索による認識手法に対して,原画像に様々がぶれやぼけを与えた画像を生成し学習する生成型学習を導入することによって対処する.生成型学習を導入するにあたって問題となるのは,学習データの増加にともなって最近傍探索に必要なメモリ量と処理時間が増大することである.これは,特に大規模なデータベースを用いた場合に問題となる.提案手法では,多段階化とスカラー量子化によってこれを解決する.1万枚の画像データベースを用いた実験の結果,生成型学習を用いない手法と比べて認識率が12.3%向上することがわかった.
著者
平野 幹雄 鈴木 徹 野口 和人
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.5, pp.22-30, 2010-06

本稿においては、筆者らが高機能自閉症およびアスペルガー症候群の子どもを対象におこなっている社会性発達の支援のための放課後実践について、その概要と開始から1年半の間の子どもの様子について紹介することを目的とした。対象児は、11歳から17歳までの高機能自閉症およびアスペルガー症候群の子ども5名で、あった。筆者らの放課後活支援においては、対象児が鉄道やコンピュータに興味を持っていたことから、両者を組み合わせて子どもがしたいと思う活動として組織した。具体的には、双方向型のブログの運営と定例会の開催、一日旅行を通じて支援をおこなった。学校行事と日程が重なる日以外の対象児の参加状況はほぼ皆勤であった。定例会を重ねることで、対象児から積極的に挨拶をする様子、自らの発言に対する他者の関心の有無に注意を払う等の変化が見られた。これらの変化は、長期的な支援をおこなったこと、筆者らの実践が対象児において主体的に参加できる場として機能したことによると考えられた。また、鉄道という共通の土俵ができあがったこと、リアリティをもって長期間かかわりを続けたことによって、対象児にとって筆者らが親しくもリスペクトされる存在となったことが重要であると考えられた。
著者
野口 和人 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1135-1143, 2009-08-01
被引用文献数
5

局所特徴量を用いた特定物体認識において,認識率,処理時間,メモリ量について良いバランスを実現することは重要な問題である.局所特徴量は高い識別性をもつことから,高い認識率を実現することは困難ではないものの,その前提として長い処理時間や大きなメモリ量が要求されるため,大規模化の障害となっている.本論文では,認識率にあまり影響を及ぼすことなく,処理時間やメモリ量を削減する手法について述べる.処理時間の削減については,近似最近傍探索が有効であることを述べるとともに,従来法であるANNと比べて,ハッシュを用いた,より認識に有効な手法を提案する.メモリ量については,局所特徴量を表す特徴ベクトルに対してスカラ量子化を適用することにより,簡単に削減可能であることを示す.10万画像を用いた認識実験の結果,各次元の表現に用いるビット数を16ビットから2ビットに減少させても認識率に影響をほとんど及ぼさないこと,提案手法によって,認識率98.1%,処理時間119.7msを実現可能であることが分かった.また,1万画像を用いたANNとの比較では,同程度の認識率を実現するための処理時間,メモリ量が,それぞれ1/4,1/3であることも確認した.
著者
内田 愛 郷右近 歩 菊池 紀彦 平野 幹雄 野口 和人 熊井 正之
出版者
東北大学大学院教育情報学研究部
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-43, 2007-07

記憶の外的補助具を利用することは、記憶障害を抱える人々にとって有効であることが指摘されてきた。本研究では、補助具の一つであるメモリーノートに着目し、記憶障害を有する一事例を対象として、メモリーノートが利用される場面や記入される内容など実生活場面での利用実態について分析を行った。その結果、自宅や作業所では自発的にメモリーノートを利用するものの、それ以外の場面では自発的な利用はほとんど見られないことが明らかになった。しかしながら、本人にとって印象的な出来事が生じた場面や必然性のある場面、メモリーノートの利用を想起させる手がかりがある場面では主体的にメモリーノートが利用されることも明らかになった。このことから、記憶障害者が主体的に補助具を利用するためには、継続的な利用の促進と同時に、本人にとって意味のある動機や必然性をもつことが必要であり、補助具は記憶障害者にとって単に不足する情報を補うために用いられるものではないことが示唆された。
著者
鈴木 徹 平野 幹雄 北 洋輔 郷右近 歩 野口 和人 細川 徹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.105-113, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1

従来、自閉症児の対人相互交渉の困難は、他者理解の困難が背景要因として指摘されてきた。しかしながら、心の理論課題の結果と日常生活の様相について実証的な研究は行われてこなかった。本研究では、高機能自閉症の一事例を対象に、心の理論課題の実施と実際の様相、とりわけ自身の言動と他者の言動の因果関係の理解の様相から対人相互交渉の困難の要因について検討を行った。その結果、心の理論課題を通過した対象児は、対人相互交渉において、過去の他者の言動と現在の状態との因果関係について適切な解釈を行っていた。一方、過去の自身の言動と現在の状態の因果関係について誤った解釈を行うことが多かった。このことから、対人相互交渉の困難を招く一因として、自己の言動の認識の困難という可能性について論じた。
著者
佐々木 健太郎 海野 善和 島津 真樹 鈴木 徹 野口 和人
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.8, pp.89-99, 2013-06

本稿では,特別支援学校高等部木工班が行った,生徒の内発的動機付けを促す状況作りに着目した授業作りの実践を整理し,個々の生徒に見られた変化及び生徒同士の関係性の変化との関連を探ることを目的とした。個々の実践に対する生徒の様子,生徒同士のかかわりの様相,個々の生徒の意識の3つの観点から分析を行った結果,個々の生徒の意欲的な取組が観察された。また,生徒同士のかかわり合いは,形式的なものから非形式的なものへと発展し,その頻度も高くなった。一年間の取組を通して,支援し得た点として,個々の生徒の目的意識を高めたこと,個々の生徒の技能が習熟し周囲に目を向ける心理的余裕を与えたこと,生徒同士の関係そのものを構築したことの3点が考えられた。今後の課題としては,生徒を主体とした授業を展開するための教師の支援のあり方について検討を重ねること,生徒同士の関係性を構築するための支援をすることが挙げられた。
著者
佐々木 健太郎 野口 和人
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.10, pp.83-92, 2015-06-01

本稿では,国立大学教育学部附属特別支援学校39校の研究資料を基に,知的障害特別支援学校高等部におけるコミュニケーションに関する指導の現状と課題について調査することを目的とした。その結果32校での実践報告が見られ,(1)コミュニケーションスキルの形成を目指した取組,(2)人とかかわることに関する態度や力の育成を目指した取組,(3)生徒同士の関係性に着目した取組に分類された。(1)のスキル形成に関する取組においては,スキルの活用場面が限定され,般化が課題として挙げられていた。(3)の取組については,十分な成果が得られているものは多くなかったが,生徒同士の関係性を考慮することで,対象生徒の対人関係に改善が見られたことや人間関係の拡大が見られた取組があった。以上の結果から,今後求められる指導の方向性として,スキルを活用できる多様な場面を設定すること,生徒同士の関係を構築することを基盤にコミュニケーションスキル等の指導を行うこと,卒業後の生徒の様子から長期的な視点で指導内容を評価することが考えられた。
著者
佐々木 健太郎 野口 和人 村上 由則
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.11, pp.47-57, 2016-06-01

本研究では,学校卒業後を見据え,知的障害児の仲間関係の構築を目的とし,知的障害特別支援学校高等部在籍生徒及び卒業生を対象とした校外余暇支援活動の実践(ささけんクラブ)を行った。在学中から継続的に参加する一事例を取り上げ,ささけんクラブへの参加の様子,学校での仲間関係の変遷について継続的に調査を行った。その結果,ささけんクラブへ参加開始当初,対象者の関心の対象は活動内容であったが,高等部2年生になり一緒に参加する友達へと拡大された。同期的に学校でも休み時間等の自由時間に友達とかかわる場面が散見されるようになった。高等部3年生になると,本人の希望により放課後や休日にも友達とのかかわりが拡大していった。ささけんクラブの場等を通して,卒業後も友達とのかかわりを継続することにより,職場でのストレスを発散するニとができ,就労の継続に対しでも肯定的な影響をもたらした。以上の結果より,在学中から卒業後に渡って仲間関係の構築,維持を組織的に支援することにより,間接的に就労の安定が図られることが示され,移行支援の一つの視点として重視していく必要があることが示された。
著者
野口 和人 氏原 慎弥 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.29, pp.205-210, 2009-03-06

カメラ付き携帯電話を入力デバイスとした画像認識では,撮影した画像のぶれやぼけが認識精度低下の原因となる.そのため,ぶれやぼけに対処する手法が重要となる.本稿では,局所特徴量の近似最近傍探索による認識手法に対して,原画像に様々がぶれやぼけを与えた画像を生成し学習する生成型学習を導入することによって対処する.生成型学習を導入するにあたって問題となるのは,学習データの増加にともなって最近傍探索に必要なメモリ量と処理時間が増大することである.これは,特に大規模なデータベースを用いた場合に問題となる.提案手法では,多段階化とスカラー量子化によってこれを解決する. 1 万枚の画像データベースを用いた実験の結果,生成型学習を用いない手法と比べて認識率が 12.3% 向上することがわかった.For image recognition with a camera phone, defocus and motion-blur cause a serious decrease of the image recognition rate. In this report, we employ generative learning, i.e., generating blurred images and learning based on them, for a recognition method using approximate nearest neighbor search of local features. Major prob- lems of generative learning are long processing time and a large amount of memory required for nearest neighbor search. The problems become serious when we use a large-scale database. In the proposed method, they are sloved by cascading recognizers and scalar quantization. From experimental results with 10,000 images, we have confirmed that the proposed method improves the recogniton rate by 12.3% as compared to a method without generative learning.
著者
野口 和人 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.115, pp.99-104, 2007-06-21

SIFTなどの局所記述子の最近傍探索によって物体認識を行う場合には,一画像あたりの特徴ベクトルの数が膨大になるため,最近傍探索の効率が重要となる.本稿では,「認識に必要な最近傍探索の精度は画像によって異なる」という観点から処理を削減した効率的認識法を提案する.具体的には,近似最近傍探索に基づく識別器を多段階に縦列接続することにより,認識に用いる近似の程度を画像に応じて変更し,大幅な効率化を実現する.一万画像のデータベースを用いた実験の結果,処理時間を,多段階化を行わなかった場合の約1/5,ANNやLSHを近似最近傍探索の手法として用いた場合の約1/40に削減でき,例えば,認識率98%,処理時間1ms/queryを達成できることが分かった.また,12.2%のリジェクトを行うことによって,誤認識率を0.25%に抑えることもできた.