著者
後藤田 卓志 赤松 拓司 阿部 清一郎 島谷 昌明 中井 陽介 八田 和久 細江 直樹 三浦 義正 宮原 良二 山口 太輔 吉田 直久 川口 洋佑 福田 眞作 磯本 一 入澤 篤志 岩男 泰 浦岡 俊夫 横田 美幸 中山 健夫 藤本 一眞 井上 晴洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1635-1681, 2020 (Released:2020-09-23)
参考文献数
225
被引用文献数
1

消化器内視鏡分野における鎮静のニーズがさらに高まり日常診療において重要度の高い医療行為となっている.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力のもと「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」の作成にあたり,安全に検査・治療を遂行するためには何が問われているかを実地診療における疑問や問題として取り上げた.そのうえで,20項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成にあたっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,推奨の強さとエビデンスの質(強さ)を示した.現在日常的に行われている消化器内視鏡診療(以下,内視鏡)における鎮静の臨床的疑問と問題に関して現時点でのステートメントを示すことができた.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,専門家のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.また,鎮静に主に使用されているベンゾジアゼピン系の薬剤は保険適用外であるのが現状で,費用負担に関する不利益の検討ができなかった.また,診療ガイドライン作成にあたって受益者である患者・市民の視点を反映することが今後の課題である.なお,ガイドラインは現時点でのエビデンスの質(強さ)に基づいた標準的な指針であり,医療の現場で患者と医療者による意思決定を支援するものである.よって,個々の患者の希望,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情や医師の裁量権によって柔軟に対応する必要がある.
著者
安村 誠司 中山 健夫 佐藤 理 杉田 稔 中山 千尋
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

原発事故以後、福島県民が抱く放射線健康不安には、報道や情報が関連していると考え、県民2000人に対し、健康不安の程度、信用する情報源、利用するメディアについて質問紙調査を行った。健康不安の程度を目的変数、信用する情報源と利用するメディアを説明変数とした重回帰分析の結果、NGO等を信用する群、ネット・サイトを利用する群の不安が有意に高く、政府省庁、自治体を信用する群、地元民放テレビを利用する群は、不安が有意に低かった。情報源やメディアの違いによる、不安の程度の差が明らかになった。また、ヘルスリテラシー得点上位群の不安が有意に低く、放射線不安を減らす上での、ヘルスリテラシーの有効性が示唆された。
著者
中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.93-100, 2010 (Released:2011-02-19)
参考文献数
45

根拠に基づく医療 (EBM) は, 臨床的エビデンスと, 医療者の専門性と, 患者の価値観の統合により, より良い医療の提供を目指すものである. 「エビデンスをつくる」臨床研究は, 想定されるクエスチョンよって, 適切な疫学的研究デザインは異なる. 「ランダム化比較試験によるエビデンスが無ければEBMは実践できない」「ランダム化比較試験を行わないと臨床研究として認められない」という考えは誤解であり, それぞれの目的に沿った臨床研究の手法を採ること, 「現時点で利用可能な最良のエビデンス」を意思決定に慎重に用いることがEBMの基本である. 診療ガイドラインは, 「特定の臨床状況のもとで, 臨床家と患者の意思決定を支援する目的で, 系統的に作成された文書」と定義される. 診療ガイドラインは, エビデンスを現場に伝える役割を担い, エビデンス・診療ギャップの改善に役立つとともに, 患者と医療者のshared decision makingを進める基点となることが期待される.
著者
中山 健夫
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.259-268, 2010 (Released:2010-07-15)
参考文献数
47
被引用文献数
5 1

EBM is the integration of best research evidence with clinical expertise and patient values. EBM has been extending to “evidence-based healthcare/practice” with wider perspectives. When considering healthcare-related evidence, it is useful to distinguish three aspects. Namely, they are “create”, “communicate”and “utilize”. At first, “clinical questions” are generated in real clinical settings. To create clinical evidence, “clinical questions” need to be refined as “research questions”. Concerning the aspect of communication, there are lots of proposals and statements to improve the reporting of research findings. The Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals proposed by the International Committee of Medical Journal Editors has been evolved since 1979 and has become the global standard for scientific authors and editors. Concerning the aspect of “utilize”, there are two problems, that is, overuse and underuse of evidence. The former is related with the problem of evidence-practice gap. Appropriate use of clinical practice guidelines are expected to reduce these gaps. The latter is linked with the confusion that evidence equals EBM. Evidence is merely evidence even if the level is high in scientific and general meaning. When clinicians make individual decisions, they are required to do them comprehensively balancing the three factors such as evidence, value and resource.
著者
北澤 京子 佐々木 順一 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2017-007, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
16

6年制薬学部・薬科大学におけるEvidence-Based Medicine(EBM)教育の実態を把握する目的で質問紙調査を実施した.教員268人に調査票を送付し,72校の191人から回答を得た(回答率71.3%).EBMに関する50の主要キーワードのうち,研究デザイン(ランダム化比較試験,前向きコホート研究,後ろ向きコホート研究,症例対照研究)や研究結果の指標(オッズ・オッズ比,相対リスクと絶対リスク)は,ほとんどの大学で教育されていた.一方で,臨床推論,ランダム化比較試験の患者への適用,システマティック・レビューの批判的吟味,および診療ガイドラインの作成手順と解釈に関するキーワードは,教育している大学が少なかった.EBM教育が「充実している」との自己評価は32.2%にとどまり,主な課題として,時間不足,演習・実習の機会の不足,教員の意識・スキルの不足,適切な教材の不足が挙げられた.
著者
小池 竜司 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.89-98, 2009 (Released:2010-03-08)
参考文献数
7
被引用文献数
2

臨床医の視点から見た医薬品安全情報とは、副作用情報だけではなく、安全に薬物治療を行うためのすべての情報を指している。臨床医が必要とする医薬品安全性情報は、薬理学的データ、薬品名、投与される患者の病歴や症状、そして医療機関における電子的または紙ベースの処方箋発行システムも含むものである。多くの臨床医は一般的には医薬品安全性情報に興味があるが、数多く提供される副作用情報は、その中のごく一部が各自の診療や処方に必要な情報であるに過ぎないことから、それらを必ずしも注目していない。さらに、日常の診療に多忙な本邦の臨床医は、提供される情報から必要な情報を抽出し、管理し、利用し、さらに新たに副作用を報告する時間を確保することは困難である。 医薬品安全情報の中でも特に副作用情報に関しては、データの収集、データベースの管理、臨床医に対するフィードバックなどを含めた管理体制に多くの問題点が存在する。特に現在の副作用報告システムは、臨床医に依存しすぎている。本邦において医薬品安全性情報の検出感度と管理体制を改善するためには、臨床医だけではなく、薬剤師およびその他の医療従事者、そして患者によっても報告が行われる体制を整備していく必要があるだろう。さらに、すべての医療機関において医薬品安全性情報の専従組織を構築することが期待される。2009年に発足した消費者庁はそのような視点に立った組織であり、医薬品安全性情報に関して、このような役割を担う行政機関設立は一つの解決策となり得るであろう。また、医薬品安全性情報は医療の中で臓器横断的な情報であることから、専門分野に特化している医師だけでなく、総合的医学、総合診療に秀でる臨床医も医薬品安全性を扱う機関に必要な人材と言えよう。
著者
中山 健二郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育学会体育社会学専門領域
雑誌
年報 体育社会学 (ISSN:24344990)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-75, 2021

The purpose of this study was to examine the reproduction of high school baseball "narratives" and its media effects focusing on media representations of the change in approach for competition and practice. Previous studies about high school baseball "narratives" focused on analyzing the "narratives" as a fixed structure based on ritual theory. However, only few studies have focused on the fluctuation, including the fluctuation and change, of the "narratives" itself. Therefore, it is necessary to analyze the reproduction of the "narratives", while considering the change in approach for competition and practice in recent years. In the national high school baseball tournament in Japan called "Koshien", tactical change from only one pitcher completing whole games to successive pitching has occurred in recent years. Following this tactical change, we analyzed messages and significations from media representations of complete games and games with successive pitching by a media text analysis of the sport documentary entitled "Fierce Battle Koshien"(entitled "Netto Koshien" in Japanese).<br>The analysis showed that the media representation of complete games focused on the signification of "the spirit conveyed by the pitcher overcoming difficulties", whereas that of games with successive pitching concentrated on the signification of "friendship conveyed by two pitchers working together". It seems that both semantics "spirit" and "friendship" are elements of traditional high school baseball "youth narratives". The present result therefore suggests that media representations in practice change within the possible interpretative framework of "youth narratives". Further, the study suggests that through that media representation the framework of high school baseball "narratives" itself has been reproduced with the internal fluctuation of "how 'youthfulness' or 'youth' should be".
著者
中山 健夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.3, pp.331-334, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
17
被引用文献数
2

Evidence-based medicine (EBM) can be defined as “the integration of the best research evidence with clinical expertise and a patient's unique values and circumstances”. However, even with the best research evidence, many uncertainties can make clinical decisions difficult. As the social requirement of respecting patient values and preferences has been increasingly recognized, shared decision making (SDM) and consensus development between patients and clinicians have attracted attention. SDM is a process by which patients and clinicians make decisions and arrive at a consensus through interactive conversations and communications. During the process of SDM, patients and clinicians share information with each other on the goals they hope to achieve and responsibilities in meeting those goals. From the clinician's standpoint, information regarding the benefits and risks of potential treatment options based on current evidence and professional experience is provided to patients. From the patient's standpoint, information on personal values, preferences, and social roles is provided to clinicians. SDM is a sort of “wisdom” in the context of making autonomous decisions in uncertain, difficult situations through interactions and cooperation between patients and clinicians. Joint development of EBM and SDM will help facilitate patient-clinician relationships and improve the quality of healthcare.
著者
藤本 修平 大高 洋平 高杉 潤 小向 佳奈子 中山 健夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11351, (Released:2017-11-10)
参考文献数
27

【目的】理学療法士(以下,PT)の診療ガイドラインの利用,重要度の認識とエビデンスに基づいた実践(以下,EBP)への態度,知識,行動との関連性を明らかにすることとした。【方法】対象は千葉県のPT1,000 名としEBP や診療ガイドラインの利用,重要性の認識の項目を含む無記名自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。統計解析は診療ガイドラインの利用,重要性の認識に関連するEBP の関連項目を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】診療ガイドラインの利用,診療ガイドラインの重要性の認識と関連が強いものは「EBP に関する必要な知識や技術を学びたいと思いますか」(OR = 10.32, 95%CI: 1.82–197.16) であった。【結論】千葉県のPT において診療ガイドラインの利用は十分ではなく診療ガイドラインの利用や重要性の認識に関連する要因は,EBP の必要性の認識とEBP を行ううえで必要な行動であった。
著者
山崎 茂明 中山 健夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.666-672, 2003
被引用文献数
1 1

背景:構造化抄録の重要性は,EBM(エビデンスに基づいた医療)の普及とともに認識されつつある。しかし,英語文献では普及が進んでいるものの,非英語文献では十分浸透していない。方法:PubMedを使用し,1987年から2001年までの,EBM実践のうえで有用となる臨床試験文献群を対象に,非英語文献の構造化抄録採用状況を調査した。結果:各国語別の構造化抄録付与率について,全調査対象期間での平均値と,かっこ内に1999年から2001年の値を示す。ドイツ語は17.3%(48.2%),フランス語は16.1%(45.1%),イタリア語は21.3%(76.3%),スペイン語は44.7%(74.9%),ロシア語は4.9%(17.4%),中国語は21.3%(100%),そして日本語はわずか3.5%(10.4%)であった。さらに,構造化抄録付与率を基に各国語別の雑誌ランクも作成した。考察:構造化抄録は,非英語圏の雑誌において普及が進んでいるが,日本語文献では改善が示されていない。日本におけるEBM実践のために,研究者,臨床家,編集者,情報専門家は構造化抄録の重要性を認識すべきである。
著者
土田 満 伊達 ちぐさ 中山 健夫 山本 卓 井上 真奈美 山口 百子 岩谷 昌子 陳 浩 田中 平三
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.35-44, 1991 (Released:2010-04-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

健康な20歳代男子5人を被験者として, 連続3日間, ナトリウム (Na), カリウム (K), カルシウム (Ca), リン (P), マグネシウム (Mg), 亜鉛 (Zn) の出納実験を行った。この結果に基づいて, 摂取量と糞中, 尿中排泄量または血清中濃度との相関を解析した。1) 出納実験より, Na, K, Pは摂取量の大部分が尿中へ排泄されていた。摂取量に対する尿中への排泄率はNaが85%と最も高く, Pが84%, Kが74%であった。逆にCa, Mg, Znは糞中へ排泄される割合が高く, 尿中への排泄率はCaが38%, Mgは25%と低かった。 Znのそれは7.1%であった。2) 摂取量と糞中排泄量との相関を検討してみると, Kのみが統計学的に有意の正相関を示した。3) 摂取量と尿中排泄量との間には, Na (r=0.974) とK (r=0.891) が統計学的に有意な正相関を示した。4) 各ミネラルの摂取量と血清中濃度との間には, 統計学的に有意な相関関係が認められなかった。5) Na, K, Ca, P, Mg, Znの尿中, 糞中の量, 血清中濃度から各ミネラル摂取量を推定するには, 尿中クロール排泄量からの方法がよく知られている。今回の実験では, これをNa, Kの24時間尿中排泄量から求める方法の有用についても示した。
著者
中山 健夫
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.88, no.Extra1, pp.E2-E9, 2018-01-31 (Released:2018-02-28)
参考文献数
39
被引用文献数
2

Clinical practice guidelines (CPGs) are statements including recommendations that assist patients' and practitioners' decision making regarding high priority clinical issues to pursue better clinical outcomes for patients. Based on the body of evidence from systematic reviews, CPGs are developed considering their benefit, harm, and so on. With an increased interest in healthcare among the general public and improved infrastructure of information, the relationship between a patient and a healthcare professional has been rapidly changing. For CPGs to be adequately recognized and for them to play a larger/better role in society, it is necessary to use current best evidence judiciously and to facilitate considerations on multiple aspects including patients' values and ethical, legal, and economic issues. Furthermore, discussions by various players, not limited to healthcare professionals, are essential. Beginning with the brief history of evidence-based medicine, this article presents an overview of the present status and the future perspective of CPGs and associated matters.
著者
中村 二郎 神谷 英紀 羽田 勝計 稲垣 暢也 谷澤 幸生 荒木 栄一 植木 浩二郎 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.667-684, 2016-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
5

アンケート調査方式で,全国241施設から45,708名が集計され,2001~2010年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した.45,708名中978名が剖検例であった.1)全症例45,708名中の死因第1位は悪性新生物の38.3 %であり,第2位は感染症の17.0 %,第3位は血管障害(慢性腎不全,虚血性心疾患,脳血管障害)の14.9 %で,糖尿病性昏睡は0.6 %であった.悪性新生物の中では肺癌が7.0 %と最も高率であり,血管障害の中では慢性腎不全が3.5 %に対して,虚血性心疾患と脳血管障害がそれぞれ4.8 %と6.6 %であった.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,虚血性心疾患以外の心疾患が8.7 %と高率で,ほとんどが心不全であった.脳血管障害の内訳では脳梗塞が脳出血の1.7倍であった.2)年代別死因としての血管障害全体の比率は,30歳代以降で年代による大きな差は認められなかった.糖尿病性腎症による慢性腎不全は,30歳代で,心筋梗塞は40歳代で,脳血管障害は30歳代で比率が増加し,それ以降の年代において同程度であった.50歳代までは脳出血,60歳代以降では脳梗塞の比率が高かった.悪性新生物の比率は,50歳代および60歳代でそれぞれ46.3 %および47.7 %と高率であり,50歳代以降で悪性新生物による死亡者全体の97.4 %を占めていた.感染症のなかでも肺炎による死亡比率は年代が上がるとともに高率となり,70歳代以降では20.0 %で,肺炎による死亡者全体の80.7 %は70歳代以降であった.糖尿病性昏睡による死亡は,10歳代および20歳代でそれぞれ14.6 %および10.4 %と高率であり,それらの年代では悪性新生物に次いで第2位であった.3)血糖コントロールの良否と死亡時年齢との関連をみると,血糖コントロール不良群では良好群に比し1.6歳短命であり,その差は悪性新生物に比し血管合併症とりわけ糖尿病性腎症による腎不全で大きかった.4)糖尿病罹病期間と血管障害死の関連では,糖尿病性腎症の73.4 %が10年以上の罹病期間を有していたのに対して,虚血性心疾患および脳血管障害では10年以上の罹病期間を有したのはそれぞれ62.7 %と50 %であった.5)治療内容と死因に関する全症例での検討では,食事療法単独18.8 %,経口血糖降下薬療法33.9 %,インスリン療法41.9 %とインスリン療法が最も多く,とりわけ糖尿病性腎症では53.7 %を占め,虚血性心疾患での38.9 %,脳血管障害での39 %に比べて高頻度であった.6)糖尿病患者の平均死亡時年齢は,男性71.4歳,女性75.1歳で,同時代の日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ8.2歳,11.2歳短命であった.しかしながら,前回(1991~2000年)の調査成績と比べて,男性で3.4歳,女性で3.5歳の延命が認められ,日本人一般における平均寿命の伸び(男性2.0歳,女性1.7歳)より大きかった.
著者
中山 健夫
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.37-46, 2016-04-30 (Released:2016-05-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

近年,国内においても医療における様々な大規模データベースが大きく発展しつつある。中でも保険者に由来する診療報酬明細(レセプト)は,母集団が明確であることと,全数把握であり,長期間の時系列変化を把握でき,外来での医療行為も把握できる点,医療費(チャージ)の情報を得られる,利用コストが低いことなどから研究活用も進んでいる。株式会社日本医療データセンター(JMDC)は複数の健康保険組合からの委託でレセプト(現在約270万人分)と特定健診結果を匿名化名寄せしてデータベース化している。このデータベースを用いて医薬品安全性におけるエビデンス診療ギャップの課題として,ステロイド長期処方患者における骨粗鬆症治療薬の予防投与,抗パーキンソン薬の安全性に関して薬剤添付文書の注意事項の遵守状況,医薬品以外の課題として壮中年期の虚血性心疾患患者における心臓リハビリテーションの実施状況を明らかにした。また健診データとレセプトデータの突合解析により,健診結果で指示された医療機関を受診していない者は,高血糖で約65%,高血圧で約90%に達することを明らかにした。厚労省の構築しているNDBへの期待は大きいが,膨大なデータを効率よく管理・運用するシステムの開発,ノウハウの蓄積はこれからの課題である。民間データベースはNDBと比べ規模的には限界があるが,数百万単位のデータを柔軟かつスムーズに扱える点は大きな魅力である。
著者
荒木 和夫 増澤 祐子 高橋 由光 中山 健夫
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.730-743, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
45
被引用文献数
1

目的 現行個人情報保護・研究倫理法制の体系と立法目的を明らかにすることにより,研究主体と研究対象の違いによる分類ごとに適用すべき個人情報保護・研究倫理関係法令等の適用関係を示す。学術研究目的による個人情報保護法令等の適用除外を考察することにより,改善点と今後の在り方を提示する。方法 系統的文献調査による記述的研究。「e-Gov法令検索」により,個人情報保護又は研究倫理に関する法令であって,人を対象とする医学系研究又はヒトゲノム・遺伝子解析研究に適用可能なものを選択した。薬機法およびGCP・GPSP省令等ならびに行政組織・手続等に関する法令は除外した。さらに,都道府県の個人情報保護条例(個条例)および対象法令に対応するガイドライン等を選択した。これらの法令等に基づき,個人情報保護と研究倫理に関する現行法体系とそれらの適用範囲・優先適用関係等を検討した。個人情報保護3法・個条例の目的規定および学術研究目的による適用除外規定の内容ならびに個条例の規定の地域的偏りを調査した。結果 個人情報保護に関する現行法体系は約2,000件の法令等を含む3階層から成ること,医学研究に関する個人情報の保護について包括的な法律がないこと,そのため研究主体の類型により適用法令等が異なることが明らかとなった。研究倫理は,医学研究の種類により適用法令等が異なっていた。個人情報保護法(個情法)は2つの目的を,行政機関個人情報保護法(行個法)と独立行政法人等個人情報保護法(独個法)は3つの目的を規定していた。学術研究目的の場合,個情法には包括的除外規定があるが,行個法と独個法は3つの個別除外規定を設けていた。個条例では,都道府県により規定の有無・内容にばらつきがあるが,国の法令と整合性を取るため要配慮個人情報に関する改正が相次いだ。結論 我が国の現行個人情報保護法令等の体系は「混合方式」と考えられる。さらに,(1)法令等の間で必ずしも整合性がとられていない,(2)研究倫理に関する包括的な法律はない,(3)研究主体の類型により適用法令が異なるため,学術研究目的による個人情報保護法令等の適用除外に違いがあるほか,とくに共同研究の場合は適用法令等の判別が複雑である。そのため,医療に関する個人情報については,今後,制度という大きな枠組みで,その保護,利活用および倫理問題について検討を進めることが不可欠と考えられる。
著者
鈴木 渉太 岡田 浩 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.158-160, 2020-12-20 (Released:2020-12-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1

著者らは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関連して,薬剤師から外国人患者への情報提供を支援するために,都道府県のWebサイトから多言語で相談可能な連絡先情報を収集してまとめ,薬剤師向けのWebサイトで紹介した.COVID-19対策を機に,薬局には各施設での外国人対応を見直し,災害時だけでなく日常的にも外国人が安心して利用できる場となるように,受け入れ体制の整備が求められる.