著者
宮崎 敦子 野内 類 市来 真彦
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

すでに発症した認知症であっても、身体運動により認知機能の改善効果があった報告が数多い。低活動が問題となる長期滞在型の施設で、重度の認知症患者であっても維持されているリズム応答機能を利用し、認知症やその他の衰弱性疾患の人々が参加できる新しいプログラムを開発した。集団でドラムを使ったコミュニケーション演奏を行なうプログラムを30分間週3回3ヶ月間のランダム化比較試験介入実験を行なった。その結果、3ヶ月間のドラム演奏は可能で且つ上達することがわかった。認知機能のスコアが改善し、運動機能も関節可動域で有意に改善していた。従って、集団ドラム演奏は運動効果や認知機能改善効果があることがわかった。
著者
野内 類 川島 隆太
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.335-341, 2014-09-30 (Released:2015-10-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

認知機能は, 私たちの日常生活や社会的な活動に重要な役割を担っている。しかしながら, 多くの認知機能は加齢とともに低下する。認知機能の低下は, 高齢者の様々な活動を困難にする原因となっている。そのため, 高齢者の認知機能を向上させる方法の一つである認知トレーニング研究に多くの注目が集まっている。本論文では, 認知トレーニングの中でも簡便に実施することのできる音読・計算トレーニングと脳トレゲームを用いた研究の成果を紹介した。脳トレゲームを用いた認知トレーニングは, 短期間で高齢者の実行機能と処理速度を向上させることが報告されている。そのため, 脳トレゲームは, 高齢者の認知機能の維持・向上に効果的なツールの一つであることを指摘した。最後に, 脳トレゲームを用いた認知トレーニングの今後の課題について検討した。
著者
野内 類 兵藤 宗吉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.71-78, 2007-08-31 (Released:2010-09-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

気分一致記憶とは,気分と一致した感情価をもつ刺激語の記憶成績が良くなる現象を指す.本研究は,自伝想起課題と修正自伝想起課題を用いて気分一致記憶を検討した.大学生90名をランダムに実験条件に割り振った(ポジティブ,ネガティブ,ニュートラル).ポジティブとネガティブ気分群は,気分誘導のために音楽を聴取した.各群の被験者には4秒間隔で刺激が呈示された.刺激は快語30語と不快語30語の形容詞を使用した.自伝想起課題の参加者は刺激語にあてはまるエピソードを生成し,それが自分の経験にあるかどうかの再認を行った.修正自伝想起課題の参加者は,刺激語から自分自身のエピソードを生成するのが簡単か難しいかどうかを判断した.実験の結果,自伝想起課題の再生率においてポジティブ気分でもネガティブ気分でも気分一致記憶が見られ,修正自伝想起課題では気分一致記憶が見られなかった.このことから,再認処理もしくは生成・再認処理が気分一致記憶の生起に重要であると考えることができる.