著者
吉川 欣亮 設楽 浩志 野口 佳裕 STEVE Brown 奥村 和弘
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

新規難聴モデルマウスの樹立およびそれを応用した難聴発症機構の解明を目指し、ポジショナルクローニングおよび分子間相互作用解析に基づき研究を実施した結果、以下の主要な成果を得た。1)2種の難聴モデルマウスの発症原因遺伝子が共通してMyosinVIであることを明らかにした。2)発現解析および蛋白質相互作用解析に基づき、4.1BおよびGelsolinが感覚毛伸長に機能することを明らかにした。3)SansおよびWhrlinの2重変異マウスの表現型から両者が有毛細胞上の感覚毛の平面細胞極性に機能することが示された。
著者
金井 健吾 岡 愛子 赤松 摩紀 渡部 佳弘 上斗米 愛実 北村 寛志 今西 順久 野口 佳裕 岡野 光博
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.300-309, 2023 (Released:2023-07-28)
参考文献数
26

嗅覚障害は,感冒罹患,鼻副鼻腔の慢性炎症,外傷,薬物や毒物の吸入,神経変性疾患や脳血管疾患などによって生じる。原疾患のコントロールを行うことで改善することもあるが,治療に難渋する症例も経験する。最近では新型コロナウイルス感染症に罹患し嗅覚障害を生じる症例も存在する。嗅覚機能検査として,T&Tオルファクトメーターを用いる基準嗅力検査や静脈性嗅覚検査などが一般的に施行される。嗅覚障害に対する新しい治療法として,患者が嗅素を積極的に嗅ぐことで,嗅覚の再生を促す嗅覚リハビリテーション(嗅覚刺激療法)が注目されており,欧州では安全で有効な治療法として診療に取り入れられている。嗅覚刺激療法は当院倫理審査で承認され,リハビリテーション科医師の指導の下で言語聴覚士が行っている。当院を受診し嗅覚障害と診断された患者を対象として,嗅覚刺激療法を3か月以上行い,治療前後の嗅覚を比較した。1日2回(朝・夕)4種類の嗅素(バラ・レモン・ユーカリ・シナモン)を一つの嗅素につき10秒ずつ嗅ぎ,3か月後には4種類の嗅素をラベンダー・オレンジ・ヒノキ・バニラへ変更している。治療前後の嗅覚の変化において,基準嗅力検査(平均認知域値と検知域値)では有意差は認めなかったが,日常のにおいアンケート,嗅覚に関するQOL質問紙,VASでは有意に改善を認めた。日本人にとって,より有効で統一的なプロトコールが確立されることが期待される。
著者
本庄 需 野口 佳裕 川島 慶之 高橋 正時 喜多村 健
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.111-118, 2015 (Released:2017-03-01)
参考文献数
20

鼓室型グロムス腫瘍は、本邦では1956年に初めて報告された比較的まれな疾患である。今回、2006年5月から2013年12月までに鼓室型グロムス腫瘍と診断され、当科にて外科的治療を行った4例について検討を行った。患者は全例女性であり、年齢は46~74歳であった。自覚症状として、全例で拍動性耳鳴がみられ、3例では難聴が認められた。全例で術前の塞栓術を施行せずに手術を行い、出血量をコントロールして腫瘍を摘出しえた。良好な視野とワーキングスペースを確保しながら少ない出血量で腫瘍を完全摘出するためには、(1) 術前の画像所見から推測される進展範囲に基づいた適切な術式選択、(2) バイポーラ型電気メスによる腫瘍の縮小、(3) 栄養血管の電気的焼灼が有用である。
著者
野口 佳裕
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.169, 2022-06-30 (Released:2022-07-15)
参考文献数
19

要旨: 遺伝学的検査と診断は, 全ての医師にとって重要な医療行為になりつつある。難聴は耳鼻咽喉科領域で最も頻度の高い遺伝性疾患であり, 先天性難聴と若年発症型両側性感音難聴の遺伝学的検査は保険診療で可能である。従って, 遺伝性難聴の知識とその存在を念頭においた診療が不可欠である。先天性難聴の半数以上は遺伝性難聴であり, 非症候群性遺伝性難聴においては最も頻度の高い GJB2 遺伝子を含む120以上の原因遺伝子が報告されている。遺伝学的な原因を知ることは, 難聴/遺伝カウンセリングとともに人工内耳の予後推定などに有用である。若年発症型両側性感音難聴は指定難病であり, 診断に遺伝学的検査が必須である。原因遺伝子は ACTG1, CDH23, COCH KCNQ4, TECTA, TMPRSS3, WFS1 遺伝子の7遺伝子であるが, 近日中に EYA4, MYO6, MYO15A, POU4F3 遺伝子が追加される予定である。
著者
野口 佳裕 伊藤 卓 川島 慶之 西尾 綾子 本田 圭司 喜多村 健
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.97-106, 2013 (Released:2013-06-01)
参考文献数
40

Enlargement of the vestibular aqueduct (EVA) is the most common malformation of the inner ear. EVA can be observed in various disorders including DFNB4/Pendred syndrome, branchio-oto-renal/branchio-oto (BOR/BO) syndrome, and distal renal tubular acidosis (dRTA). Characteristic phenotypes of EVA include progressive, fluctuating hearing loss (HL), and repetitive vertigo. In this study, we compared the audiovestibular findings in patients with mutations of SLC26A4, ATP6V1B1 or SIX1 to clarify whether the anatomical enlargement itself was related to the characteristic phenotypes. We enrolled five Pendred syndrome patients with SLC26A4 mutations, one dRTA patient with ATP6V1B1 mutations and two BO syndrome patients with a SIX1 mutation. One patient with a SIX1 mutation showed unilateral EVA, and the others had bilateral EVA. All five patients with SLC26A4 mutations had progressive HL, fluctuating HL and/or repetitive vertigo. A patient with ATP6V1B1 mutations also showed repetitive progression HL, fluctuating HL and repetitive vertigo. Fluctuating HL and repetitive vertigo were not recognized in two patients with SIX1 mutation, although one patient showed slight progression of HL. There were no significant positive associations in patients with SLC26A4 mutations between EVA widths and pure tone averages, and the widths and maximum slow phase velocities. These findings suggested that EVA itself had no relationship with either progressive, fluctuating HL, nor repetitive vertigo. The product of SLC26A4, the Cl-/HCO3- exchanger pendrin, and the product of the ATP6V1B1, B1-subunit of H+-ATPase, can play a role in the maintainance of endolymph pH homeostasis. Therefore, a disruption of endolymph pH homeostasis can be associated with the characteristic phenotypes.
著者
野口 佳裕
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.247-251, 2012 (Released:2012-10-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1