著者
野田 聖子 山田 麻子 中岡 加奈絵 五関‐曽根 正江
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.21-29, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
38
被引用文献数
1

アルカリホスファターゼ (ALP) はリン酸モノエステルを加水分解する酵素であり, 小腸に局在する小腸型ALPは食事性因子との関わりが大きいが, その生理機能は未だ不明な点が多い。本研究では, ヒト結腸癌由来細胞で, 培養後に小腸上皮様細胞に分化するCaco-2細胞を用いて, ビタミンDがALP発現および腸の分化マーカーである加水分解酵素の発現に及ぼす影響について検討を行った。コンフルエント後14日間培養し, Caco-2細胞にビタミンDを添加した結果, 添加後3, 5, 7日目において1,25-ジヒドロキシビタミンD3濃度100 nMのALP活性およびヒト小腸型ALP遺伝子のmRNA発現量が0 nMと比べて有意に高値を示した。一方, スクラーゼ・イソマルターゼの遺伝子発現はビタミンDにより増強されなかった。本研究において, ヒト小腸上皮様細胞でのビタミンDによる小腸型ALP発現の増強作用を示すことができ, 小腸型ALP発現調節を介したビタミンDの新たな生理機能の解明につながることが期待された。
著者
野田 聖子 山田 麻子 中岡 加奈絵 五関‐曽根 正江
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.101-108, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
36

アルカリホスファターゼ (ALP) はリン酸モノエステルを加水分解する酵素であり, 小腸に局在する小腸型ALPは脂質代謝との関係が示唆されているが, その生理機能は未だ不明な点が多い。本研究では, ヒト結腸癌由来細胞で, 培養後に小腸上皮様細胞に分化するCaco-2細胞を用いて, ビタミンK2の1種であるメナキノン-4 (MK-4) がALP発現へ及ぼす影響について検討を行った。コンフルエント後14日間培養し, Caco-2細胞にMK-4を添加 (MK-4濃度: 0, 1, 10 μM) した結果, MK-4濃度が1または10 μMのALP活性が0 μMと比べて, 有意に高値を示した。さらに, ヒト小腸型ALP遺伝子のmRNA発現量も, MK-4濃度1 μMで0 μMと比較し有意に高値を示した。本研究において, ヒト小腸上皮様細胞でのMK-4による小腸型ALP発現の増強作用について初めて示すことができた。今回の結果は, 小腸型ALP発現調節を介したビタミンK2の新たな生理機能の解明につながることが期待された。
著者
野田 聖子
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.81-84, 2020 (Released:2022-08-03)

「医療的ケア児」という耳慣れない言葉があります。今日は市民講演ということで、専門的な方もいらっしゃいますし、同じ医療的ケア児の親御さんもいらっしゃいます。そういう人からすると医療的ケア児というのはよくご存じの言葉ですけれども、この医療的ケア児が日本で定義づけされたのは2年前です。児童福祉法という法律が改正されて、医療的ケア児は障害児の一人で、「これからは医療だけではなくて、福祉や教育の場でもちゃんとみんなで支えていこう。」と定められたのです。だから、まだほとんどの皆さんがご存じないと思いますが、今日はぜひとも皆さんに医療的ケア児という言葉を認識していただければうれしいなと思いやってきました。 さて、障害というのは、本当にたくさんあります。日本では15年前に発達障害という障害が認知されて、今、申し上げた医療的ケア児が新たな障害児(者)の仲間として法律で定義づけされたのが2年前です。 私の息子はどうかというと、身体障害があり、0歳のときに左脳に血栓が直撃し脳梗塞を起こしたことで右半身麻痺となり、病院からは「おそらく一生寝たきりだろう。」と言われておりました。そして、仮死状態で産まれたことや脳梗塞の副作用もあり、中度の知的障害もあります。身体障害も2級(1級と2級の間ぐらい)で知的障害は中度なのに、なぜ超重症児と呼ばれているのかというと、医療的ケア児に指定されているからです。 これから医療的ケア児について説明をしていきたいと思いますが、私の息子は重複の障害児というふうにご理解いただければと思います。今日のテーマは「医療的ケア児って何だろう」ということですけれども、法律が改正され、ある程度の定義ができています。実は医療的ケア児は、皆さんが知らず知らずのうちにどんどん増えています。もともと重心の子どもたちの中にも、当然、人工呼吸器を使っている子もいれば、自分でモグモグゴックンができない子は胃瘻を使ったり、お鼻から栄養を入れたりしています。こういう子もすべて医療的ケアの枠組みの中に入ります。そのため、突然現れたわけではなく、昔から重心の子どもたちの中には医療的ケアに支えられている子どもたちは沢山いたわけです。 しかし、今回改めて医療的ケア児として定めなければならなかったのは、医療的ケアが必要で一般的な社会生活を送ることに差し支えがあるにもかかわらず、社会福祉を受けられない子どもたち。つまり、私の息子もそうですけれども、重症心身障害の子と違うのは、たとえば寝たきりではないとか、知的にはIQが70以上あって通常の知能を持っているとか、そういうふうになった途端、福祉の枠から外れてしまっていたので、「これは大変だ!」ということになりました。 もう一つは、今、少子化の中で、1人でも多くの小さい命を助けようということで、医療がすごく進歩しています。子ども病院の中には必ずNICUという集中治療室があって、小児科の医師や看護師さんやスタッフの方が24時間懸命に医療を施してくれます。たとえば、350ccのペットボトルぐらいの子どもが産まれたときに、10年前だったら救えなかったであろう命も、今は救うことができるんです。 それで、仮に病院の中であれば一生医療ケアを受けて安全に暮らすことができるのですが、さすがに医療の中でそこまで責任は持てないので、何らかの支えがあったら社会で暮らせるという状態になった途端に病院を卒業することになり、いきなり家が病室と化します。 医療的ケア児を法律で定めたのですが、生きていくために日常的な医療的ケアが必要な子で、一般的に多くの人たちが想像する最期の瞬間に施されるものが医療的ケアだと思ってください。あと1週間延命するためにおなかの中に栄養剤入れますとか、あと1週間生かすために気管切開しチューブを入れて人工呼吸器を装着しますとか、そういうものが医療的ケア児たちが日常的に受けている医療ケアなのです。これまでは、最期の最期のために使われる大道具だったのが、近年医療が進歩して、医療的ケア児が生きていくための小道具化としているわけです。残念ながら一般的には、医療的ケアをしていると聞いただけで敬遠されてしまうのが現状なので、そこのギャップを縮めたくて今日はここまでお邪魔したわけです。 とにかく、子どもたちはたくさんの可能性を持っていて、それを握りつぶしてはいけないのです。高齢者の在宅介護と子どもの在宅介護、同じように思うのですが、無限の可能性を持つ子どもに対しては、高齢者と同じようなケアでは駄目だという意識を持って向き合ってほしいなという思いでおります。 今、申し上げたように、呼吸、肺がちっちゃかったり心臓が悪かったり、そういう不全のところを補うために、人工呼吸器を付けて生きていく子どもたちがいます。二つ目には、さまざまな障害でご飯が食べられない子は、胃瘻を開けたり、お鼻から管を入れて、そこから直接栄養を送り込むという形で栄養を取り育てられています。 こういうものを使っている子どもたちを総じて、その子が重度であろうとなかろうと、ベースメントとして医療的ケア児と呼ぶことになり、この子たちもこれまでの身体障害や知的障害や精神障害や発達障害の子と同じように、差別なく地域社会の福祉の力を借りてちゃんと生きていけるように、首長は責任を持たなくてはいけないということで2年前から検討が始まりました。 しかしプライバシーの問題で、医療的ケア児の様子がなかなか見えないので理解してもらえないことが多いのです。大島分類という障害の判定基準がありますが、寝たきりで重い知的障害の子は確実に守ろうというのがこの国の福祉の形。ところが、お医者さんたちが頑張ってくれたお蔭で生きることができた医療的ケア児の場合は、歩くことができる、走ることができる、そして頭もまあまあ、足し算、掛け算もできるとなると、今までの福祉の枠にははまりません。しかし、歩くことができても、人工呼吸器が外れたらその場で死んでしまうリスクのある子がこの世にたくさん存在しています。要は医療の進歩と福祉の進歩が相まっていないというところが問題で、これは全部法律によって適用させていかなくてはなりません。 日本は少子国家で、今後もその少子化のトレンドというのは変わらない。ところが、医療的ケア児というのは、医師のご尽力や子どもの生きる力や親の努力で、反比例にどんどん増えていくだろうと。今でこそ人工呼吸器や胃瘻程度ですが、補助心臓を皆さんご存じですか?心臓移植を控えた子どもが、移植を待っている間に補助心臓を付けます。これはとても大掛かりなもので、基本的には補助心臓を付けている子どもは入院しています。しかし医師たちの話によると、「このような子たちも、あと数年で病院の中ではなくて、家で生きられるようになるだろう。」と言われています。病院の中で生きるということは正常ではないのですから、子どもにとってはそれが一番良いことなのです。家族と一緒に育つということを、本当は国が責任を持って取り組まなくてはいけない。どんな子であっても、病院にいることがいいことではなくて、病院から一日も早く出してあげて、人として生かすことが大事。その対象になる医療的ケア児が、どんどん増えていることをご理解いただきたいと思います。 現在、学校の先生を減らすという話が出ていますが、こういう子どもたちが学校に入れるように、看護師さんを増やす等、ケアをしてくれる人を増やすという切り替えをしていかなければいけないのではないかと思います。 医療的ケア児に会ったことがない方も多いと思うので、今日はどのような子が医療的ケア児かというニュアンスだけでもわかっていただければ。国会議員の息子なので、どんどん社会の役に立たせようと、今日もこの場に息子を連れてきたかったのですが、学校があって残念ながら連れてくることができませんでした。そのため、息子の写真を見ていただくことで、いろいろな誤解や偏見や差別等を解いてもらいたくて。とにかく難しい説明より写真を見ていただいた方が理解しやすいかなと思い準備をさせていただきました。(講演では写真スライドで説明) 息子は生きていくために、赤ちゃんのときに気管を切開して人工呼吸器と酸素を入れていました。3歳までは24時間の人工呼吸器、酸素ということになりましたが、成長につれて自発呼吸がだんだんできるようになってきていて、現在は夜寝てから起きるまで、就寝時間だけ人工呼吸器のお世話になっています。 息子は産まれてすぐ仮死状態になり、口の中に人工挿管されて私のおっぱいも吸えませんでしたし、口から物を食べるということができなかったので、口は何のためにあるのだろうかとわからないまま育ちました。でも生きていくためには栄養が要るということで、最初は医師から処方されたツインラインという栄養を1回につき2~3時間かけて1日6回胃瘻からあげていました。こうなると親は睡眠もままならない人生を送るわけです。 あるとき夫が、「ツインラインを飲ませてもいいけど、真輝も人だろう。だから人間が食べる物も食べさせてみたいよね。」と言い出し、「じゃあ、手作りのミキサー食をやってみようか。」と、最初は医師に内緒でやりました。食材は30から40品目、旬の食べ物や調味料を工夫し、和食のようなテイストにしました。現在は1日、朝昼夜夜。7時、12時、17時、22時に60ccのシリンジ7本分のおかずとデザートをあげています。 (以降はPDFを参照ください)
著者
名取 貴光 中川 裕子 桜林 ひかる 福井 智 野田 聖子 窪島 愛華 戸澤 一宏 仲尾 玲子
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.91-102, 2015 (Released:2015-11-24)

野山に自生する山菜の多くは古くより食用として好まれてきた。また,これら山菜は様々な効能をもつことから民間療法として薬用にも用いられている。山菜由来成分には,抗腫瘍効果や抗酸化作用,抗菌活性,抗肥満作用などが報告されており,多種多様な生理活性物質が含まれている。本研究では,山梨県内で採取される山菜の機能性成分と生理活性について検討を行った。試料は,山梨県総合農業技術センター,八ヶ岳薬用植物園で採取した山菜を使用した。14種類の山菜の総ポリフェノール量およびDPPHラジカル消去活性を測定したところ,ミツバアケビ,ワレモコウ,メグスリノキにポリフェノールが多く含まれており,抗酸化活性が高いことが確認され,ポリフェノール含量と抗酸化活性に高い相関がみとめられた。次に,これらサンプルのC6 glioma株に対する抗腫瘍効果について検討を行ったところ,アケビ,ワラビ,ツリガネニンジン,モミジガサ,ギヨウジャニンニク,オオバギボウシ,ヒメツルニチニチソウ,メグスリノキに濃度依存的な抗腫瘍効果が認められた。特に,オオバギボウシとヒメツルニチニチソウにおいては低濃度で顕著な抗腫瘍効果が確認された。また,カルセイン-AMおよびプロピディウムイオダイドを用いた生死細胞の判定を行ったところ,アケビおよびワラビ,メグスリノキにおいて顕著な細胞死が誘導されており,アポトーシスの指標であるCaspase-3の活性の上昇や細胞膜成分の転移が確認されたことから,これら山菜による抗腫瘍効果はアポトーシスであると考えられる。一方,ギョウジャニンニク,オオバギボウシ,ヒメツルニチニチソウにはG2/M期における細胞周期に異常がみとめられた。今回供試した山菜による抗腫瘍効果はアポトーシスおよび細胞周期の異常であると考えられる。
著者
中岡 加奈絵 田辺 里枝子 奥 裕乃 山田 麻子 野田 聖子 星野 亜由美 祓川 摩有 五関‐曽根 正江
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.57-63, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
37
被引用文献数
3 6

高脂肪食におけるビタミンD制限によるアルカリホスファターゼ (ALP) 活性への影響について検討した。11週齢SD系雄ラットをコントロール食 (C) 群, ビタミンD制限食 (DR) 群, 高脂肪食 (F) 群, 高脂肪食でビタミンDを制限した食餌を与えた (FDR) 群の計4群に分けた。実験食開始28日後に, 大腿骨のALP活性は, DR群がC群と比べて有意に低値を示し, FDR群もF群と比べて有意に低値を示した。また, 十二指腸のALP活性においては, FDR群がF群と比べて有意に低値を示した。小腸ALPは, 腸内細菌由来のリポ多糖 (LPS) などを脱リン酸化して解毒していることが示唆されており, 高脂肪食摂取時におけるビタミンD制限が小腸ALP活性を低下させることにより, 腸内ホメオスタシスに影響を及ぼしている可能性が考えられた。
著者
野田 聖子
出版者
医学の世界社
雑誌
産婦人科の世界 (ISSN:03869873)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.109-115, 2005-02
被引用文献数
1