著者
玉那覇 彰子 向 真一郎 吉永 大夢 半田 瞳 金城 貴也 中谷 裕美子 仲地 学 金城 道男 長嶺 隆 中田 勝士 山本 以智人 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.203-209, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミDiplothrix legataのルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.
著者
玉那覇 彰子 中田 勝士 山本 以智人 亘 悠哉 向 真一郎 吉永 大夢 半田 瞳 金城 貴也 中谷 裕美子 仲地 学 金城 道男 長嶺 隆
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.203-209, 2017

<p>沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミ<i>Diplothrix legata</i>のルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.</p>
著者
尾崎 清明 馬場 孝雄 米田 重玄 金城 道男 渡久地 豊 原戸 鉄二郎
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.136-144, 2002
被引用文献数
14

沖縄本島北部のやんばる地域において,ヤンバルクイナの分布を,音声プレイバック法を用いて調査し,結果を過去の調査結果と比較した。その結果1996~1999年は,調査した95メッシュのうち49メッシュでヤンバルクイナの生息が確認され,確認できたメッシュの割合は51.6%であった。2000~2001年にヤンバルクイナの生息が確認されたのは,調査した255メッシュのうち116メッシュでその割合は45.5%であった。生息域の南限が,1985~1986年からの15年間に約10km北上し,生息域の面積は約25%減少したものと考えられた。一方沖縄県によってマングースの駆除が実施されたが,捕獲された地域はヤンバルクイナが見られなくなった地域と一致することがわかった。このことから,ヤンバルクイナの生息域の減少には,マングースが関与していることが強く示唆された。
著者
金城 道男 池田 啓 柳生 博 敷田 麻実
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
ワイルドライフ・フォーラム (ISSN:13418785)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.8-9, 2007-05-10

大宜味村の嘉如加という集落にある山は、四十年ほど前まではてっぺんまでが段々畑で、林は伐採され、奥に入っても炭焼き小屋があるなど、人間の手がかなり加えられていました。そこにはまさしく、柳生さんがお話しになっていた「里山」がありました。このような人里でも現代まで生き抜いてきたのが、「飛べない鳥・ヤンバルクイナ」です。ところがマングースなどが入ってくると、地上の雛も簡単に見つかってしまい、餌食になってしまう。もともと、やんばるの森には肉食獣が存在しないため、人間が持ち込んだマングースや捨てネコなどに、ヤンバルクイナは対処する力がありません。この状態を放置しておけば、ヤンバルクイナは絶滅してしまいます。ヤンバルクイナを守ることができれば、やんばるの森全体の生物が守れる、ともいわれています。対策として、マングースの侵入防止柵を設置し、ヤンバルクイナの保護のための救命センターを開設して活動しています。くやしいことにマングースの進出を食い止めることはできていません。とうとう人間の力でコントロールできないところまで来てしまいました。ヤンバルクイナの棲息区域は北上の一途を辿っており、これはマングースの進出規模と比例しています。現在の大宜味村では、ヤンバルクイナをめったに見ることがなくなりました。それでも、私には夢があります。名護の豊かな森でもヤンバルクイナが見られるようになることです。