著者
池上匡 萩原浩明 田山芳史 金野義紀
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【目的】Kanda らの衝撃的な報告により、頻回にわたってガドリニウム(Gd)造影剤を使用された患者の淡蒼球と小脳歯状核にGdが沈着している可能性が示唆された。しかしリニア型とマクロ環型の造影剤では、キレートからのGd遊離量に大きな差があると考えられる。そこでリニア型またはマクロ環型の造影剤を複数回使用された患者で、小脳歯状核のT1高信号化に差があるかどうかを検討した。【対象と方法】2011年7月より2014年3月に頭部造影MR検査を受けた患者258人をスクリーニングして、それより以前を含めて初回の造影検査からリニア型造影剤のみ(Gd-DTPAまたはGd-DTPA-BMA)(リニア群)あるいはマクロ環型造影剤のみ(Gd-DOTA)(DOTA群)を5回以上投与された患者群、それぞれ21人と11人を後ろ向き解析の対象とした。Kanda らの方法に従い、各回のMR検査時の単純T1強調画像の歯状核/橋の信号強度比を測定した。統計解析には初回、5回目、最終回(各群平均8.1回と7.9回)の検査時の信号強度比を用いた。【結果】両群間の年齢、性別、検査期間の平均eGFR、総造影回数には有意差を認めなかった。リニア群ではKandaらの報告の通りに、造影回数が増えるにつれて歯状核信号の上昇を認めたが、DOTA群では信号上昇を認めず、両群間に有意な差を生じた。最終回検査の信号強度比を目的変数として重回帰分析を行うと、年齢、性別、eGFR、総造影回数、原疾患の良悪性、頭部放射線治療の有無、初回から5回目検査までの日数に関わらず、造影剤の種類のみが有意な予知因子であった。【結論】Kandaらの発見した頻回造影患者における小脳歯状核の信号上昇は、リニア型造影剤の使用により起こる現象であり、遊離Gdのはるかに少ないGd-DOTAでは起こりにくいと考えられる。【 開示すべき利益相反はありません】