著者
古川 聡子 河口 勝憲 岡崎 希美恵 辻岡 貴之 通山 薫 佐々木 環
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.563-568, 2018-07-25 (Released:2018-07-28)
参考文献数
6

2008年にクレアチニン(Cre)から算出した推算glomerular filtration rate: GFR(eGFRcre)が,2012年にはシスタチンC‍(Cys)から算出した推算GFR(eGFRcys)が公表され,推算GFRは臨床現場で簡便な腎機能の指標として活用されている。しかし,しばしばeGFRcreとeGFRcysが乖離する症例に遭遇する。そこで,今回eGFRcreとeGFRcysはどの程度一致するのか,また乖離症例にはどのような特徴があるのかを検証した。全症例(n = 226)での相関関係は回帰式y = 0.92x + 2.44,相関係数r = 0.868と良好な結果であったが,CKD重症度分類のGFR区分におけるeGFRcreとeGFRcysの一致率は55.8%と約半数であった。不一致例はeGFRcreと比較し,eGFRcysの区分が軽い症例と重い症例が同等に存在し,どちらか一方への偏りは認めなかった。さらにGFR区分が2段階以上異なる症例は8症例で全体の3.5%であった。eGFRcys/eGFRcre比の比較では,その比が最も1.00に近かった60歳代を基準とすると,若年では高く,高齢では低くなる傾向を認めた。また,eGFRcys/eGFRcre比は体表面積が大きいほど,血清アルブミンが高値なほど高くなる傾向を示し,高度蛋白尿では低値となった。腎機能評価においては,各推算式の特徴や乖離要因を把握した上で使用することが重要である。
著者
仁井谷 暁子 松浦 浩徳 藤本 亘 河野 匡彦 石原 諭 堀家 英之 佐々木 環 佐々木 慎理
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.387-392, 2008-08-01
参考文献数
13

単純血漿交換法を施行した中毒性表皮壊死剥離症(toxic epidermal necrolysis;TEN)の2例を報告する。症例1:50代の女性。感冒様症状に対し,ルル<SUP>&reg;</SUP>,バファリン<SUP>&reg;</SUP>,アルピニー<SUP>&reg;</SUP>坐薬を使用後発症。症例2:60代の男性。急性心筋梗塞を発症し,治療過程で多剤を使用しており原因薬剤は特定できず。いずれもステロイドパルス療法を施行後も紅斑,表皮剥離が進展し,単純血漿交換法を施行した。2例とも数日以内にびらん面の上皮化が認められたが,症例2は急性心不全により死亡した。TENの発症機序にFas/Fas系を介した表皮角化細胞のapoptosiが提唱されているが,自験例では血漿交換施行前の患者血清中sFasLの上昇が認められなかった。自験例で単純血漿交換法が有効であったことはTENの発症&middot;進展にはsFasL以外にも重要な因子が関与する可能性を示唆している。
著者
笹本 洋子 松村 正 小林 由佳 内古閑 修 長澤 利彦 十川 裕史 佐々木 環
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.599-604, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

7X歳女性, 血液透析 (HD) 歴1年. 透析当日, 来院時から全身倦怠感と発熱 (37.5°C) を認め入院となった. 血液培養検査でG群β溶血性レンサ球菌を検出した. 一時40°C近い発熱と敗血症様の症状を呈し全身状態が悪化したが, 抗菌薬の点滴により全身症状は速やかに改善した. しかし同時に両眼の視力低下を認め, 敗血症による両眼の内因性細菌性眼内炎と診断された. 内因性細菌性眼内炎は, 視力予後不良な疾患として知られているが, 幸いにも速やかな診断の上で抗菌薬の全身投与と抗菌薬の頻回点眼により最終的には視力回復を得た. 今回, われわれは早期の診断と適切な抗菌薬の全身投与によりG群β溶血性レンサ球菌 (GGS) の敗血症から発症した内因性眼内炎から視力回復した症例を経験した.