著者
坂井 建雄 澤井 直 瀧澤 利行 福島 統 島田 和幸
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.337-346, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
19

要旨:1) 明治5年の学制から始まる医学教育制度と明治7年の医制から始まる医師資格付与制度の変遷をたどり,現在にまでいたる医学校の量的・質的な発展の過程を7つの時期に分けた.2) 明治初頭には従来開業の者にも申請により医師免許が認められた.医師免許を得るために医科大学ないし専門学校を卒業する途と開業試験に合格する途が大正期まで併存し,基準が不統一であった.3) 戦前の医学校は無試験で医師免許を得られる特典や,専門学校や大学への昇格を目指してきたが,帝国大学,医科大学,専門学校という異質なものを含んでおり,医学教育の水準は多様であった.4) 戦後に行われた医師国家試験の導入と新制大学の発足により,医学教育の質は均質化し,一定の質が保証されるようになった.5) 医学校の量的な拡大は,明治20年以前の変動期を除くと,大正8年からの12年間,昭和14年から終戦までの7年間,昭和45年からの10年間に集中しており,それ以外の時期では安定していた.
著者
椎橋 実智男 福島 統 錦織 宏 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.283-289, 2012-08-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
7
被引用文献数
4
著者
岡崎 史子 中村 真理子 福島 統
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-368, 2012-10-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
21

背景:J医科大学医学科3年生に実施している訪問看護同行実習で学生が何を学んでいるのかを明らかにする.方法:平成22年に行った本実習後に提出された実習報告書の記述を質的に分析し,実習の学びについてカテゴリーの抽出を行った.結果:コアカテゴリーとして(1)在宅医療の特徴,(2)患者,(3)家族,(4)訪問看護師,(5)チーム医療,(6)医師・医学生に対する生の声,(7)医師として大事なことが抽出された.(6)ではカテゴリーとして医師への不信感,医学生への期待の存在が抽出された.考察:本実習で医師として大切な様々な学びが得られ,特に医師への不信感,医学生への期待は訪問看護同行実習ならではの学びと思われる.
著者
栗原 敏 福田 康一郎 佐藤 達夫 江藤 一洋 福島 統 神津 忠彦 高瀬 浩造
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2001

1.共用試験Computer-based Testing (CBT)の試験システムの開発および運用に関する研究:平成13年度にCBTシステムの基本的開発を行った。データベース構造および問題入力ソフトについては東京慈恵会医科大学において総合試験システム(Exam98)を参考に研究、開発を行い、出題方式(コンピュータ試験)、サーバーでの問題管理などは独自開発を行い、平成14年2月からの第1回CBTトライアルに投入した。第1回トライアルで発見されたシステム上の問題点を平成14年度の本研究により改修し、平成15年2月からの第2回CBTトライアルに投入している。2.MCQ問題の作成とその質の確保に関する研究:第1回トライアルでは5肢択一形式のいわゆるタイプAの多肢選択問題を出題し、出題したすべての問題を解答率、識別指数、解答パターンを参考に検証した。この検討の結果、共用試験CBTの問題の質を確保するためには、項目反応理論の適応が必要であるとの結論に至り、現在、項目反応理論のCBTへの適応の検討が続いている。第2回CBTトライアルでは、さらにわが国の独自開発による順次解答型連門形式を試行している。順次解答2連門形式、順次解答4連門形式は、コンピュータ試験の特性を生かしたもので、問題解答後次の問題に移ったら前の問題には戻れないタイプのもので、紙と鉛筆の試験では実施できなかったものである。このタイプを用いることで、受験者が一つの症例について順次情報が集積されていく過程の中での判断を問うものである。本形式は米国のSTEP1にもなく、わが国独自の出題形式である。3.客観的臨床能力試験(OSCE)の開発と運用に関する研究:平成13年度の共用試験OSCEは医科、歯科あわせて20校で、少数トライアルとなった。この第1回OSCEトライアルでの学生成績を集め、評点の評価者間較差の研究を行った。4.歯学における試験の作成と運用に関する研究:医科、歯科ではとくにOSCEの課題に大きな相違があり、その相違が運用にどのように影響するかのデータを集積した。
著者
福島 統
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.555-563, 2023-12-25 (Released:2024-02-08)
参考文献数
31

国内では, 大学設置基準が2022年9月に改正された. COVID-19パンデミックを乗り越えてきた大学の経験を活かし, 現行のルールでは認められていない教育方法, 単位認定を「特例制度」として実施できる道が開かれている. 「特例制度」という社会実験の成果を今後の大学設置基準の改定に活かしていく必要がある. 海外では, このパンデミックを通じ, 医学生は守られるべき学習者かそれともエッセンシャルワーカーかという議論や, 今回のパンデミックのように医学教育の順次性が中断された時, 進級, 卒業, 臨床研修への移行にあたり, 教育時間ではなく学習者がどのような能力を獲得しているかに重点を置いたCompetency-based, Time-variable (CBTV) Educationなどの議論が行われている.
著者
錦織 宏 福島 統 仁田 善雄 神津 忠彦 鈴木 利哉 奈良 信雄
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.370-372, 2008-12-25 (Released:2011-05-24)
参考文献数
11
被引用文献数
3

1) 英国における近年の学士入学制度 (Graduate Entry Programme) 導入の動向について, 現地で行った面接調査に文献による考察を加えてその内容を報告した.2) GEPは短期的にはよい医師を育てることができる可能性があるが, 長期的なエビデンスはまだなく, その是非に関する更なる議論が必要である.3) GEPを導入せずとも現在のカリキュラムを改革することによって改善できる内容がある.一方でGEPは多様性のある医師を養成できるという点で優れている.
著者
仁田 善雄 前川 眞一 柳本 武美 前田 忠彦 吉田 素文 奈良 信雄 石田 達樹 福島 統 齋藤 宣彦 福田 康一郎 高久 史麿 麻生 武志
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.3-9, 2005-02-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2

共用試験CBTにおける項目反応理論の有用性を評価するために, 2002年の2-7月に実施した医学系第1回トライアルのデータを解析した. このトライアルはモデル・コア・カリキュラムの大項目分類 (6分野) をすべてカバーできるようにデザインされており, 含まれている試験問題数は2, 791題であった.各分野において, 3-40題の問題がランダムに抽出され, コンピューターシステムを用いて5, 693名 (4年生-6年生: 解析対象者5, 676名) の学生に実施された. 各学生には100題出題された. 項目反応パターンについては3母数ロジスティックモデル (項目識別力, 項目困難度, 当て推量) により分析した. 以下の知見が得られた. 1) 項目困難度と正答率には強い負の相関がみられた (r=-0.969--0.982). 2) 項目識別度と点双列相関係数には中程度の相関がみられた (r=0.304-0.511). 3) 推定された能力値と得点とには強い正の相関が見られた (r=0.810-0.945). 4) 平均能力値は学年が上がるにつれて増加した. 5) モデル・コア・カリキュラムの6分野間の能力値の相関係数は0.6未満であった. 1人ひとりが異なる問題を受験する共用試験の場合, 項目反応理論を使用することが望ましいと考える. 第1回トライアルは, 項目反応理論を使用することを想定してデザインされていなかった. 第2回トライアルでは, これらの比較を行うために適切にデザインされたシステムを用いた. 現在, この結果について詳細に解析を行っているところである.
著者
小林 志津子 関本 美穂 小山 弘 山本 和利 後藤 英司 福島 統 井野 晶夫 浅井 篤 小泉 俊三 福井 次矢 新保 卓郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-35, 2007-02-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
23
被引用文献数
3

1) 日本の医学生が臨床実習中に受ける不当な待遇 (medical student abuse) に関する報告はこれまでされていなかった.2) 日本の医学生を対象にしたわれわれの調査では, 回答者の68.5%が, 何らかのmedical student abuseを臨床実習中に受けたと報告した.3) 臨床実習においては, 指導医の「neglectやdisregard」があると学生の実習意欲を顕著にそぐことが回答者の意見から推測できた.4) 医学教育の関係者はmedical student abuseに注意を払い, 防止策を講じる必要がある.