- 著者
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針谷 正祥
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
- 雑誌
- 臨床リウマチ (ISSN:09148760)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.3, pp.215-222, 2012-09-30 (Released:2015-08-31)
- 参考文献数
- 32
目的:肺合併症を有するrheumatoid arthritis(RA)患者の検査,治療,予後等に関するエビデンスを整理し,そのリスクマネージメントをリウマチ医の視点から議論することを目的とした.対象・方法:国内・外のRA およびリウマチ性疾患の肺合併症に関する論文,学会発表を使用した.結果:RAに合併する様々な肺合併症中で,頻度および治療・生命予後への影響からinterstitial pneumonia(IP)が最も重要であり,胸部単純レントゲン写真異常は1~12%,高分解能Computed Tomography(CT)では約20~30%に異常が認められる.IPを伴うRA患者の生命予後規定因子として,病理組織パターン,高分解能CTによる画像パターン,呼吸機能などが報告されている.IPを中心とする肺合併症は国内外の疫学研究で,有意なRAの感染症リスク因子であることが示されている.一方,RA患者に発現する感染症のうち,呼吸器感染症は全体の約半数をしめ,生命予後に影響を及ぼす.IPおよび気道病変を伴うRA患者のマネージメントでは,これらの病態がRAの関節外症状の一つであり,早期にRAの活動性を制御できない場合には,易感染性,呼吸機能低下によって治療選択肢が狭められ,さらにRAの活動性が持続するといった悪循環を形成することを認識することが重要である.結論:現在の抗リウマチ薬・生物学的製剤では進行した肺合併症を伴うRA患者の治療は必ずしも容易ではなく,早期からの積極的な治療介入および新たな作用機序を有する薬剤の開発が望まれる.