著者
野々村 美紀 針谷 正祥
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2524-2530, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
16

我が国では,2009年5月の時点で,関節リウマチ(RA)に対し4種類の生物学的製剤が承認されている.これらの薬剤は,RAの臨床症状を著明に改善させるのみならず,関節破壊進行抑制,身体機能改善においても良好な成績をあげている.生物学的製剤投与中は臨床的・画像的・機能的評価を定期的に行うと共に,感染症,アレルギー反応などに対するリスクマネージメントを確実に実施しつつ患者をフォローする必要がある.
著者
鎌谷 直之 川本 学 北村 豊 針谷 正祥 奥本 武城 隅野 靖弘
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.71-80, 2004

日本のヒト遺伝子解析研究に関する倫理指針を遵守して、研究計画について倫理審査委員会の事前承認を得た後、日本人ボランティアに十分な説明をし、自由意志による同意を得て末梢血液試料を収集した。血液試料は細胞株化研究に使用する前に新しく開発した匿名化プログラムを用いて連結不可能匿名化した後、Epstein-Barr virus処理して996人のB細胞株を樹立した。樹立した全細胞株を公的な国立医薬品食品衛生研究所と(財)ヒューマンサイエンス振興財団の細胞バンクに寄託し、2003年に細胞株の分譲が開始された。ヒト遺伝子解析研究に利用できるこれらの細胞株の分譲は、ヒト遺伝子解析研究の進展に貢献すると期待される。
著者
本田 卓 針谷 正祥
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.93-98, 2023-08-25 (Released:2023-08-25)
参考文献数
8

Genome wide association study (GWAS) is a type of genetic analysis that looks for association between a particular disease or trait and single nucleotide polymorphism (SNP). The polygenic risk score is the sum of the number of risk alleles weighted the GWAS-estimated effect sizes of each SNP on a disease. Researchers have been exploring the use of polygenic risk score (PRS) to predict disease risk and personalize treatment plans, an approach known as precision medicine. Our study was the first to demonstrate that a PRS based on GWAS data for rheumatoid arthritis (RA) onset can also predict joint damage progression. In particular, we found that the PRS is more accurate for predicting joint damage progression in young-onset patients with RA. To facilitate large-scale validation of our findings, we developed an artificial intelligence-based joint damage scoring system. This system will enable us to further investigate the relationship between PRS and disease severity in a larger, more diverse population. Further research is needed to refine the PRS construction method, particularly in terms of identifying the most informative SNPs and optimizing the weighting scheme for risk alleles.
著者
日高 利彦 針谷 正祥 鈴木 王洋 石塚 俊晶 原 まさ子 川越 光博 中村 治雄
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.203-210, 1991-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例: 27歳,女性.昭和63年9月,紫斑,多関節痛,咳嗽が出現した.平成元年3月症状増悪し,当科に入院となった.入院時,低酸素血症,顕微鏡的血尿,低色素性貧血,高γ-グロブリン血症,低補体価,免疫複合体高値,胸部X線上,両下肺野の網状影を示した.肺機能検査にて閉塞性換気障害,肺拡散能力障害,腎生検にて糸球体への補体,免疫グロブリンの沈着を認めた.また,皮膚生検にてleukocytoclastic vasculitisの所見を得た.過敏性血管炎と診断し,プレドニゾロン60mg/dayの投与を開始したが,肺出血を合併したため,急速な免疫複合体除去を目的として免疫吸着療法を行った.その後,血中免疫複合体の低下と諸症状の改善を認めた.本症のような,免疫複合体高値かつ多臓器障害を伴う過敏性血管炎に対し,免疫吸着療法は有効な補助療法と考えられた.
著者
針谷 正祥
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.379-388, 2004 (Released:2005-02-22)
参考文献数
48
被引用文献数
1

CD40およびCD154はそれぞれTNF受容体スーパーファミリー,TNFスーパーファミリーに属する分子であり,多くの研究結果が自己免疫疾患の病態形成におけるCD40-CD154相互作用の重要性を示している.CD154は主に活性化T細胞に発現し,B細胞のみならず幅広い細胞に発現するCD40と結合して,自己免疫疾患における抗原提示・トレランス・抗体産生・組織障害などに関与する可能性が示されている.膠原病の中では,特に全身性エリテマトーデス(SLE)あるいは関節リウマチ(RA)におけるCD40-CD154相互作用の研究が最も精力的に進められてきた.本稿では,SLE, RA,炎症性筋疾患,強皮症,抗リン脂質抗体症候群の病態形成におけるCD40-CD154相互作用の関与について基礎・臨床の両面からこれまでの報告を俯瞰すると共に,CD40-CD154阻害療法の臨床試験結果についても取り上げた.モデル動物でのCD40-CD154阻害療法は優れた治療効果を示し,新薬開発の標的分子として注目を集めている.しかし,現時点では有効性と安全性を両立するCD40-CD154阻害薬はいまだ開発されておらず,今後の研究の進展が強く期待される.
著者
針谷 正祥
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.215-222, 2012-09-30 (Released:2015-08-31)
参考文献数
32

目的:肺合併症を有するrheumatoid arthritis(RA)患者の検査,治療,予後等に関するエビデンスを整理し,そのリスクマネージメントをリウマチ医の視点から議論することを目的とした.対象・方法:国内・外のRA およびリウマチ性疾患の肺合併症に関する論文,学会発表を使用した.結果:RAに合併する様々な肺合併症中で,頻度および治療・生命予後への影響からinterstitial pneumonia(IP)が最も重要であり,胸部単純レントゲン写真異常は1~12%,高分解能Computed Tomography(CT)では約20~30%に異常が認められる.IPを伴うRA患者の生命予後規定因子として,病理組織パターン,高分解能CTによる画像パターン,呼吸機能などが報告されている.IPを中心とする肺合併症は国内外の疫学研究で,有意なRAの感染症リスク因子であることが示されている.一方,RA患者に発現する感染症のうち,呼吸器感染症は全体の約半数をしめ,生命予後に影響を及ぼす.IPおよび気道病変を伴うRA患者のマネージメントでは,これらの病態がRAの関節外症状の一つであり,早期にRAの活動性を制御できない場合には,易感染性,呼吸機能低下によって治療選択肢が狭められ,さらにRAの活動性が持続するといった悪循環を形成することを認識することが重要である.結論:現在の抗リウマチ薬・生物学的製剤では進行した肺合併症を伴うRA患者の治療は必ずしも容易ではなく,早期からの積極的な治療介入および新たな作用機序を有する薬剤の開発が望まれる.
著者
針谷 正祥
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.2851-2859, 2012 (Released:2013-10-10)
参考文献数
6

RA新分類基準はRAの疾患概念を「持続的関節炎または骨びらんを伴う関節炎に進展する可能性が高い末梢性多関節炎」と定義し,早期関節炎からRAを感度・特異度高く分類することが出来る.1カ所以上の腫脹関節を伴い,他疾患を除外した後に,罹患関節数と部位,血清学的反応,急性期反応物質,関節炎持続期間からなるスコアリングシステムを適用する.RA新分類基準を診断に用いる場合には,鑑別診断に特に注意する.