著者
影山 洋子 山下 毅 本間 優 田中 千裕 中村 綾 冨田 美穂 寺田 奈美 毛利 恭子 小原 啓子 近藤 修二 船津 和夫 中村 治雄 水野 杏一
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.462-467, 2016 (Released:2016-12-26)
参考文献数
10

目的:インスリン抵抗性の診断は糖尿病発症予防のためにも早期発見が重要である.しかし,診断の基本となるインスリンが健診項目に入っている企業は少ない.そこで多くの企業の健診項目にあるTG/HDL-C比を利用して日本人におけるTG/HDL-C比がインスリン抵抗性の指標となり得るか,またその指標が10年間の糖尿病発症に関与しているかretrospectiveに検討した.方法:TG/HDL-C比を四分位し,男女別にhomeostasis model assessment-insulin resistance(HOMA-IR)と比較した.また,10年間における糖尿病の発症率をTG/HDL-C比高値群と非高値群で比較した.結果:男女ともにTG/HDL-C比が高くなるに従いHOMA-IRは増加していた.四分位による75パーセンタイルは男性が2.6,女性が1.4で,それ以上を高値群,未満を非高値群とすると,高値群は非高値群に比べてインスリン抵抗性を有していた割合が高かった.10年間の追跡による糖尿病発症では,男女ともに2001年時にTG/HDL-C比高値群が非高値群より2倍以上糖尿病を発症していた.結論:TG/HDL-C比はインスリン抵抗性を反映しており,鋭敏な糖尿病発症の予測因子となり得る.TG/HDL-C比としてみることで簡便でわかりやすいインスリン抵抗性の指標として使用できる可能性がある.
著者
水野 杏一 山下 毅 小原 啓子 船津 和夫 近藤 修二 横山 雅子 中村 治雄 影山 洋子 本間 優 前澤 純子
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.547-552, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
25

最近特定の職業と肥満の関連が指摘され、職業習慣病という言葉も聞かれている。エンジニアはパーソナルコンピュターなどの使用時間が長く、肉体的活動が少なく、不規則な生活、職場のストレスなどにより肥満が多いと報告されている。これらの研究は断面調査なので、エンジニアという職業が肥満を引き起こすのか、エンジニアを目指す若者がすでに肥満なのか明らかでない。そこでエンジニア会社の入社時健診を解析することにより既に肥満が入社前より存在しているか検討した。対象はエンジニア関連会社に平成27年度に入社する20歳代の男性(エンジニア予備軍)179人で、平成26年度国民健康・栄養調査(国民調査)から同年代の男性257名、および非エンジニア企業に入社する同年代男性新入社員49人と比較した、BMI 25以上の肥満の割合はエンジニア予備軍で30.2%、国民調査で20.9%、非エンジニア18.4%で、肥満の割合はエンジニア予備軍で対照群より約10%高かった。エンジニア予備軍で血圧上昇、耐糖能異常、脂質異常症の動脈硬化危険因子を持つ割合は肥満者が非肥満者に比べ有意に高かった(P<0.001)。肝機能異常を持つ割合も同様であった(P<0.001)。腹囲85cm以上の内臓肥満を有するのはBMIによる肥満者の94.4%におよんだ。しかし、メタボリック症候群を有するのはエンジニア予備軍で3.4%、エンジニア予備軍の肥満者でも11.1%で国民調査の同年代2.2%と比べ有意な差はなかった。以上、エンジニア予備軍は入社前から肥満が存在していた。若年者の肥満は後に認知症になりやすいこと、メタボリック症候群は多くなかったが、若年者の肥満者は将来メタボリック症候群になりやすいことなどより、肥満に対して早期の介入が必要である。その際、肥満の管理を個人のみに任せるのではなく、社員の健康を重要な資産とみなす健康経営が浸透してきているので、企業の積極的な介入が入社時より望まれる。
著者
衣川 秀一 中村 治雄 古和 久幸 田崎 義昭
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.363-369, 1974-12-31

Carbohydrate intolerance and hyperlipidemia have been known to be risk factors in atherosclerotic vascular disease. The present study was conducted to determine to what extent alcohol ingestion in man would cause the changes of plasma glucose and lipids in normal and atherosclerotic subjects. One hundred g of oral glucose tolerance tests, with and without 0.5g/kg alcohol ingestion 30 minutes prior to the test, were performed on each subject to measure glucose, immunoreactive insulin (IRI), free fatty acid (FFA), triglyceride, cholesterol, phospholipids and lipoprotein profile. Alcohol ingestion revealed a gradual increase of plasma TG with a concomitant increase of cholesterol in young and aged subjects. This would indicate that alcohol stimulates the release of pre-β lipoprotein from the liver. Under the present experimental conditions, alcohol failed to show glucose intolerance, but clearly increased plasma lipids. The result suggests that hyperlipidemia would be caused by alcohol ingestion and subsequently would result in atherosclerotic lesions.
著者
日高 利彦 針谷 正祥 鈴木 王洋 石塚 俊晶 原 まさ子 川越 光博 中村 治雄
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.203-210, 1991-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例: 27歳,女性.昭和63年9月,紫斑,多関節痛,咳嗽が出現した.平成元年3月症状増悪し,当科に入院となった.入院時,低酸素血症,顕微鏡的血尿,低色素性貧血,高γ-グロブリン血症,低補体価,免疫複合体高値,胸部X線上,両下肺野の網状影を示した.肺機能検査にて閉塞性換気障害,肺拡散能力障害,腎生検にて糸球体への補体,免疫グロブリンの沈着を認めた.また,皮膚生検にてleukocytoclastic vasculitisの所見を得た.過敏性血管炎と診断し,プレドニゾロン60mg/dayの投与を開始したが,肺出血を合併したため,急速な免疫複合体除去を目的として免疫吸着療法を行った.その後,血中免疫複合体の低下と諸症状の改善を認めた.本症のような,免疫複合体高値かつ多臓器障害を伴う過敏性血管炎に対し,免疫吸着療法は有効な補助療法と考えられた.
著者
船津 和夫 山下 毅 本間 優 栗原 浩次 斗米 馨 横山 雅子 細合 浩司 近藤 修二 中村 治雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.32-37, 2005-06-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的・方法:近年,男性において,肥満者の増加に伴い生活習慣病の1つである脂肪肝罹患者数の増加が著しい.最近,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やC型肝炎において瀉血療法により血中ヘモグロビン(Hb)を低下さることにより,肝細胞障害の改善とともに,肝細胞内の脂肪滴貯留が改善することが報告され,肝炎や脂肪肝において肝臓に蓄積した鉄がこれらの病態に関与していることが明らかにされてきた.しかし,脂肪肝と血中ヘモグロビンとの関係についてはこれまで検討されていない.そこで,中年男性を対象として,血中ヘモグロビン値と脂肪肝との関連について調査した.結果:非肥満者,肥満者ともに脂肪肝を有する群が無い群に比べ,血中ヘモグロビン値は有意に高値であった.また,血中ヘモグロビンの高値は肥満の有無にかかわらず,脂肪肝における肝機能検査値の異常にも関係していることが示された.さらに,ロジスティック回帰分析より,血中ヘモグロビンは飲酒量,肥満度とともに,独立した脂肪肝の関連因子であることが明らかにされた.結論:以上より,血中ヘモグロビンに含まれている鉄が間接的に脂肪肝の発症とそれに伴う肝機能障害に関連していることが示唆された.
著者
船津 和夫 斗米 馨 栗原 浩次 本間 優 山下 毅 細合 浩司 横山 雅子 近藤 修二 中村 治雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.811-817, 2008-03-31 (Released:2012-08-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:医療機関受診者に比べ一般健康人により近い健診受診者を対象として,胃食道逆流症(gastroesophagealreflux disease:GERD)の実態調査を施行した.方法:上部消化器疾患で治療中の人を除いた胃内視鏡検査受診者659名(男性368名,女性291名)を対象とした.内視鏡所見とfrequency scale for the symptoms of GERD(FSSG)問診票のスコアを基に対象者をびらん性胃食道逆流症(erosive gastroesophageal reflux disease:e-GERD),非びらん性胃食道逆流症(nOn-erosivegastroesophagealreflux disease:NERD),非GERDの3群に分け,各群の性別発見頻度と血糖,血清脂質,高感度C-反応性蛋白(CRP)などの生活習慣病関連因子,血圧,ならびにメタボリックシンドロームの合併率を比較検討した.結果:NERDの頻度は男女ともe-GERDより多かった.e-GERDは女性より男性に高頻度でみられ,NERD,非GERDに比べ,血圧が高く,血糖,血清脂質,高感度CRPなどがより高値を呈し,メタボリックシンドロームの合併率が高かった.一方,NERDはやぜ気味の人に多くみられ,血糖,血清脂質,高感度CRP,血圧は非GERDよりもさらに低値を示し,メタボリックシンドロームの合併率も3群のなかで最も低かった.結論:e-GERDは肥満に起因する生活習慣病の1つと考えられたが,NERDはやぜ気味の人に多くみられ,生活習慣病関連因子の異常が少ないことから,e-GERDとは異なる病態を有することが示唆された.
著者
水野 杏一 山下 毅 小原 啓子 船津 和夫 近藤 修二 横山 雅子 中村 治雄 影山 洋子 本間 優 前澤 純子
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.547-552, 2016

最近特定の職業と肥満の関連が指摘され、職業習慣病という言葉も聞かれている。エンジニアはパーソナルコンピュターなどの使用時間が長く、肉体的活動が少なく、不規則な生活、職場のストレスなどにより肥満が多いと報告されている。これらの研究は断面調査なので、エンジニアという職業が肥満を引き起こすのか、エンジニアを目指す若者がすでに肥満なのか明らかでない。そこでエンジニア会社の入社時健診を解析することにより既に肥満が入社前より存在しているか検討した。対象はエンジニア関連会社に平成27年度に入社する20歳代の男性(エンジニア予備軍)179人で、平成26年度国民健康・栄養調査(国民調査)から同年代の男性257名、および非エンジニア企業に入社する同年代男性新入社員49人と比較した、BMI 25以上の肥満の割合はエンジニア予備軍で30.2%、国民調査で20.9%、非エンジニア18.4%で、肥満の割合はエンジニア予備軍で対照群より約10%高かった。エンジニア予備軍で血圧上昇、耐糖能異常、脂質異常症の動脈硬化危険因子を持つ割合は肥満者が非肥満者に比べ有意に高かった(P<0.001)。肝機能異常を持つ割合も同様であった(P<0.001)。腹囲85cm以上の内臓肥満を有するのはBMIによる肥満者の94.4%におよんだ。しかし、メタボリック症候群を有するのはエンジニア予備軍で3.4%、エンジニア予備軍の肥満者でも11.1%で国民調査の同年代2.2%と比べ有意な差はなかった。以上、エンジニア予備軍は入社前から肥満が存在していた。若年者の肥満は後に認知症になりやすいこと、メタボリック症候群は多くなかったが、若年者の肥満者は将来メタボリック症候群になりやすいことなどより、肥満に対して早期の介入が必要である。その際、肥満の管理を個人のみに任せるのではなく、社員の健康を重要な資産とみなす健康経営が浸透してきているので、企業の積極的な介入が入社時より望まれる。