著者
楠 裕明 山下 直人 本多 啓介 井上 和彦 石井 学 今村 祐司 眞部 紀明 鎌田 智有 塩谷 昭子 春間 賢
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.949-954, 2010-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

炎症性腸疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎は消化器心身症の代表的存在として扱われてきた.われわれは現在の炎症性腸疾患と心身医学の関係について総説した.潰瘍性大腸炎はその発症に心理社会的因子は高率に関与するとした報告もあり,患者本人のストレスを受けやすい強迫的性格もみられ,症状の増悪や再燃などの長期経過にも関連性が強い.クローン病も潰瘍性大腸炎より低率であるが心理社会的因子は発症に関連し,患者にストレスを受けやすい強迫的性格が多く,長期経過にも心理的因子は関連性が強かった.治療に関しては,潰瘍性大腸炎では心身医学的なアプローチが行われる症例もみられるが,クローン病ではあまり行われていない.
著者
鎌田 智有 春間 賢 井上 和彦 石井 学 村尾 高久 山中 義之 藤田 穣 松本 啓志 眞部 紀明 楠 裕明 畠 二郎 塩谷 昭子 高尾 俊弘
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.750-758, 2016-05-25

要旨●H. pylori感染胃炎に対する除菌治療が2013年2月に保険認可された.現在,除菌による胃癌の予防が期待されているが,その一方で除菌後に胃癌が発見される症例も臨床上少なくない.除菌後10年未満と除菌後10年以上で発見された症例での臨床的特徴を比較検討した結果,10年以上で発見された胃癌は腫瘍径20mm大以下の比較的小さな病変であり,2次癌の比率が有意に高率であった.共通する特徴として,両群共に非噴門部領域に発生する0-IIc型病変を中心とした分化型早期癌であり,胃体部には高度な萎縮性変化を伴っていた.このような症例では,除菌から長期が経過しても胃癌発生のリスクが残存することを理解しておくことが重要である.
著者
塩谷 昭子 鎌田 智有 春間 賢
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.54-59, 2012 (Released:2012-01-06)
参考文献数
24

NSAID消化性潰瘍の発生には,胃酸分泌が重要な因子であり,胃酸分泌の低下あるいは抑制は潰瘍発生に抑制的に働く.H. pylori除菌は,NSAIDs内服開始前の潰瘍発生のリスクを低下させるが,長期NSAIDs内服例に対しては,潰瘍発生の予防効果はプロトンポンプ阻害薬(PPI)と比較して十分ではない.低用量アスピリンを含めNSAIDs継続投与が必要な潰瘍出血例に対しては,除菌の有無にかかわらず酸分泌を十分に抑制することが重要である.H. pylori感染とNSAIDsは互いに独立した潰瘍の危険因子であり,除菌治療のみでは,NSAIDsによる消化性潰瘍は予防できないことに注意すべきである.
著者
鎌田 智有 塩谷 昭子
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.854, 2012-05-24

シドニー分類は,1990年にオーストラリアのシドニーで開催された第9回世界消化器病学会で提唱された胃炎の国際的表記法1)である.これまでの胃炎分類を基盤として,さらにHelicobacter pylori(HP)感染を主体とした胃炎診断であり,histological division(組織学的部門)とendoscopic division(内視鏡部門)の2部門から構成されている(Fig. 1)2). 組織学部門 組織学部門では,etiology(成因),topography(局在),morphology(形態)の3項目に分類され,病因としては,HP,自己免疫性,薬剤性,特発性,感染性などが挙げられている.局在として,幽門部胃炎,体部胃炎,汎胃炎に分類され,形態学的には,炎症(単核球浸潤),活動性(好中球浸潤),萎縮,腸上皮化生,HPの5項目を診断し,さらにこれらの程度をnone(なし),mild(軽度),moderate(中等度),severe(高度)の4段階で評価する.さらに1996年,組織学的所見についてはThe undated Sydney System3)として改訂されている.主な改訂点は,胃内の5点生検(前庭部小彎,前庭部大彎,胃角部小彎,胃体部小彎,胃体部大彎)を行い,先の5項目について定量化することにある.
著者
楠 裕明 春間 賢 鎌田 智有 原 睦展 眞部 紀明 田中 信治 茶山 一彰 青木 信也
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
Journal of smooth muscle research. Japanese section (ISSN:13428152)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.J-163-J-168, 2002-12-27

非侵襲的な固形食の胃排出検査法として^<13>C-octanoic acid呼気試験が用いられつつある.われわれはこれまで超音波法を,非侵襲的な胃運動機能検査法として臨床応用してきたが,今回呼気試験と超音波法の二つの結果を比較した.17名のFunctional dyspepsia (FD)患者と10名の健常人を対象とした. ^<13>C-octanoic acid 100 mg を加えた卵黄でスクランブルエッグを作り,ご飯の上にのせた後市販の親子丼の素をかけて424 kcalの固形試験食とした.試験食を摂取後,超音波法は座位で3時間まで15分間隔で観察し排出曲線を描いた.呼気試験は3時間までを超音波法と同じ15分間隔で,3時間から6時間までを30分間隔で呼気を採取し,赤外線分光機を用いて^<13>C0_2を測定した.両試験の共通した排出動態指標であるT_<1/2>とlag phase を比較検討したが,呼気試験のT_<1/2>と超音波法のT_<1/2>はr^2=0.638と強い相関を示したが,両者の結果が一致する訳ではなかった. T_<1/2>とlag phase は共にFD患者で健常人より延長していた.呼気試験と超音波法の胃内残存率曲線は一致する傾向にはあったが,超音波法でのばらつきが大きかった.