- 著者
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長瀬 勝彦
- 出版者
- 特定非営利活動法人 組織学会
- 雑誌
- 組織科学 (ISSN:02869713)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.60-78, 1997 (Released:2022-07-22)
この報告の目的は,競争的状況下におけるリスクを含む連続意思決定について,合議決定と個人決定を動態的に比較分析することにある.被験者212名を対象にした実験の結果,いくつかの事実発見があった.強気の意思決定が高いパフォーマンスをもたらすポジティブ・フィードバックが続くと,個人群よりも2人合議群,4人合議群と人数が多い方がよりリスク・シーキングな意思決定を下すようになった.また,弱気の意思決定が高いパフォーマンスにつながるネガティプ・フィードバックが与えられると,逆に人数が多いほどリスク・アバースに振れた.全体的に,環境からのフィードバックに対しては個人よりも小集団合議のほうが敏感に反応し,またその反応は単純であると考えられる.この結果は,選択シフト,プロスペクト理論,エスカレーティング・コミットメント,組織の慣性等の諸理論に新しい論点を提供する可能性がある.