著者
新村 太郎 三好 雅也 角野 浩史 上田 恭裕 森 康 長谷中 利昭 荒川 洋二 長尾 敬介
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.135-147, 2022-06-30 (Released:2022-07-28)
参考文献数
36

To clarify the age of the volcanic activity of Nekodake volcano, the authors conducted K-Ar dating on ten samples of volcanic materials, using the sensitivity method. Four samples yielded ages approximately 50 to 82 ka. These newly obtained K-Ar age data indicate that Nekodake volcano was active during the post-caldera stage of Aso volcano. Based on the obtained ages, petrological characteristics, and lithofacies, the volcanism of Nekodake can be summarized as follows. 1) Effusive eruption of basaltic andesite magma produced thick lava flows at about 82 ka, and also formed agglutinates over a wide area at about 66 ka. The main volcanic body was formed by these eruptions. 2) Andesitic magma intruded the central part of the volcano at about 64 ka (late stage or just after the formation of the main part) forming dykes in an ENE-SSW direction. 3) Basaltic andesite magma intruded the central part of the volcano at about 50 ka and formed dykes in a NW-SE direction.
著者
杉山 芙美子 長谷中 利昭 安田 敦 外西 奈津美 森 康
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

阿蘇-4巨大噴火(89 ka)と阿蘇-3噴火(123 ka)の間には,何枚かのテフラ(A, B, C, D, , , M, N, α,β,,,η)が記載されている(小野ほか,1977).このうちAso-ABCDテフラは最上位に位置し,一連の噴火の産物だと考えられている.長橋ほか(2007)はAso-ABCDテフラ年代を97.7 kaと見積もっている.テフラの等層厚線から給源は阿蘇カルデラ内・中央火口丘群の南側に推定され(小野ほか,1977),噴出物の体積は3.5km3と見積もられている(町田・新井,1992).阿蘇-4火砕噴火の直前には大峰火砕丘の噴火とそれに伴う高遊原溶岩の流出が起こった.溶岩とそれを覆う阿蘇-4テフラの間に土壌を挟まないので,大きな時間間隙は考えられない.噴出物の体積は2 km3である.阿蘇-4後の中央火口丘群の活動中,最大の珪長質マグマの噴火は3万年前の草千里ヶ浜火山の軽石噴出で,体積は1.4km3(宮縁ほか,2003)に過ぎないので,阿蘇-4噴火前にある程度の大きさの噴火が続いたことがわかる.阿蘇カルデラ東方約20 kmの大分県竹田市荻町野鹿の露頭で阿蘇-4火砕流堆積物直下に層厚3mの降下軽石層と降下火山灰層の互層として露出するAso-ABCDテフラの軽石および火山灰を採集し,岩石記載および全岩XRF分析,鉱物のEPMA分析および鉱物中のメルト包有物のFT-IR分析をした.斑晶鉱物組合せは斜長石,斜方輝石,単斜輝石,マグネタイトで,阿蘇-4に普通にみられる普通角閃石は含まれなかった.軽石の全岩化学組成(SiO2= 63-66 wt.%)はKaneko et al. (2007, 2015) の阿蘇-4ではなく阿蘇-3組成トレンド上にプロットするものが多かった.斜長石や輝石に含まれるメルト包有物組成はSiO2=70-72 wt.%に集中し,Aso-3の組成とほぼ一致した.斑晶鉱物のコアの組成は,斜長石An40-64,斜方輝石Mg# =70-74,単斜輝石Mg#= 74-81であった.ホストの鉱物組成がAn40-61,斜方輝石Mg#=73-76,単斜輝石Mg#=76-79に対応するメルト包有物の含水量は1.0-4.8 wt.%と見積もられた.ホスト単斜輝石組成と含水量から見積もられる温度は860-950℃,圧力は1.1-2.7 kbar(Putirka,2008)であった.マグマ溜りの深度は地表から約3-9 km下となり,この深度は須藤ほか(2006)の草千里マグマ溜り深度6kmと一致する. 古川ほか(2006)は阿蘇-3,阿蘇-4間のテフラ組成,推定温度,推定含水量,推定酸素分圧が漸次変化していくことを示したが,本研究ではAso-ABCD組成はAso-3の組成に近いことが分かった.阿蘇-4噴火の9千年前にはAso-4組成のマグマ溜りはまだ存在していなかったか,あるいはAso-ABCDとは独立して相互作用なく成長していたことが考えられる.