著者
谷口 宏充
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

はじめに2003年ごろ、中国や朝鮮からの連絡を受けて、白頭山で火山活動が活発化していることを知るようになった。国内外の協力を得て検討を進めたが、一つ気になることがあった。以前、869年の貞観地震と白頭山10世紀噴火との関連を耳にしたことが有る。無関係ではないと言うのだ。そのような中で3.11巨大地震が身近で発生した。そこで生まれたのは2002年~2005年の白頭山における火山活動と3.11巨大地震との関係、また、両者の過去はどうであったのかと言う疑問である。日本、中国、朝鮮やロシアなど、広大な東北アジアにおける地震や噴火などの時間的な関係に焦点をあてた研究は少ない。しかし宇佐美(1974)は日本と朝鮮半島における有感地震を古文書に基づいて整理し、弱いながら両者の間には相関があることを示唆した。その中で最も明瞭な1700年頃には日本、朝鮮や中国でも史上最大規模の地震や富士山・白頭山での噴火が発生していた。近年の白頭山噴火の歴史町田(1981)による10世紀噴火に関する研究以降、東北アジアの研究者たちによって古文書や年代測定に基づき近年の噴火年代が報告された。“10世紀噴火”の年代についてはウイグルマッチング法や湖底堆積物などから940年前後の値(奥野他、2010など)が報告されている。また中国における噴出物の14C年代測定(Chichagov et. al., 1989)や地質調査(中川他、2004)に基づき、10世紀噴火の前860年頃に噴火(9世紀噴火)があったことが示されている。この噴火の火山灰は北海道森町においても発見されている(中川他、2012)。また10世紀以降の活動を調べるため、古文書に基づき確実だと思われる噴火年代を選び出した。その結果、最近の噴火は1373年、1597年、1702年、1898年、1903年の5回である。これらの内、1373年噴火は山麓からの玄武岩マグマによるものである。他の4回は外来水が関与した可能性の高い山頂噴火で、その内、1597年は規模が大きいが、残りのより新しい3回は極めて小規模な噴火と判断した。日本の巨大地震と白頭山噴火活動との時代的相関先に示した5回の噴火の内、1898年から一連と判断される1903年を除いた1373年、1597年、1702年と1898年の4回の活動について、日本における最近接巨大地震との時代的相関の検討を行った。どれだけ時間的に近接しているかを見るため、地震と噴火との前後関係は軽視した。その結果、年代差(噴火年代-地震年代)の平均値は1.3年、標準偏差は7.2年であり、3σでの年代差は‐20.4年~22.9年となった。東アジアで懸念された近い将来の白頭山噴火については、“日本における巨大地震と白頭山噴火との歴史経緯”、“最近のマグマ蓄積”、“日本と同じ広域応力場の変化”に基づき、可能性はあると判断した。もし2011年東北地方太平洋沖地震に関連して噴火が発生するなら、それは3σの確率で1991年~2034年となる。現実には今までに発生していないので、残りの2034年までが99%とした。しかしこの判断は、2002年からのマグマ性流体上昇による異常をどう評価するかで異なる。過去4回のケースと同じ時間関係は成立していたが、マグマ量が少ないなどの理由で噴火未遂に終わった、と考えるべきかも知れない。もう少し量が多かったら、最近3回と同じ小規模噴火になっていたのではないだろうか。この時間関係を869年の貞観地震にも適用すると、貞観地震に対応する白頭山噴火の年代は849年~892年であり、今まであまり知られていなかった“9世紀噴火”の存在とも調和的であった。
著者
宮本 毅 中川 光弘 長瀬 敏郎 菅野 均志 大場 司 北村 繁 谷口 宏充
出版者
東北大学東北アジア研究センター
雑誌
東北アジア研究 = Northeast Asian studies (ISSN:13439332)
巻号頁・発行日
no.7, pp.93-110, 2003-03-31

Baitoushan volcano (Changbaishan volcano in China), situated on the border between China and North Korea, is one of the most active volcanoes in mainland Asia. The volcanism is divided into three stages, firstly the shield volcano-forming stage effusing large amount of basaltic lava flow, secondly volcanic cone-building stage consisting of trachytic magma, and finally summit caldera (called Tianchi caldera)-forming stage erupting the vigorous alkali-rhyolitic pyroclastics. Tianchi caldera has been formed by some huge eruptions (10th century, 4000yBP eruption and more) since Pleistocene. In caldera-forming stage, the time sequence of such huge eruption progress from Plinian pyroclastic fall to following large pyroclastic flow (ignimbrite). Based on our geological and petrological studies and Radiocarbon dating about wood and charcoal samples in pyroclastics, we found that 9th century eruption, unknown until now, has occurred before 10th century eruption. From the relation of stratigraphy and radiocarbon age the dormancy between this episode and 10th century one is estimated about a hundred year. The time sequence and eruptive style of this new episode is similar to 10th century eruption, but the magma composition is different.
著者
山本 裕朗 谷口 宏充
出版者
東北大学
雑誌
東北アジア研究 (ISSN:13439332)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.201-232, 1999-03-31

Numerous cinder cones from Ojikajima monogenetic volcanic group are well-exposed by marine erosion that allows a detailed investigation of the proximal products. Observation of the exposures at sea cliffs and petrological study of the volcanic rocks revealed the formation process and the internal structure of cinder cones. These cones are divided into three types in terms of evolution: 1) scoria cone+lava flow, 2) spatter cone+lava flow, 3) maar,tuff-ring (phreato-magmatic phases)+scoria cones+lava flow. Four eruption styles of lava flow are found: 1) over flow from crater edge, 2) outflow from middle part of scoria cone with horseshoe-shaped collapse (intrusion of dike oblige from fissure), 3) without collapse, 4) outflow from middle part or basement (intrusion of dike parallel to fissure).論文Article
著者
横尾 亮彦 市原 美恵 谷口 宏充
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.299-304, 2004-10-29 (Released:2017-03-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Izu-Oshima volcano, one of the most active volcanoes in Japan, started a series of emotions on Nov. 15, 1986. One of the characters of the e ructions is the small-scale explosions with flashing arcs, which were the visualized shock waves as a phase change of H2O in the air. occurred at the summit lava-lake. The flashing arcs, seen on the movie, show several characteristics; 1) they spread and propagate semi-spherically, and 2) the launching of semi-spherical ballistics follows the flashing arcs. Analysis of the movie indicates that the velocities of flashing arcs were 300-440 m/s and their sources were located almost on the surface of the lava-lake. We paid attention to the ballistics in the light of scaling laws, which were established from field explosion experiments, so that we were able to estimate explosion energy as about 8×109J. Additionally, assuming that the flashing arcs were produced by an explosion, such as a bursting of pressurized-bubbles, we could get information of their condition, a relationship between inner-pressure and the size.
著者
前野 深 横尾 亮彦 菅野 繁広 紺谷 和生 小暮 昌史 谷口 宏充
出版者
東北大学
雑誌
東北アジア研究 (ISSN:13439332)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.243-252, 2005-03-28
被引用文献数
1

Distribution of sound and air vibration generated by the eruption of Asama Volcano on September 1st, 2004 was investigated by questionnaire surveys, which were carried out for 350 public schools by mail and 11 Japan Metrological Agency stations by phone. As a result, we revealed that Taiwa village in Niigata prefecture, 90km from Asama Volcano, is the farmost area perceived the sound and air vibration. East-limit of perceivable air vibration is Katashina village in Gumma prefecture, 80km, and west-limit of perceivable sound is Koumi-town and Sanada-town, 20km from the volcano. Sound and air vibration generated by this eruption leaned to the east.論文Article
著者
谷口 宏充 伊藤 順一
出版者
大阪府教育センター
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では火山噴火によって発生する爆風過剰圧などの物理量を計測し、同時に、付随する火山災害・噴出物の分布を調査し、両者の定量的な関連づけと爆発エネルギー量の決定を行おうとするものである。爆発的な噴火現象によって発生する火山災害や地質学的諸現象の分布は、爆発エネルギー量によって束縛されていると考える。もしこの考えが正しいなら、私たちは爆発エネルギーという只一個のパラメーターを定めることによって、他の全ての災害・地質現象の広がりや強度は数値シミュレションによって求めることができることになる。このことを実証するために、実際の火山噴火における爆発エネルギー計測方法の開発、実施、地質調査そして文献調査にもとづく災害・地質の諸現象と爆発エネルギー量との関連づけを試みる。1.爆発に伴う火砕流の最大到達距離は爆発エネルギー量によって規制されている。2.火口の直径は爆発エネルギー量の1/3乗に比例し、核爆発やTNT爆発などと同一の実験式によって記述される。3.マグマ噴火における熱エネルギーの爆発エネルギーへの変換効率は0.01〜0.4%、マグマ水蒸気爆発の場合には0.4〜7%程度であり、両者の間に明瞭な差がみられた。4.従って、火口直下に蓄積されている熱量や地下の帯水層に関する情報が地磁気学的な手法などによって与えられるなら、可能性のある最大爆発エネルギー量は評価され、数値シミュレションなどによって、火山爆発に伴う災害や噴出物の分布は予測できることになる。また過去の噴出物の地質学的調査を行うことによって、災害や噴出物分布についての統計的な予測をすることが可能になるかも知れない。5.阿蘇火山における1994年9月〜1995年2月までの計測結果によれば、各計測期間内における最大爆発エネルギー量は5×10^<15>erg程度であった。
著者
谷口 宏充 栗谷 豪 宮本 毅 長瀬 敏郎 菅野 均志 後藤 章夫 中川 光弘 伴 雅雄 成澤 勝 中川 光弘 奥野 充 伴 雅雄 前野 深 嶋野 岳人 板谷 徹丸 安田 喜憲 植木 貞人 古畑 徹 小嶋 芳孝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

頭山およびそれを包括する蓋馬溶岩台地に関して、現地調査、衛星データー解析、採集した資料の化学分析・年代分析、国内の関連地層の調査・年代分析などの手法を用いて、白頭山10世紀巨大噴火の概要、白頭山及び蓋馬溶岩台地の火山学的な実態を明らかにしようとした。開始してから1年後に北朝鮮のミサイル問題・核開発問題などの諸問題が発生し、現地での調査や研究者との交流などの実施が徐々に困難になっていった。そのため、すでに収集していた試料の分析、衛星データーの解析及び国内での調査に研究の主力を移し、可能な限りの成果を得ようとした。その結果、近年発生している白頭山における地震多発とマグマ活動との関係、存在は知られているが分布や内容が全く未知である蓋馬溶岩台地の概要が明らかになり、更に、地下におけるマグマの成因についても一定の結論を得た。混乱状態にある白頭山10世紀噴火の年代問題をふくめ、また、北朝鮮からの論文を含め、研究成果は12編の論文として論文集にまとめられつつある。
著者
井田 喜明 田中 良和 西村 太志 小屋口 剛博 谷口 宏充 岡田 弘
出版者
兵庫県立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本特定領域研究の目的は、火山爆発の素過程や発生機構について学術的な理解を深め、火山災害の軽減に寄与することである。その基礎として、火山爆発の性質を詳細に調べるために、「火山探査移動観測ステーション」が開発され、火口近傍での観測や試料採取、機器の設置を遠隔操作で行うことが可能になった。広帯域地震計や空振計などを用いた観測が、小爆発を繰り返す複数の火山で実施され、爆発に先立って特徴的な膨張や収縮が存在することがつきとめられ、爆発直前に進行する物理過程が明らかにされた。地下のマグマの上昇過程については、室内実験や理論的な考察によって、脱ガスやマグマ破砕の機構が究明された。また、シミュレーションによって、噴火の爆発性を決める原理が見出され、地殻変動の加速性がそれを予測する手段になりうることが示された。地表で進行する爆発現象については、火口から噴出する噴霧流の3次元シミュレーション手法が開発され、噴煙や火砕流を生む物理過程が究明された。また、爆発強度のスケーリングや、爆風に伴う衝撃波のシミュレーションなど、火山爆発の影響を見積もる有力な手法が得られた。本領域の各分野にわたる研究成果を基礎に、噴火現象に関連する各種の知見やデータを集めて、データベースが構築された。このデータベースは、現象の体系的な理解に役立つ。また、本領域で開発された計算コードと合わせて、噴火過程の総合的なシミュレーションをする基本的なツールになり、噴火や火山災害の予測に寄与する。噴火現象の評価や予測のためには、WEBサーバーを用いた合議システムも開発され、専門家の合議を迅速かつ能率的に進めることが可能になった。火山爆発に関する知識を広く普及する目的には、一般向けの講演会が催され、観測や野外実験の一部が公開された。また、研究成果を平易に解説する一般向けの書籍が出版される。
著者
谷口 宏充
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.97-109, 2000 (Released:2008-08-30)
参考文献数
63
被引用文献数
1

In the past several decades a significant number of research papers has been appeared on the international journals of earth sciences that has referred to the viscous behavior of magmatic silicate melts. It is, obviously, the reflection of importance of viscosity on the magmatic process such as magma generation and volcanic eruption and of importance for the understanding of early history of the Earth. Contrary to the importance, the theoretical background of viscosity of a magmatic silicate melt has not been understood well. This review paper is concerned with the introduction to some basic knowledges and two representative theories on the viscosity of magmatic silicate melts. The first part deals with the definition, methods of viscosity measurement and the effects of parameters that govern the viscous behavior. The second part deals with the free volume theory, which was the early theoretical background for the understanding of viscous behavior of a liquid. This theory emphasizes the importance of free space in a magmatic silicate melt. The third part deals with the configurational entropy theory, which is the theory in much fashion in magma science. The characters of this theory are the combination of thermodynamic data with the viscosity, and the emphasis of the number of configurational state attainable in a magmatic silicate melt. This theory succeeded in the quantitative interpretation of the change of viscosity with temperature and chemical composition.