著者
阪野 智一
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.111-121,179, 1999-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
30

本稿は,97年イギリス総選挙を業績投票の枠組みから分析したものである。70年代以降,有権者は階級的,党派的に脱編成化の傾向にある。80年代における保守党支持の相対的安定性も,97年総選挙における労働党の大勝も,(1)経済運営能力,(2)政治指導者への評価,(3)マス•メディアの支持によって説明できる。経済運営に対する保守党の信頼は,92年9月におけるERM危機によって著しく損なわれた。他方で,ブレアの党首選出と新生労働党への転換は,党と党首への評価において「ブレア効果」をもたらした。92年総選挙まで保守党に好意的であったマス•メディアは,97年総選挙では一転して労働党支持に回った。極めて良好な経済状態下での政権党の大敗という,97年総選挙における最大のパラドックスも,経済運営能力に対する評価と個人の生活状態に関わる好感要因という,2つの要因に着目することによって整合的に説明できる。
著者
新川 敏光 大嶽 秀夫 篠田 徹 阪野 智一 岡本 英男 池上 岳彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究成果は主に三つに分けられる。第一に、エスピング-アンダーセンの類型論を改善したモデルを構築し、そのなかで社会民主主義、保守主義、家族主義モデルがグローバル化、高齢化の圧力のもとで、一定程度「自由主義化」していることを確認した。第二に、自由主義レジームのなかで、アメリカとは異なるカナダ福祉国家の特徴と政治的ダイナミズムを明らかにした。第三に、日本型福祉レジームにおける自由主義化には脱家族化という側面がある点を明らかにした。