著者
神田 由美子 富澤 宏之
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2015-04 (Released:2015-04-07)

本報告書は、大学等教員の職務活動にどのような変化が起きているのかを把握することを目的としている。分析には文部科学省が実施した「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査(FTE調査)」(2002年、2008年、2013年調査)の3時点の個票データを用いた。具体的には、大学等教員の職務活動時間について、「研究」、「教育」、「社会サービス:研究関連」、「社会サービス:教育関連」、「社会サービス:その他(診療活動等)」、「その他の職務(学内事務等)」の6分類で測定されたデータを集計し、多角的に分析した。特に、大学の種類、学問分野、職位及び論文シェアによる大学グループ別といった観点からの分析を試み、これらのカテゴリーによって教員の職務活動の変化には差異があることを明らかにした。The aim of this report is to ascertain what sorts of changes are occurring in the work activities of university and college faculty members. Analysis in this report makes use of individual data from the "Survey of Full-time Equivalency Data at Universities and Colleges"(FTE Survey) conducted by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology in 2002, 2008 and 2013. Specifically, this study takes the data measurements from six categories (“Research & development,” “Educational,” “Social service activities: those related to R&D,” “Social service activities: those related to education,” “Social service activities: others [such as medical treatment],” “Other activities related to duties [including clerical work in university]”), totals the data and then conducts multifaceted analysis. The study attempts to analyze said data particularly in terms of type of university, field of study, employment position, and university group (by share of scientific papers). It makes clear the presence of variance between these categories in the level of change in faculty members’ work activities.
著者
阪 彩香 伊神 正貫 富澤 宏之 福澤 尚美(追加資料作成)
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2015-04 (Released:2015-04-09)

最新データに基づき2013年までのWoS-KAKEN論文の状況を分析した資料を追加しました(2017年4月11日)。本調査研究では、論文データベース(Web of Science、自然科学系)と我が国の代表的な競争的資金の1つである科学研究費助成事業の成果データベース(KAKEN)を論文単位で連結させ、日本の論文産出構造の分析を行った。その結果、科学研究費補助金の関わる論文数やTop10%補正論文数は近年上昇傾向にあることが分かった。また、科学研究費補助金は、2006-2008年における日本の論文数の47%、Top10%補正論文数の62%に関与しており、日本の論文産出において量的にも質的にも関与していることが明らかとなった。また、日本の論文産出構造において、①科学研究費補助金以外の研究費による論文産出が著しく低下していること、②科学研究費補助金による研究成果が世界における日本全体の存在感を維持させるほどの伸びを生み出していないことが問題点として浮かび上がってきた。This Research Material reports the result of the analysis of the structure of Japan’s scientific publication production using linkage data of bibliographic database (Web of Science) and database of Grants-in-Aid for Scientific Research (KAKEN), which is one of the representative competitive funds in Japan. Using those linkage data, it was found that the number of scientific papers and of top 10% highly cited papers that are related to the Grants-in-Aid for Scientific Research (KAKENHI) has been increased in the past decade; and outputs of KAKENHI were related to 47% of scientific papers and 62% of top 10% highly cited papers in 2006-2008. These results suggest that KAKENHI plays a large role in the knowledge creation of Japan in not only quantitative aspects but also qualitative aspects. Moreover, following two issues in the structure of Japan’s scientific publication production were revealed. 1) The number of scientific paper that is not related to KAKENHI has been decreased dramatically. 2) Outputs of KAKEN have not shown enough increase for keeping Japan’s presence in the world.
著者
齋藤 経史 伊藤 裕子 富澤 宏之
巻号頁・発行日
2012-11-21 (Released:2012-11-21)

文部科学省 科学技術政策研究所では、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」のデータ・情報基盤事業の一環として、博士人材データベースの構築を進めている。博士人材データベースによって博士課程修了者の状況を継続的に把握することで、人材育成に関する政策形成や政策研究への活用、博士課程進学を検討する者にとって有益な情報公開を目指している。本報告書では博士人材データベース構築の背景および国内における既存調査を概説するとともに、海外における卒業生の追跡調査の状況を表す。 米国においては、博士課程修了時点の調査であるSED (Survey of Earned Doctorates)が1957年に開始された後、博士号取得者の追跡調査SDR (Survey of Doctorate Recipients)が1973年に開始され、数十年にわたるデータおよび調査・分析技術の蓄積がある。英国においては2002年に調査体制を刷新し、卒業の約3年半後の追跡調査を見据えた高等教育機関の卒業生に対する調査DLHE (Destinations of Leavers from Higher Education)を実施している。OECDでは、2004年にUNESCOの統計研究所やEurostatと共にCDH (Careers of Doctorate Holders)を開始した。CDHでは整合性のある博士号取得者のデータを各国から収集している。 日本国内の既存調査の課題および海外における卒業後の追跡調査を踏まえた上で、日本における博士人材データベースのシステム設計を検討する。また、2012年11月時点における博士人材データベースの構築の計画を表す。
著者
長根 裕美 鈴木 潤 藤田 正典 隅藏 康一 富澤 宏之 永野 博 安田 聡子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、日本の科学研究の低迷をもたらした研究システムの負のメカニズムを解明し、日本の科学研究界にブレークスルーをもたらす改善策を提案する。日本の科学研究の凋落がセンセーショナルに報道されている。その主な原因としては、経済の低迷のほか、近年の大学改革の失敗が挙げられるが、実際のところ、確たるエビデンスがあるわけでなく、あくまで示唆にとどまっている。なぜ日本の科学研究力は低下したのか?本研究は定量的に研究力低下の負のメカニズムを解明するとともに、定性的なアプローチでもってその定量分析の結果の確からしさを検証していく。
著者
林 隆之 富澤 宏之
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

第5期科学技術基本計画において日本の研究力向上は政策目標の中の一つとされてきた。しかし、それ以降も国際比較の中で日本の相対的地位は低下し続けている。10年後を見据えれば、現在のように研究力を向上させる方策を検討するのみならず、研究力が低成長あるいは縮小せざるを得ない中で、いかに先導的位置を日本が維持し続けるかを検討することが不可欠である。本研究では、研究力が縮小する国における研究戦略の可能性を実証的に明らかにする。海外諸国とのネットワーク・オブ・エクセレンスの構築による研究分野の多様性維持と、それを基にした学際的研究活動の推進により研究の優位性が維持できる可能性について分析する。
著者
小林 信一 赤池 伸一 林 隆之 富澤 宏之 調 麻佐志 宮林 正恭
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.190-215, 2019-10-25 (Released:2019-10-29)
参考文献数
42

This article overviews the past Science and Technology Basic Plans and foresees what should be taken into consideration as a framework for the next plan. The challenges left by the past plans include system-level reforms of the public research sectors, demand-side policies such as start-up grants and public procurement, cross-sectoral human resource exchanges and development policies, and sharing the policy-related information among various stakeholders. The 6th plan needs to include improvement of the quality of management in order to increase the productivity, as Japan's research capabilities are predicted to decline in a decade. Also to be included in the 6th plan are new innovation policies that transform social system with making governance more agile and moving to the use of social experiments with monitoring policies.
著者
富澤 宏之 林 隆之 山下 泰弘 近藤 正幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.2-10, 2006 (Released:2006-04-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

科学研究とイノベーションの関係の分析のために,特許における科学論文の引用頻度を指標化したサイエンスリンケージ指標が貴重なツールとして用いられてきたが,この指標は引用された科学論文の多様な情報を全く反映していない。そこで,本研究では,有力特許に引用された科学論文のリストを作成し,それをScience Citation Index (SCI)データベースと照合させて書誌情報を取得し,その特性の分析を試みた。この分析により,有力特許に引用された科学論文における日本のシェアは,米国とイギリスに次いで大きいことが確認できた。また,特許発明の源泉となった科学知識の生産に関して,世界的に大学が主要な貢献をしていることや,日本の政府研究機関の貢献は他の国の政府機関と比較して小さいと考えられることが明らかになった。また,日本のライフサイエンスに関して,1) 特許件数が少ないこと,2) 特許発明者による科学知識の活用が盛んでないこと,3) 世界的な特許発明の源泉となった科学論文が相対的に少ないこと,という3つの課題があることが判明した。