著者
本間 道子 風間 文明
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は組織体としての違反・不正行為(organizational transgressions)の生起を社会心理学、組織心理学から解明し、組織の不正行為の容認にいたる心的メカニズムを明らかにし、現代社会に広がりつつあるモラルハザードを抑制する要因を明らかにすることを目的とした。特にここでは、組織体としての不正行為(組織体犯罪、ホワイトカラー犯罪)に焦点を当てた。研究目的は不正行為の生起に影響を及ぼす組織集団に関する要因を軸としたモデルを構築し、それを検証しそれに基づいて抑止効果を検討することである。昨年度の2つの研究、文献研究、探索的調査の結果から、本年度は新たに組織性違反行為とし、組織内要因を精査し、公正観の低下、情報交換の少なさ、仕事の位置づけのなさ、仕事の排他性、役割認識、内集団志向、外集団認識の低下を仮定した。さらにこのような組織性としての違反行為の心的メカニズムのモデル構築に向け、その中心的概念として、集合罪悪感(collective guilt)を提起した。調査は、組織体犯罪を体験した企業従業員を対象にした。また直接組織体犯罪に関与した従業員に対しても面接調査をおこなった。その結果、まず集合罪悪感は下位概念として「社会に対する申し訳なさ」「共有した責務・償い」「不正行為の後悔」が明らかになった。これらを結果変数として組織要因を重回帰分析、さらにはパス解析した結果、集合罪悪感を規定した要因は外集団認識低下、公正観の低下、情報交換の低下であった。つまり、社会にたいして事の重大さの認識が低いことが集合罪悪感を低下させ、また犯罪を誘発させた。また面接調査から、当事者の罪悪感は内部に対するものであり、コミュニケーションの少なさ、成果志向が犯罪を誘発していた。これらの成果は日本社会心理学会45回大会、国際心理学会28大会で発表した。
著者
山岡 重行 風間 文明
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.98-110, 2004-06

犯罪被害者の社会的地位や否定的要素は、加害者の量刑判断にどのように影響するのだろうか。Lerner(1980)の公正世界仮説によれば、人々は一般に良い人には良いことが起こり、悪い人には悪いことが起こるという信念を持っており、そのため悪いことが起こった原因はその人の日頃の行いの悪さに帰属されるのである。この公正世界仮説から次の二つの仮説が導き出される。仮説1:犯罪被害者に全く落ち度がない場合であっても、否定的要素が強くなるに連れて、被害者に対する同情などの肯定的態度は弱くなり、逆にその被害を天罰や自業自得とする否定的態度が強くなる。仮説2:犯罪被害者の否定的要素が強く社会的地位が低い場合は、被害者の否定的要素が弱く社会的地位が高い場合よりも加害者に対する量刑が軽くなり、この傾向は深刻な犯罪の場合により顕著になる。本研究はこの2つの仮説を2つの実験によって検討した。実験結果は2つの仮説を支持した。主に公正世界仮説と社会的ステレオタイプの観点から得られた結果に考察を加えた。
著者
清水 裕 下斗米 淳 風間 文明
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.191-200, 2005

The purpose of this study was to refine the scale for self-image (Shimizu, Shimotomai, & Kazama, 2003) after attaining an occupation. Undergraduates (N=688) completed a questionnaire about the types of occupations they desired, their motivation level to attatin it/them, and their self-image after attaining an occupation. The major findings were as follows. (1) Nine factors were extracted from the self-image items for male students, while seven factors were extracted for female students. These factors revealed a current outlook on the self-image that students have of themselves after obtaining employment. (2) These self-images significantly influenced the motivation level toward attaining the desired occupations. (3) Reliability and validity of the scale were satisfied, except for certain subscales. These results suggest that future self-image after attaining an occupation can be very useful for understanding the vocational decision process amongst undergraduates.
著者
山岡 重行 風間 文明
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.98-110, 2004 (Released:2017-06-02)

犯罪被害者の社会的地位や否定的要素は、加害者の量刑判断にどのように影響するのだろうか。Lerner(1980)の公正世界仮説によれば、人々は一般に良い人には良いことが起こり、悪い人には悪いことが起こるという信念を持っており、そのため悪いことが起こった原因はその人の日頃の行いの悪さに帰属されるのである。この公正世界仮説から次の二つの仮説が導き出される。仮説1:犯罪被害者に全く落ち度がない場合であっても、否定的要素が強くなるに連れて、被害者に対する同情などの肯定的態度は弱くなり、逆にその被害を天罰や自業自得とする否定的態度が強くなる。仮説2:犯罪被害者の否定的要素が強く社会的地位が低い場合は、被害者の否定的要素が弱く社会的地位が高い場合よりも加害者に対する量刑が軽くなり、この傾向は深刻な犯罪の場合により顕著になる。本研究はこの2つの仮説を2つの実験によって検討した。実験結果は2つの仮説を支持した。主に公正世界仮説と社会的ステレオタイプの観点から得られた結果に考察を加えた。
著者
風間 文明 山下 倫実
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.15-24, 2017-03-24

本研究の目的は、就職活動を目前に控えた女子大学生について、自己効力感と身近なソーシャルサポート源が進路決定の確信度、柔軟性にどのような影響を及ぼしているかを検討することである。就職活動前の女子大学3 年生90名を対象に質問紙調査を実施した。主な結果は以下の通りである。( 1 )自己効力感は進路決定の確信度を高めるが、柔軟性には影響を及ぼさない。( 2 )教員の情緒的サポートは進路決定の確信度を高めるものの柔軟性を低下させる。一方、就職課職員による情緒的サポートは確信度を低下させるものの柔軟性を高める。教員の道具的サポートも確信度を高める。( 3 )社会人の情緒的サポートは確信度を高め、親しい異性の道具的サポートは柔軟性を低下させる。結果から、大学による女子大学生の就職支援として教員と就職課を両輪とする情緒的サポート体制の有効性が示唆された。