著者
佐藤 祥一郎 園田 和隆 吉村 壮平 宮﨑 雄一 松尾 龍 三浦 克之 今中 雄一 磯部 光章 斎藤 能彦 興梠 貴英 西村 邦宏 安田 聡 小川 久雄 北園 孝成 飯原 弘二 峰松 一夫 日本医療研究開発機構「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発 に関する研究」班
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10587, (Released:2017-12-12)
参考文献数
57
被引用文献数
3

脳卒中に対する合理的,経済的な疾病対策を行うためには,悉皆性と信頼性を合わせ持つ国家的な脳卒中登録事業が不可欠である.わが国の診療実態に即した脳卒中登録システムに必要な条件を明らかにするため,システマティックレビューを行った.2015 年12 月31 日までに発行された,脳卒中登録研究に関する医学文献を,MEDLINE および医学中央雑誌上で検索し,1533 編の文献から,51 の登録研究(国外38,国内13)を抽出した.レビューの結果から,日本における質の高い脳卒中登録事業に必要な条件として,医療ID 導入による既存大規模データベースとの連携と,それを可能にする法整備,行政による公的事業資金,学会や患者支援団体,企業の支援による安定的な資金確保,情報公開の重要性が挙げられた.
著者
有村 公一 黒木 愛 西村 中 坂本 哲也 飯原 弘二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.776-783, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
16

目的:本邦における脳卒中病院前救護の現状は不明であり,全国的な調査が必要である。方法:本研究では全国の消防本部を対象としたアンケート調査を実施した。病院前診断,医療機関情報,搬送手段,ICT,脳卒中最新治療の周知状況,事後検証・再教育体制などについてアンケート項目を設定した。結果:PSLSおよび病院前脳卒中スケールの活用率はそれぞれ47.6%,59.9%であった。半数以上で管内に常時血管内治療が可能な施設がなく,ドクターヘリは53%で活用されていた。ICTは41.1%で導入されていた。また脳卒中最新治療の認知は33.9%にとどまっていた。搬送先病院との事後検証は72.6%で行われていたが,地域MC協議会の事後検証の半数以上に脳卒中専門医が関与していなかった。結論:脳卒中病院前救護の標準化,地域格差の是正,医師と救急隊とのより積極的な情報共有などが必要であると考えられた。
著者
片岡 大治 飯原 弘二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.12-18, 2015 (Released:2015-01-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

穿通枝障害は重篤な神経症状を生じることが多いため, その外科解剖を理解することは脳神経外科顕微鏡手術においてきわめて重要である. 特に, 脳動脈瘤クリッピング術の際は, 穿通枝の解剖学的バリエーションと脳動脈瘤との関係について理解しておく必要がある. 前脈絡叢動脈は, 動脈瘤のドームから起始することもあり, また2~4本存在することがあるため, そのような場合には注意が必要である. レンズ核線条体動脈は通常中大脳動脈水平部 (M1部) の後壁から分岐するが, 時としてM1-2分岐部やM2から起始する. 視床下部動脈は前交通動脈の後面から起始するため, pterional approachでは確認することが困難である. 穿通枝の温存のためには, 動脈瘤周囲の穿通枝をすべて確認することが必要で, 神経内視鏡は顕微鏡の死角となる部分の観察に有用である. 穿通枝の血流を温存するようにクリップをかけ, クリッピング後はドップラー超音波流量計, ICG蛍光血管造影, 運動誘発電位などの神経生理学的モニタリングなどの術中モニタリングで穿通枝の温存を確認する. それぞれのモニタリングには偽陰性が生じ得るため, 複数のモニタリングを組み合わせて使用することが重要である.