著者
小澤 道子 香春 知永 横山 美樹 岩田 多加子 大久保 暢子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.27, pp.80-86, 2001

本調査は,「看護学」の出発点において学部生群と学士編入生群がどのように看護の「対象」と「方法」を考えているのかを知ることを目的とした。対象は,S看護大学に1997年度と1999年度の入学生169名(学部生132人・学士編入生37人)であり,4月の初回講義時に質問紙法を用いて現在の健康状態・生活の満足・元気観・健康観,そして看護観は「今,あなたが考える看護とは何でしょう」の設問で自由記述を求めその内容を分析した。その結果,(1)看護の「対象」は病気をもった人や病気や怪我をもって苦しんでいる人に代表される病気を中心とする者が7割以上を占めていること,(2)看護の「方法」は,記述の中の動詞に着目すると81種類に分けられ,使用頻度の高い動詞は「ケアする」「サポートする」「(必要なことを)〜する」「援助する」「〜してあげる」「手助けする」などであったこと,そして,これらの動詞の目的語を検討するとさまざまであり,同じ動詞の表現であっても意味する内容は多様であることも示唆された。また,学部生群と学士編入生群は,看護の「対象」に関しては類似していたが,看護の「方法」については学士編入生群の方が1人当たりの動詞の数が多く,動詞の意味するものに技術的なことや知識への期待がこめられているとも解釈できる結果であった。今後,看護教育を受ける中で看護の対象と方法がどのように変化していくかが次への追究課題である。
著者
香春 Xiangchun
出版者
名古屋大学人文学研究科
雑誌
名古屋大学人文学研究論集 (ISSN:2433233X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.221-250, 2020-03-31

Our aim in this paper is to investigate the core thought of "Happiness" (eudaimonia) in Aristotle's Ethica Nicomachea in order to elucidate the significance of his ethical thought in the age of globalization. Against common thought that the core opinion of Aristotle's ethics is rather 'communitarian', we have tried to interpret his thought as a kind of ethical theory that could fit the multicultural situation of our age. He characterized the notion of 'Happiness' as a kind of human 'proper' activity which would be controlled by human 'reason' (logos). He situated Happiness in the midst of 'our own authentic activity'. We drew a distinction between the 'Goodness for human being' and 'Goodness as a human being', both of which are expressed as "the human goodness". The former is Happiness and the latter is "virtue", and then the main problem of his ethics can be formulated as follows; how we realize our own happiness through 'virtue' as our own activity. According to our interpretation, the concept of his happiness as the final end of our life can be interpreted as ethically connected with Kantian notion of dignity of person as "Zweck an sich". We pointed out one of the most important features of Aristotle's ethics, namely that his ethical theory is very practical one. Aristotle suggested a real method of becoming to be virtuous through real exercise of accustoming oneself to do good things and to do well in moral sense. We can conclude that Aristotelian thought of morals contains in itself a theory of the real method through which we can become a 'good or virtuous person' and therefore we can assert that his ethical theory has kept its power as the most persuasive one even now.
著者
菱沼 典子 平松 則子 春日 美香子 大吉 三千代 香春 知永 操 華子 川島 みどり
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.32-39, 1997-02-28 (Released:2012-10-29)
参考文献数
25
被引用文献数
9 6

腹満や便秘に対し, 経験上有効といわれている熱布による腰背部温罨法の, 腸管の動きに対する影響と, 局所の皮膚に対する影響を明らかにする目的で, 実験研究を行った. 8名の健康な女性 (27~47歳) に, 熱布による温罨法を施行し, 以下のような結果を得た.1) 腸音は施行直後に1.7倍に増加し, 施行前に対し, 有意差が認められた.2) 貼用部の皮膚温は, 41.1-43.1度まで一過性に上昇したが, 火傷は生じなかった.3) 背部の血流および上腕部の血流は, 施行前に比べ1.4倍になり, 全身が暖まった.4) 施行前後で、体温, 脈拍, 血圧に変動は認められなかった.これらの結果から, 熱布による腰背部温罨法は, 腸管の動きを促進し, 便秘や腹満の解消をはかる看護技術となりうることが示唆された.
著者
横山 美樹 小澤 道子 香春 知永 大久保 暢子 佐居 由美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.29, pp.40-46, 2003-03
被引用文献数
1

本学では現在,2年次に看護における基礎技術であるフィジカルアセスメント技術,基礎看護援助技術に開しての科目を開講し,2年終了時に5日間の基礎実習(臨地実習)を行っている。技術に関しては,実施・経験の有無が習得に大きく関係するため,今回学生が初めての基礎実習で既習のフィジカルアセスメント技術,看護援助技術をどの程度実施しているのか,また自己評価をどのように行っているのかの実態調査を行った。167名に調査を依頼し139名から回答を得た。その結果,以下のことが明らかになった。1.フィジカルアセスメント技術に関して:バイタルサインは全員が行っており,自己評価も高かった。その他の項目では,胸部・肺の視診,聴診,腹部のアセスメントが多く行われていた。自己評価は全体に3以上と高かったが,心臓のアセスメント,筋骨格系,神経系のアセスメントで低い傾向であった。2.看護援助技術に関して:環境整備,ベッドメーキングは全員が実施していた。その他寝衣交換,陰部洗浄,移動,オムツ交換,全身清拭,体位変換等日常生活援助の項目の実施率が多かった。逆に処置系の項目は実施率が少なかった。自己評価に関しては,どの項目も平均3以上と高かったが,清潔の援助,排泄の援助,体位変換,移動等が低い傾向であった。今回の結果より,できるだけ学生が自分の技術に対して客観的な自己評価を行えるような教員側のフィードバック,また限られた臨床実習期間で基礎看護援助技術をより実施・体験できるような工夫が必要だと考える。