著者
赤坂 清和 高倉 保幸 陶山 哲夫 石川 雅樹
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.2-7, 2001 (Released:2003-07-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高齢者の転倒による受傷が多い大腿骨頚部・転子骨折の理学療法を行う場合、寝たきりを予防するためにも出来るだけ早期より立位歩行練習を行うことが推奨されている。理学療法士は骨折部の固定性、術側下肢の荷重量、整形外科的治療後の合併症に対して充分な知識を持ち、患者が訴える疼痛を予測し、実際に疼痛がある場合には迅速かつ適切に対応できなくてはならない。本稿では、大腿骨頚部・転子部骨折の分類に対する理解を深め、大腿骨頚部骨折では、Cannulated Cancellous Hip Screw(CCHS)、ハンソンピン、セメント人工骨頭置換術における理学療法の実際とその注意点、大腿骨転子部骨折では、Compression Hip Screw(CHS)およびγnailによる骨接合術後の理学療法および理学療法を遂行する上での注意点を簡潔にまとめた。
著者
高橋 佳恵 高倉 保幸 大住 崇之 大隈 統 川口 弘子 草野 修輔 山本 満 大井 直往 陶山 哲夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.B0055, 2005

【目的】我々は日本昏睡尺度(Japan Coma Scale:JCS)と平均反応時間の関係を調べ、意識障害の程度により平均反応時間に有意な差があり、平均反応時間が意識障害を客観的に表す指標として有用であることを報告してきた。一方、意識障害が強い場合には、外界に対する反応性の低下とともに反応性の変動が大きいことも知られている。そこで、今回は変動を比較する指標として変動係数に着目し、意識障害と反応時間の平均値および変動係数の関係について検討を行った。<BR><BR>【対象と方法】対象は当院を受診し、理学療法を行った脳損傷60例とした。年齢は64.7±12.8歳(平均±標準偏差)、性別は男性35例、女性25例であった。病型は脳出血23例、くも膜下出血8例、脳動静脈奇形を伴う脳出血3例、脳梗塞22例、頭部外傷4例、測定時期は発症後32.6±30.1日であった。被験者には、静かな個室でヘッドホンを装着、非麻痺側の上肢でスイッチを押しながら待機、ヘッドホンを通じて音が聞こえたら出来るだけ素早くスイッチを離すよう指示した。音刺激からスイッチを離すまでの時間を反応時間とし10回の測定を行った。意識障害の判定はJCSを用いて行ったが、今回の対象者は全例がJCS I桁であった。対象者をJCSにより清明群(n=19)、I-1群(n=15)、I-2・3群(n=16)の3つの群に分け、各群の平均反応時間と変動係数の差を比較した。統計学的解析にはSPSS for Windows 12.0Jのボーンフェローニの多重比較検定を用い、危険率は5%とした。<BR><BR>【結果】意識と反応時間についてみると、各群の平均反応時間は、清明群165.0±57.3msec、I-1群296.0±112.7msec、I-2・3群634.0±535.0msecとなり、意識障害が強くなるほど平均反応時間は遅延した。また、各群の症例数にばらつきはあるものの、ボーンフェローニ検定を用いた多重比較では、清明群とI-2・3群間、I-1群とI-2・3群間にそれぞれ有意差がみられた。変動係数においては、清明群33.3±10.6%、I-1群29.3±9.5%、I-2・3群40.2±17.5%となり、各群間に有意差はみられなかった。<BR><BR>【考察とまとめ】意識障害が強い場合には、外界に対する反応性の低下とともに反応性の変動が大きいことが知られているが、反応時間の測定からは実証することができなかった。反応性の変動は注意の覚度の変動が影響していると考えられるが、反応時間を測定するときには意識障害が強い例でも一時的に覚度が向上し、反応性が安定する可能性がある。今回の結果から反応時間の臨床的応用には平均値を用いて検討することが妥当であると考えられた。
著者
師岡 祐輔 國澤 洋介 高倉 保幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】我々は,改良フランケル分類(改F分類)Cの頸髄損傷者において,受傷後早期(1ヶ月以内)の移乗動作獲得には早期より座位能力がある程度保たれていることが重要であることを報告した。しかし,移乗動作に大きく影響を与える下肢運動スコアとの関連や具体的な予測指標についての検討は不十分であった。本研究では,改F分類Cの頸髄損傷者における受傷後早期の移乗動作獲得状況を検討し,目標設定に有益な下肢運動スコアと座位保持能力を含めた予測指標を明らかにすることとした。【方法】対象は2010年から2014年までに急性期病院で理学療法(PT)を実施した改F分類Cの頸髄損傷者31例とした。方法は,診療録の後方視的観察研究とした。移乗動作獲得の判定は機能的動作尺度(0-4点の5段階評価)を用い,2点以上(見守りから自立)を獲得群,2点未満(全介助から一部介助)を非獲得群とした。下肢運動麻痺は,ASIA機能障害評価の下肢運動スコア(LEMS),座位能力(座位G)は,ISMWSF鷹野改変(0-5点の6段階評価)を用い,それぞれPT開始時に評価を行った。統計学的解析は,受傷後4週の移乗動作獲得可否におけるLEMSのカットオフ値はROC曲線を用いて算出した。また移乗動作獲得可否とLEMSのカットオフ値に基づいた群分けによるクロス集計表,さらに我々の研究を参考にLEMSのカットオフ値に加え座位Gに基づいた群分けによるクロス集計表を作成した。【結果】受傷後4週では,移乗動作獲得群は7例,介助群は24例であり,移乗動作獲得率は22.6%であった。4週後の移乗動作獲得可否におけるLEMSのROC曲線は曲線下面積0.80と高い予測能を示した(p<0.05)。移乗動作獲得を検出するLEMSのカットオフ値は27点であった。移乗動作獲得可否とLEMSの関係は,LEMSが27点以上で移乗動作獲得群は6例,介助群は7例であり,27点未満で獲得群は1例,介助群は17例であり,陽性的中率は46.2%,陰性的中率は94.4%であった。27点以上かつ座位G1で獲得群は5例,介助群は2例であり,27点未満で獲得群は2例,介助群は22例であり,陽性的中率は71.4%,陰性的中率は91.6%であった。【結論】先行研究では半年や一年などの長期的な移乗動作獲得についての検討は散見されるが,受傷後早期における移乗動作獲得に必要な具体的な指標は明らかとなっていない。今回の結果から,PT開始時から評価可能なLEMSのカットオフ値27点を用い,受傷後4週時点において移乗動作獲得が困難とされる例の予測に役立てることができ,獲得動作を視野に入れたPT介入の工夫の必要性が示唆された。また,LEMS27点かつ短時間の座位保持可能(座位G1)を指標とすることで,獲得可能となる例の予測する指標としての有用性が示唆された。
著者
高倉 保幸 山本 満 陶山 哲夫 高橋 佳恵 大住 崇之 大隈 統 小牧 隼人 河原 育美 加藤 悠子 若林 稜子 草野 修輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.B0014, 2006

【目的】脳出血で最も高い割合を占める被殻出血では、血腫の進展を示すCT分類や出血量、意識障害と予後との相関が高い事が知られているが、急性期病院の平均在院日数である発症後3週での予後との関係は明らかにされていない。また、臨床的には急性期の機能的予後にはCTにおける脳浮腫の程度と相関が高いという印象を持っているが、その評価基準は確立されていない。本研究の目的は、急性期被殻出血の機能的予後を予測する指標について検討することである。<BR>【方法】対象は当院にて初回発症で理学療法を行った被殻出血47例とした。年齢は60.1±10.7歳(平均±標準偏差)、性別は被殻出血が男性32例、女性15例であった。予後予測の因子として検討した項目は、脳卒中の外科学会によるCT分類(以下CT分類)、総出血量(長径×短径×高さ÷2)、出血径(長径)、脳浮腫、発症時意識(JCS)、発症翌日意識(JCS)とした。脳浮腫の判定は独自に3段階の評価基準を作製、いずれのレベルでも脳溝の狭小化がみられないものを1、脳溝の狭小化がみられるものを2、モンロー孔のレベルから3cm上部での病巣側の脳溝が消失しているものを3とした。基本動作能力の判定には11項目からなる改訂された機能的動作尺度(以下FMS)を用いた。FMSの検査時期は21.9±2.0日であった。各因子とFMSおよび因子間におけるスピアマンの相関係数を算出し、基本動作能力の予測に有用な因子を考察した。<BR>【結果】各因子およびFMSの結果をみると、CT分類の中央値はIII、総出血量の平均は36.8ml、出血径の平均は4.7cm、浮腫の中央値は2、発症時意識の中央値はII-10、発症翌日の意識の中央値はI-3、FMSの平均は14.8点であった。FMSとの相関は、CT分類では0.64(p < 0.01)、総出血量では0.61(p < 0.01)、出血径では0.57(p < 0.01)、脳浮腫では0.55(p < 0.01)、発症時意識では0.14(p = 0.34)、発症翌日意識では0.29(p = 0.45)となった。また、浮腫との相関は、CT分類では0.40、総出血量では0.50(p < 0.01)、出血径では0.54(p < 0.01)となった。<BR>【考察とまとめ】機能的予後を予測する指標としてはCT分類、出血量、脳浮腫が有用であることが示された。出血量では総出血量を算出する方が指標としての精度は高くなるが、長径により代用する方法も簡便で有用であると考えられた。新たに作製した脳浮腫の評価は予後と有意な相関を示し、CT分類や出血量と強い相関を示さないことから評価指標としての有用性が示された。意識はリハ開始前の死亡例が除かれていることおよび発症3週間という短期間で調査であることから相関が低くなったと考えられたが、発症日の意識よりも発症翌日の意識を指標とする方が有用であることが示唆された。<BR>
著者
橋本 智己 櫻井 友之 宇田川 裕二 高倉 保幸 浜田 利満 赤澤 とし子 山本 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.156, 2010 (Released:2010-11-05)

本稿では,仮想空間内の街中を散策することで日常生活動作の訓練をする,足踏み式歩行シミュレータを開発し,高齢者と若年者で運動機能と認知機能の比較を行ない,本シミュレータの使用方法について検討する.開発したシステムは,PC,バランスWiiボード,ハンドル,ケージからなり,ボード上で足踏みすると仮想市街を歩くことができる.2009年11月~2010年5月,高齢者5人(男性3人,女性2人),若年者9人(男性9人)が本システムを利用した.運動機能が衰えていなくても認知機能が低下する傾向があることや,課題の難易度が上がることで注意が分散されることが示唆された.これらの結果を踏まえ,本システムの利用方法について検討した.
著者
名塚 健史 遠藤 浩士 長瀬 エリカ 佐々木 良江 鮫島 菜穂子 竹中 良孝 北村 直美 浦川 宰 根岸 朋也 山田 智教 藤縄 理 高倉 保幸
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【はじめに】今回、埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進委員会(以下スポリハ委員会)では埼玉県高等学校野球連盟(以下高野連)の依頼により、第88回全国高等学校野球選手権埼玉大会(以下選手権大会)、秋季埼玉県高等学校野球大会(以下秋季大会)でメディカルサポートを実施した。そこで、実際の活動内容と今後の課題について考察し報告する。<BR><BR>【方法】選手権大会は準々決勝、準決勝、決勝の7試合、2球場で各日程4名、秋季大会は準決勝、決勝の3試合、1球場で各日2名の体制でサポートを行った。サポートスタッフはスポリハ委員会の中から甲子園でのサポート、スポーツ現場での活動経験があるメンバーを中心に構成した。サポート内容は試合前後のコンデショニング・テーピングなど、試合中は所定の場所で待機し、デッドボールなど緊急時の対応を行った。実際に行ったサポートの内容はすべて記録し、1日毎終了後高野連側へ提出した。<BR><BR>【結果】実際の活動は、テーピング、外傷に対するチェックと応急処置、試合後のコンディショニングが活動の中心であった。選手権大会はテーピング2件、外傷後のチェック約15件、アイシング2件、熱中症の対応数件、コンディショニング1件であり、秋季大会はテーピング1件、外傷後のチェック約8件、アイシング1件、コンディショニング4件であった。最も多かったのは外傷後のチェックとコンディショニングであり、1試合平均3~4件程度の活動を行った。部位の内訳は、テーピングは肘関節2件、手関節1件、コンディショニングを利用したのは2チーム5名で下肢1件、肩関節2件、腰部2件であった。<BR><BR>【考察】全体的に活動の件数が少ない傾向にあった。外傷のチェックは圧痛や運動痛など疼痛の問診を中心に行ったが、選手は試合を続けたいがために症状を正確に伝えていない可能性が考えられた。また、今回の活動は埼玉県の高野連では初めての試みであり、事前の説明が不足していたことも加わって選手や監督にサポートの内容が浸透していなかった可能性が考えられる。このため、潜在的には今回関わった以上の傷害が生じていた事が予測された。このことより、事前の組み合わせ抽選会などで理学療法士が直接サポートの説明やストレッチのデモンストレーション、障害予防の講演などを行い、サポート活動や障害予防に対する認識を向上させる必要があると感じた。今後も春季大会、夏の選手権大会、秋季大会とサポートを行うことが決まっており、サポート内容、質の向上、事前の啓蒙活動などが今後の検討課題となった。<BR>
著者
國澤 洋介 高倉 保幸 國澤 佳恵 武井 圭一
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.8-11, 2014 (Released:2014-02-05)
参考文献数
7

臨床場面での気づきや疑問点を整理し,客観的に捉えて分析していく能力を高めることは,臨床家である我々理学療法士の責務である。症例検討は,この職責を全うするための手段として有用であり,日々の理学療法業務の中から意識的に実践していく必要がある。より有意義な症例検討を行い,理学療法士としてステップアップするためには,臨床活動で生じた興味や疑問にどのように着目していくのか,着目した症例を通して得られた知見をどのように整理するのか,より良い診療を実践していくための手段として臨床研究や症例検討をどのように提示し他者の意見を得るのかが重要と考える。