著者
草野 修輔
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.175-181, 2004 (Released:2004-08-30)
参考文献数
22
被引用文献数
5 2

厚生労働省老健局の私的諮問機関である「高齢者リハビリテーション(以下,リハ)研究会」から『高齢者リハのあるべき方向』と題された中間報告書が発表された。その中で,高齢者リハにおいては高齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要であるとし,リハモデルとして,(1) 脳卒中モデル,(2) 廃用症候群モデル,(3) 痴呆高齢者モデル,を提唱している。上記提言に基づいて,総論として,高齢者の疾患の特徴,加齢に伴う生理的変化,高齢者のリハ対象疾患について述べ,各論として脳卒中モデルに関して急性期脳卒中のリハについて,廃用症候群モデルに関して廃用症候群の病態について,痴呆高齢者モデルに関して,最近の痴呆の診断・治療について述べる。
著者
高橋 佳恵 高倉 保幸 大住 崇之 大隈 統 川口 弘子 草野 修輔 山本 満 大井 直往 陶山 哲夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.B0055, 2005

【目的】我々は日本昏睡尺度(Japan Coma Scale:JCS)と平均反応時間の関係を調べ、意識障害の程度により平均反応時間に有意な差があり、平均反応時間が意識障害を客観的に表す指標として有用であることを報告してきた。一方、意識障害が強い場合には、外界に対する反応性の低下とともに反応性の変動が大きいことも知られている。そこで、今回は変動を比較する指標として変動係数に着目し、意識障害と反応時間の平均値および変動係数の関係について検討を行った。<BR><BR>【対象と方法】対象は当院を受診し、理学療法を行った脳損傷60例とした。年齢は64.7±12.8歳(平均±標準偏差)、性別は男性35例、女性25例であった。病型は脳出血23例、くも膜下出血8例、脳動静脈奇形を伴う脳出血3例、脳梗塞22例、頭部外傷4例、測定時期は発症後32.6±30.1日であった。被験者には、静かな個室でヘッドホンを装着、非麻痺側の上肢でスイッチを押しながら待機、ヘッドホンを通じて音が聞こえたら出来るだけ素早くスイッチを離すよう指示した。音刺激からスイッチを離すまでの時間を反応時間とし10回の測定を行った。意識障害の判定はJCSを用いて行ったが、今回の対象者は全例がJCS I桁であった。対象者をJCSにより清明群(n=19)、I-1群(n=15)、I-2・3群(n=16)の3つの群に分け、各群の平均反応時間と変動係数の差を比較した。統計学的解析にはSPSS for Windows 12.0Jのボーンフェローニの多重比較検定を用い、危険率は5%とした。<BR><BR>【結果】意識と反応時間についてみると、各群の平均反応時間は、清明群165.0±57.3msec、I-1群296.0±112.7msec、I-2・3群634.0±535.0msecとなり、意識障害が強くなるほど平均反応時間は遅延した。また、各群の症例数にばらつきはあるものの、ボーンフェローニ検定を用いた多重比較では、清明群とI-2・3群間、I-1群とI-2・3群間にそれぞれ有意差がみられた。変動係数においては、清明群33.3±10.6%、I-1群29.3±9.5%、I-2・3群40.2±17.5%となり、各群間に有意差はみられなかった。<BR><BR>【考察とまとめ】意識障害が強い場合には、外界に対する反応性の低下とともに反応性の変動が大きいことが知られているが、反応時間の測定からは実証することができなかった。反応性の変動は注意の覚度の変動が影響していると考えられるが、反応時間を測定するときには意識障害が強い例でも一時的に覚度が向上し、反応性が安定する可能性がある。今回の結果から反応時間の臨床的応用には平均値を用いて検討することが妥当であると考えられた。
著者
草野 修輔
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.497-500, 2020-06-18 (Released:2020-08-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

ドーピングは,スポーツ活動において競技能力を高める目的で不正に薬物を使用するか,不正な方法を用いることを指し,世界アンチ・ドーピング規程で,アンチ・ドーピング規則違反として10個の項目が定義されている.パラアスリートにおいても同じ規程が適応される.過去の国際大会での薬物使用者は約70%と高率であり,パラリンピック前に行った参加選手の使用薬物調査では,禁止薬物使用割合は,アテネ大会30.2%,北京大会16.7%,ロンドン大会5.7%であった.パラアスリートにおいては,視覚障害者,知的障害者,未成年者も多いため,禁止物質使用がある場合には,対象選手に通知文書を郵送し,対処方法の指導を行っている.
著者
原 毅 佐野 充広 四宮 美穂 野中 悠志 市村 駿介 中野 徹 松澤 克 櫻井 愛子 草野 修輔 久保 晃 久保田 啓介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.184-192, 2013-06-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
37
被引用文献数
11

【目的】消化器がん患者の周術期から自宅復帰後における身体運動機能とQuality of Life(以下,QOL)の経時的変化,各時期間の身体運動機能変化と自宅復帰後QOLの関連性について検討すること。【方法】対象は,周術期消化器がん患者42例(男性23例,女性19例,年齢60.6±11.3歳:平均±標準偏差)とした。本研究では,身体運動機能を等尺性膝伸展筋力,Timed "Up and Go" test,6分間歩行距離の3項目,QOL指標にShort-Form 36-Item Health Survey version 2のアキュート版を使用し,手術前,手術後,退院後の3つの時期に各々評価した。【結果】身体運動機能とQOLは,手術後一時的に有意な低下が認められた。退院後では,身体運動機能が手術前と同程度まで向上する一方で,QOLの身体的健康が手術前より有意に低かった。また,手術前後の身体運動機能変化比と退院後のQOLの間に有意な相関関係が認められた。【結論】消化器がん患者の周術期の身体運動機能変化が自宅復帰後のQOLと関連することがあきらかとなった。
著者
高倉 保幸 山本 満 陶山 哲夫 高橋 佳恵 大住 崇之 大隈 統 小牧 隼人 河原 育美 加藤 悠子 若林 稜子 草野 修輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.B0014, 2006

【目的】脳出血で最も高い割合を占める被殻出血では、血腫の進展を示すCT分類や出血量、意識障害と予後との相関が高い事が知られているが、急性期病院の平均在院日数である発症後3週での予後との関係は明らかにされていない。また、臨床的には急性期の機能的予後にはCTにおける脳浮腫の程度と相関が高いという印象を持っているが、その評価基準は確立されていない。本研究の目的は、急性期被殻出血の機能的予後を予測する指標について検討することである。<BR>【方法】対象は当院にて初回発症で理学療法を行った被殻出血47例とした。年齢は60.1±10.7歳(平均±標準偏差)、性別は被殻出血が男性32例、女性15例であった。予後予測の因子として検討した項目は、脳卒中の外科学会によるCT分類(以下CT分類)、総出血量(長径×短径×高さ÷2)、出血径(長径)、脳浮腫、発症時意識(JCS)、発症翌日意識(JCS)とした。脳浮腫の判定は独自に3段階の評価基準を作製、いずれのレベルでも脳溝の狭小化がみられないものを1、脳溝の狭小化がみられるものを2、モンロー孔のレベルから3cm上部での病巣側の脳溝が消失しているものを3とした。基本動作能力の判定には11項目からなる改訂された機能的動作尺度(以下FMS)を用いた。FMSの検査時期は21.9±2.0日であった。各因子とFMSおよび因子間におけるスピアマンの相関係数を算出し、基本動作能力の予測に有用な因子を考察した。<BR>【結果】各因子およびFMSの結果をみると、CT分類の中央値はIII、総出血量の平均は36.8ml、出血径の平均は4.7cm、浮腫の中央値は2、発症時意識の中央値はII-10、発症翌日の意識の中央値はI-3、FMSの平均は14.8点であった。FMSとの相関は、CT分類では0.64(p < 0.01)、総出血量では0.61(p < 0.01)、出血径では0.57(p < 0.01)、脳浮腫では0.55(p < 0.01)、発症時意識では0.14(p = 0.34)、発症翌日意識では0.29(p = 0.45)となった。また、浮腫との相関は、CT分類では0.40、総出血量では0.50(p < 0.01)、出血径では0.54(p < 0.01)となった。<BR>【考察とまとめ】機能的予後を予測する指標としてはCT分類、出血量、脳浮腫が有用であることが示された。出血量では総出血量を算出する方が指標としての精度は高くなるが、長径により代用する方法も簡便で有用であると考えられた。新たに作製した脳浮腫の評価は予後と有意な相関を示し、CT分類や出血量と強い相関を示さないことから評価指標としての有用性が示された。意識はリハ開始前の死亡例が除かれていることおよび発症3週間という短期間で調査であることから相関が低くなったと考えられたが、発症日の意識よりも発症翌日の意識を指標とする方が有用であることが示唆された。<BR>
著者
能智 正博 山田 麗子 草野 修輔
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-15, 1994

We report a patient who developed hemi-spatial neglect and visuo-constructive disability caused by cerebral infarctions in the right parietal and occipital lobes. Her writing was characterized by omissions of the left strokes in several kana-characters as well as symptoms of spatial agraphia. When asked to count the number of strokes in kana-characters from memory, she also made a report that suggested omissions of the left strokes in the same characters. Based on those observations, we infer that the left hemi-spatial neglect affected the one higher level writing process which involves visual representation of kana-characters. Also, we hypothesize that the disorder on that level manifested itself in her handwriting because her visuo-constructive disability prevented the motor component of the writing process from compensating for that influence of hemi-spatial neglect.