著者
高倉 伸有 矢嶌 裕義 高山 美歩 川瀬 明子 KAPTCHUK Ted J. JIAN Kong
出版者
東京有明医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

鍼治療の適応として最もよく知られる肩こりに対し、鍼治療は本当に効果があるのかを証明するために、治療者と患者に治療の真偽を知らせずに治療する「ダブルブラインド法(二重盲検法)」を用いた無作為化プラセボ対照臨床研究を実施した。その結果、治療しない場合よりも、鍼治療を施した方が肩こり感は改善したが、鍼が刺さっても刺さらなくても一定の肩こり改善効果が認められた。また肩こりの部位に鍼を刺して治療した場合にのみ、皮下血流に変化が認められた。これらのことは、「鍼治療を受ける」ことによって肩こり感は和らぎ、特に鍼を刺す治療であれば血流改善の効果も期待できることを示唆する。
著者
高倉 伸有 矢嶌 裕義 高山 美歩
出版者
東京有明医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

私たちは、患者とはり師にどのような鍼かを明かさずに(二重盲検法)、骨格筋に刺さる鍼か皮膚に刺さらないプラセボ鍼を用いて肩こりの鍼治療を施し、その効果や首肩の筋血流や筋活動を比較する、厳格な臨床試験を行った。その結果、鍼により肩こりは主観的には改善したが、「鍼を刺す」特異的効果はなく、鍼治療の効果には「プラセボ効果」が含まれる可能性が示された。また、鍼治療による頸肩部の筋血流・筋活動には特異的変化は見られず、鍼による肩こり改善の生理学的メカニズムの解明には至らなかった。一方で、本結果は鍼特有のユニークな現象である可能性があり、「鍼のプラセボ効果」について興味深い示唆を与えるものと考える。
著者
矢嶌 裕義 高梨 知揚 高山 美歩 高倉 伸有
出版者
東京有明医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

当該研究は、術者及び患者をマスクした状態(ダブルブラインド下)で、非特異的腰痛に対する鍼治療の効果を観察することを最大の目的としている。この研究で用いる最も重要なダブルブラインド鍼について現時点では、これまでに開発してきたダブルブラインド鍼を臨床研究に使用しつつ、製品として安定的に供給できるダブルブラインド鍼の開発を目指している。この鍼は、通常の鍼(刺さる鍼)と皮膚に圧迫を与える鍼(刺さらない鍼)、これらの鍼を支える内鍼管、この鍼管内には術者に生じる刺入感覚を相殺する為のシリコン、これら全てを支える台座、及び鍼を叩き入れる際に用いる外鍼管で構成されている。これまでにこれらの各パーツの製作が終了し、臨床研究で使用可能とはなったものの、研究中に何本かの鍼においては、刺入操作時に鍼が進まなくなり刺鍼できなくなってしまう事態に見舞われる事が確認された。しかしながら、現在はこれらパーツを使用しながら臨床研究は進めているものの、こうした欠点が見つかっていることから、シリコンと内鍼管については、スムースな刺入を目指し現在も試作を繰り返している状況である。また平成30年度は、本学においての臨床研究が附属の鍼灸センターでなされるのが初めてであったこと、附属のクリニックとの共同の臨床研究も実施されたことがなかったことなどから、研究に参加していただく患者様に生じる金銭的および時間的なご負担を軽減するための方法についてクリニックや本学事務局と協議し、よりスムースな臨床研究の実施が可能となるルール作りを行った。そのため研究開始の時期が当初の予定よりも遅れたものの、事務局の協力のもと、現在20名の非特異的腰痛患者に対する研究を実施することができた。
著者
矢嶌 裕義 高倉 伸有 高山 美歩 政岡 ゆり 本間 生夫 川瀬 明子 KAPTCHUK Ted J. JIAN Kong
出版者
東京有明医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

脳梗塞などにより筋緊張(常に生じている持続的な弱い筋収縮)が病的に強い場合に、電気刺激を与えてその緊張を緩めることを目的としたリハビリテーションを行うことがある。本研究では、指先に振動を与えて不随意的に指を屈曲させることができる反射を用いて強い筋緊張を生じさせ、これと同時に電気刺激を与えて筋緊張が緩む時の脳活動を、脳波を用いて観察した。その結果、電気刺激を与えた場合には、この反射によって起こる脳内の神経活動のエリアが一部に限定されるとともに、筋緊張緩和に関連すると言われる前頭前野背外側部の神経活動が先行して高まることがわかり、電気刺激による筋緊張の緩和の脳内メカニズムの一端が確認された。