著者
曽根原 容子 谷口 博志 藤本 英樹 松浦 悠人 村越 祐介 安野 富美子 坂井 友実
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.190-202, 2022-08-01 (Released:2023-05-10)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は一般女性の美容鍼灸に対しての意識や認識等の現状について調査することである。 【方法】対象は国内テストマーケティング好適地といわれる静岡県に在住する一般女性1000人。 方法は質問紙法。 県内の商工会議所を介して人口比率に応じ年代別にアンケートを配布し回答を得た。 項目は①基礎情報②顔の美容上の悩みの有無、 種類③鍼灸治療の経験の有無、 美容鍼灸の認知度、 認知媒体、 効果のイメージ、 美容鍼灸の経験の有無④美容鍼灸の効果、 種類、 マイナス効果の有無、 現在の受療状況、 受療希望とその理由、 治療院に求める要素、 施術者に求める要素⑤1ヶ月の美容に対する投資の質問を設けた。 【結果】 回答率56.2%。 91.8%が顔に対する美容上の悩みを感じていた。 鍼灸治療経験者は28.8%。 美容鍼灸の認知度は42.0%。 認知媒体はテレビ45.3%が最も多く、 美容鍼灸に対する効果のイメージはリフトアップ44.8%が最も多い。 未経験者521人に対する受療希望は43.2%。 理由はなんとなく興味を持った45.3%で最も多かった。 受療を希望しない理由は痛そうが52.6%で最も多く、 美容鍼灸の経験者では効果を感じたと60.0%が回答し、 その効果は対象者が持つイメージと同じくリフトアップが62.5%と最も多い。 しかしマイナスを感じたとの回答も45.0%みられ、 さらに2度以上受けたが今は受けていないとの回答が47.5%と最も多かった。 治療院には清潔感を求める人が多く、 施術者には優れた技術を求める人が多い。 1ヶ月の美容にかける費用は3,000~5,000円未満28.5%が最も多い。 【考察・結語】多くの女性が顔に対して美容上の悩みを持っており、 その中でもリフトアップに美容鍼灸への期待を向けていることが示唆された。 認知度に対する受療率の低さや治療を継続しない理由、 美容鍼灸を展開していく上での問題点が明らかとなった。
著者
松浦 悠人 岡本 真理 安野 富美子
出版者
一般社団法人 日本統合医療学会
雑誌
日本統合医療学会誌 (ISSN:24355372)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.26-35, 2022-05-20 (Released:2023-05-20)
参考文献数
53

目 的:国内の美容鍼灸に関する研究の現状を把握することを目的に研究論文レビューを行った。方 法:医中誌Webを用い、2021年4月26日に2020年12月31日までの文献を検索した。組入れ基準は原著論文、美容鍼灸の効果を評価したもの、除外基準は会議録、総説・解説、商業誌に掲載されたものなどとした。結 果:355編が検索され、44件が抽出された。出版年では、2007年から論文が増加傾向であった。各調査項目の最多では、掲載雑誌は東洋療法学校協会雑誌が28件、研究デザインは非ランダム化比較試験と前後比較試験が12件、施術目的は美顔が17件、評価方法は主観的評価が19件、介入方法はマニュアル鍼刺激が45件であった。結 論:美容鍼灸に関する国内の文献は2007年から増加傾向であったが、査読を経た学術論文として出版されているものは少ない現状であった。今後はよりエビデンスレベルの高い研究デザインで臨床研究を行い、美容鍼灸の有効性を評価していく必要がある。
著者
坂井 友実 安野 富美子 田和 宗徳 矢野 忠
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.87-108, 2004 (Released:2010-04-30)
参考文献数
55
被引用文献数
2

We investigated the difference between muscle-EAT and nerve-EAT basically and clinically. A basic study was performed on healthy adult males. The skin blood flow, deep-tissue temperature, deep hemodynamics, heart rate, and deep-pain threshold were adopted as indexes, and they were compared for a total of three groups: the muscle stimulation-EA group, nerve stimulation-EA group and control group (no stimulation). An acupuncture needle was inserted into the gastrocnemius muscle for muscle stimulation-EA and another needle into the tibial nerve in the femoral region for nerve stimulation-EA. Electric current was then applied at 1Hz for 15 minutes after the flexibility of the foot joint was conformed. Each index was measured after it became stable and was recorded from 10 minutes before starting stimulation until 20 minutes after ending stimulation.A clinical study was performed on 41 patients with cervical radiculopathy. Muscle-EAT was applied to the patients as the first choice. Cases graded five points or less in pain score (10-point method) after one month were included in the muscle-EAT group. Cases graded six points or more were subjected to nerve-EAT and were included in the nerve-EAT group. The therapeutic results in these two groups were examined for a period of three months at intervals of one month based on the pain score and the evaluation criteria for the results of treatment of cervical radiculopathy.As a result, we found that the skin blood flow significantly increased on the stimulated side in both the muscle stimulation-EA and nerve stimulation-EA group. The increase was greater in the nerve stimulation group than in the muscle stimulation group. The deep-tissue temperature rose significantly on the stimulated side in the nerve stimulation-EA group. Regarding the deep hemodynamics, deoxy Hb decreased significantly in the nerve stimulation-EA group. No difference was found in heart rate between the two groups. The deep-pain threshold was significantly raised by nerve stimulation.Patients with cervical radiculopathy who did not respond to continuous muscle-EAT for one month were subjected to nerve-EAT. After three months (two months after changing to nerve-EAT), similar improvements were found in both groups. Significant improvement of paresthesia was obtained with nerve-EAT.These results suggested that the nerve-EAT influences the peripheral circulation and the deep pain threshold more effectively, enhancing the clinical efficacy.
著者
向 ありさ 谷口 博志 藤本 英樹 松浦 悠人 貝嶋 弘恒 貝嶋 美哉子 辻内 敬子 古賀 義久 安野 富美子 坂井 友実
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.2-13, 2020 (Released:2020-07-13)
参考文献数
22

【目的】身体的・精神的疲労感を自覚する就労者に対して鍼灸治療と円皮鍼治療を介入し、 疲労感への効果を比較した。 【方法】[研究デザイン] ランダム化比較試験とした。 ランダムに鍼灸治療群 (ACP群)、 円皮鍼治療群 (PTN群) の2群に割付けた。 [セッティング] 関東大都市圏Aクリニック院内鍼灸治療室。 [対象] Aクリニックの就労者。 組入れ基準は、 20歳以上45歳未満、 身体的・精神的疲労感を自覚する者。 除外基準は、 疲労に関わる疾患や症状、 医学的異常、 既往歴を有する者など。 [介入方法] 1か月間週2回。 ACP群、 PTN群とも疲労症状に対する全例共通の基本治療 (心兪、 腎兪、 合谷、 関元、 内関、 足三里、 太渓) に加え、 個々の身体所見に応じた個別治療を行った。 [評価項目] 主要評価項目は4週後の身体的・精神的疲労感Visual Analogue Scale (VAS) の変化、 副次評価項目は身体的・精神的疲労感VASの群内比較と介入直後の変化、 身体症状VAS、 Health and Work Performance Questionnaire 、 GHQ精神健康調査票12項目版、 MOS 36-Item Short-Form Health Survey スタンダード版、 唾液アミラーゼ値。 [試験ID] UMIN000034181 【主な結果】ACP群14例中13例、 PTN群15例中13例が解析対象となった。 主要評価項目の2群の身体的・精神的疲労感VASに有意差はみられなかった。 副次的評価項目の介入前後比較では、 身体的疲労感VASで2群とも有意な減少がみられ、 ACP群でより大きな効果量を示した。 群内比較ではPTN群の精神的疲労感VAS が8回目に有意に減少した。 【考察・結論】鍼灸治療と円皮鍼治療の効果の差は見出せなかった。 しかし、 鍼灸治療では直後効果、 円皮鍼治療では経時的な効果とそれぞれの有用性が示された。
著者
松浦 悠人 藤本 英樹 古賀 義久 安野 富美子 坂井 友実
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.119-129, 2016-05-31 (Released:2016-07-04)
参考文献数
39

目的:肩こりは国民の多くが経験する症状であるが,肩こりに関する研究は非常に遅れているのが現状である.そこで本研究では,肩こりの特性を明らかにするため,肩こりを有する者と有しない者の比較検討を行った.方法:対象は自覚的な肩こりの有無により,肩こりを有する成人男性13名(NP群,平均年齢20.2±0.7歳)と肩こりを有しない成人男性10名(CON群,平均年齢21.2±1.5歳)とした.肩こりの評価にはVisual Analogue Scale(VAS),圧痛・硬結所見を用い,ストレスの評価には自覚的ストレスのVAS,State-Trait Anxiety Inventory(STAI),MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36),唾液コルチゾールを用いた.唾液コルチゾール濃度は,酵素免疫測定法(ELISA法)により求めた.また,唾液の採取時間は,午前9時から10時以内の採取とした.結果:NP群の肩こり感全体のVASは56.9±17.3mmであった.圧痛・硬結所見では,硬結所見に有意差は認められなかったが,左右僧帽筋上部線維,右頭板状筋の圧痛がNP群で有意に高かった(P<0.05).自覚的ストレスのVASではNP群59.1±23.7mm,CON群10.8±17.6mmで有意差が認められた(P<0.05).STAIでは,特性不安ではNP群52.7±9.1点,CON群44.6±9.9点で有意差は認められなかったが,状態不安においてNP群42.2±6.6点,CON群35.9±9.1点で有意差が認められた(P<0.05).SF-36では,下位尺度8項目のうち,身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,全体的健康感,活力,心の健康に有意差が認められた(P<0.05).唾液コルチゾール濃度はNP群16.3±8.2nmol/L,CON群14.8±4.5nmol/Lで有意差は認められなかった.考察・結語:肩こりの心理・身体的な特性について検討した結果,唾液コルチゾール濃度では有意差は認められなかったが,肩こりを有する者は,自覚ストレス度や不安度が高く,精神的・身体的な健康度が低いことが示された.このことから,肩こりに身体的要因のみならず,心理社会的要因が関与している可能性が示唆された.
著者
安野 富美子 坂井 友実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.25-33, 2017 (Released:2020-07-07)
参考文献数
12

閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans, 以下ASO)は、四肢動脈に動脈硬化が進行し、狭 窄あるいは閉塞が生じ、その環流領域に循環障害を呈する疾患である。本症は超高齢社会の到来 と生活習慣の欧米化による食生活の問題や運動不足、ストレスの増加などから今後益々の増加が 予想されている。 ASOの主症状は、冷感、間欠跛行で、重症化すると安静時痛、潰瘍や壊死も起こってくるが、 いずれも下肢動脈の循環障害に起因した症状である。 本症に対する治療は重症度によって異なる。Fontaine分類のⅠ・Ⅱ度では、主として保存療法が 行われるが、効果がみられず、外科的処置が行われることもある。 一方、鍼治療は末梢循環障害の改善に効果があるとされているが、器質的疾患である ASOに対 しても鍼治療の効果があるのか、またその適応範囲と作用機序の一端を明らかにするために行っ た我々の研究について紹介する。 鍼治療の効果を検討した対象は、ASO患者21例(Fontaine分類Ⅰ度1例、Ⅱ度17例、Ⅲ度2例、 Ⅳ度1例)で、鍼治療は、低周波鍼通電療法を主とした。評価項目は、冷感、間欠跛行距離、ペ インスコア、ABPIとし、鍼治療開始前と17回目の鍼治療前の時点で評価した。また、鍼刺激前 後の生体反応として、下肢の皮膚温測定(サーモグラフィ装置による計測)と血漿CGRP値の測 定を行った。 その結果、Fontaine分類のⅠ・Ⅱ度の症例では、冷感の改善、間欠跛行距離の延長、歩行時の疼 痛の軽減がみられた。Fontaine分類Ⅲ・Ⅳ度の症例では、症状の改善は得られなかった。ABPIは、 すべての症例で変化がみられなかった。鍼刺激による、時間経過に伴う下肢末梢の皮膚温は有意 な変化を示し、鍼刺激開始15分後から、抜鍼後15分後にかけて刺激前値に比し、有意な上昇を 示した。血漿CGRP値は、鍼刺激15分後に刺激前値に比し有意な増加がみられた。 以上のことからASOに対する鍼治療はFontaine分類Ⅰ度・Ⅱ度に効果的であり、その機序とし て末梢血管を拡張させ、循環を改善させることを示した。このことからASOに対する鍼治療の適 応は、Fontaine分類Ⅰ度・Ⅱ度と考えられた
著者
坂井 友実 大崎 紀子 安野 富美子 曾川 義寛 矢野 忠
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.137-146, 2002-05-01
参考文献数
8
被引用文献数
7

Poor circulation is considered to be a cause of stiff shoulders, but there have been no studies on deep hemodynamics and the subjective estimation/palpation of stiff shoulders. We evaluated the relationship between deep hemodynamics and the degree of the subjective estimation/palpation of stiff shoulders by near-infrared spectrophotometry.<br>The subjects were 146 patients who visited our center and 23 healthy volunteers. Deep hemodynamics (tissue oxygen saturation: StO<sub>2</sub>, total hemoglobin concentration: total Hb) was measured in the scapular region of the bilateral shoulders using a deep hemodynamics measurement system (PSA-IIIN, Biomedical Science), and its relationship with the severity of the subjective estimation of stiff shoulders (5-grade rating) and that of palpation (4-grade rating) was evaluated. Deep hemodynamic values were affected by the body mass index (BMI) that is highly correlated with subcutaneous fat thickness. Therefore, analysis was performed in 70 patients and 8 healthy volunteers with BMI of 20-24 that does not affect hemodynamic values. Compared with the healthy volunteers, patients who reported marked shoulder stiffness showed a significant decrease in total Hb, and that who reported shoulder stiffness showed a significant decrease in StO<sub>2</sub>. On the other hand, compared with the healthy volunteers, patients with marked shoulder stiffness observed by palpation showed significant decreases in both StO<sub>2</sub> and total Hb; the decreases were more marked with more marked stiffness. These results suggested that deep hemodynamics is a diagnostic parameter of stiff shoulders.