著者
高木 絢加 谷口 彩子 駒居 南保 村 絵美 永井 元 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.19-25, 2014 (Released:2014-03-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

炭酸水の口腔内刺激 (清涼感) に着目し, 炭酸水の飲水が実体温をどの程度変化させるのか, その反応は炭酸の口腔内刺激のみでも起こるのかどうかを明らかにするために, 等温・等量の炭酸水と水を用いた飲用試験と偽飲 (Sham-feeding;SF) による口腔内刺激のみの試験を行った。炭酸水の飲水 (炭酸水) , 水の飲水 (水) , 炭酸水の偽飲 (炭酸水SF) , 水の偽飲 (水SF) の4試行をrandomized crossover designで実施した。前夜10時より絶食した若年女性13名に, 室温を26℃に保持した実験室で異なる日の朝9時にサンプル (15℃, 250 mL) を負荷した。心電図 (心拍数, 心拍変動) をサンプル負荷前20分間および負荷後40分間測定し, 深部体温 (鼓膜温) , 末梢体温 (足先温) を高感度サーモセンサーで連続測定した。鼓膜温は水・炭酸水ともにSFでは変化せず, 飲水で一過性に低下した。足先温は, 飲水 (水, 炭酸水) で約2.5-3℃低下し, 水SFでは約1℃の低下であったのに対し炭酸水SFでは約2.5℃の低下を認めた。心拍数は, 炭酸水, 炭酸水SFで負荷直後に一過性に上昇した。結果より, 炭酸水の口腔内刺激 (味, 炭酸刺激) のみでも足先温や心拍数を変化させることが示された。
著者
高木 絢加 武田 一彦 御堂 直樹 駒居 南保 山口 光枝 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.49-58, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
32
被引用文献数
4 3

【目的】温かい飲食物摂取後の,「体の温かさ」や体温の変化を検討した報告は少ない。本研究の目的は,温度の異なるスープをサンプルとして,飲食物の温度が摂食者の主観的温度感覚と深部・末梢体温に及ぼす影響を調べることである。【方法】前夜から絶食した若年女性20名に,異なる日の朝9時に,65°Cスープ摂取,対照として 37°Cスープ摂取,スープ摂取なし(ブランク)の3試行をランダムな順序で実施した。26°Cの実験室で検査衣を着用した安静状態の被検者の,サンプル摂取10分前から摂取65分後までの主観的温度感覚,深部体温(鼓膜温),末梢体温(手先温,足先温),心拍数を測定した。スープ摂取後には嗜好調査を実施した(大変おいしい[10点]~大変まずい[0点])。【結果】嗜好得点は,65°Cスープでは37°Cスープより有意に高かった。摂取後の鼓膜温,足先温,心拍数の変化量は,65°Cスープ, 37°Cスープ,ブランクの順に高値で経時変化した(Sample effect, Sample×Timeとも有意)。各測定時点の多重比較からは,65°Cスープでは,主観的温度感覚は摂取直後で 37°Cスープやブランクと比べて有意に高値であること,鼓膜温は摂取20分後まで,足先温は摂取15分後まで 37°Cスープと比べて有意に高値であることが示された。【結論】37°Cスープとの比較から,65°Cスープ摂取後の鼓膜温や足先温の上昇はスープの温度の影響を受けていると考えられた。3試行の結果から,飲食物に含まれるエネルギー基質や美味しさなどの要因に加え,飲食物の温度自体も主観的温度感覚や体温に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
永井 成美 脇坂 しおり 高木 絢加 山口 光枝 森谷 敏夫
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.17-27, 2012 (Released:2012-02-27)
参考文献数
35
被引用文献数
5 1

【目的】我々はこれまでに,腹壁電極から胃の活動電位(胃電図)を導出・解析する方法により胃運動を測定し,飲水(冷水・温水)が胃運動を一過性に増大させることや,胃運動の強さと食欲には関連がみられたことを報告している。本研究では,刺激味を有する液体が胃運動や食欲感覚へ及ぼす影響を検討することを目的として,香辛料(カレーパウダーとコンソメ)を含むスープ(Spice)と等エネルギー・等Na量で風味がないプラセボスープ(Control)を用いて比較試験を行った。【方法】若年女性12名に異なる2日間の朝9時に,SpiceまたはControlをランダムな順序で負荷した。ベッド上で胃電図,鼓膜温,心拍数をスープ負荷20分前から負荷40分後まで測定し,食欲感覚(空腹感,満腹感,予想食事量,満足感)は,負荷20分前,負荷直後,40分後の3回測定した。胃運動の強さは,胃電図から徐波,正常波,速波の各パワー値を計算し負荷前を基準としたパワー比を評価に用いた。【結果】Spice負荷後の胃運動は,徐波,正常波,速波パワー比ともにControlと比較して高い傾向が示された。Spice負荷後の食欲感覚は,満腹感と満足感でControlと比較して有意に高値を示した。鼓膜温,心拍数は両スープとも負荷後に上昇したが,鼓膜温(増加量)はSpiceでControlよりも有意に高値を示した。【結論】香辛料を含むスープ摂取後には,胃運動が増大する傾向があること,満腹感と満足感が高まること,負荷直後の体温が上昇することが等エネルギー・等ナトリウムのプラセボスープとの比較により示唆された。
著者
高木 絢加 岸田 菜々 鈴木 麻希 武田 一彦 木村 理恵 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.165-173, 2016 (Released:2017-01-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

【目的】我々は,温スープ摂取後の安堵感の上昇にはスープの嗜好性が,体温上昇にはスープの温度が関連することを若年女性において見出したが,スープ中のナトリウム(Na)の影響の程度は不明であった。本研究の目的は,日常で摂取している容量のNaが嗜好性・安堵感や主観的温度感覚,深部・末梢体温の上昇に及ぼす影響を,スープと食塩のみを除いたスープ(食塩無スープ)を用いた実験により明らかにすることである。【方法】前夜から絶食した若年女性12名に対し,スープ(Na 440 mg)摂取,食塩無スープ(Na 61 mg)摂取,スープ摂取なし(ブランク)の3試験を異なる日の朝9時より無作為な順序で行った。サンプル(65°C,150 ml)は5分間で摂取し,直後に嗜好調査を行った。深部体温(鼓膜温),末梢体温(手先温・足先温),心拍数は,摂取10分前から65分後まで測定し,安堵感と主観的温度感覚は質問紙で6回測定した。【結果】スープでは食塩無スープと比べて嗜好得点が有意に高く,摂取後の足先温(曲線下面積:AUC)も有意に高かった。重回帰分析より,足先温上昇に嗜好得点が関連していることが示された。安堵感,主観的温度感覚,心拍数の各AUCは,両スープともにブランクより高かったがスープ間での差はなかった。【結論】スープに含まれるNaは,食塩としてスープの嗜好性を高め,摂取後の足先温上昇に関与することが示唆された。一方,両スープ摂取後の安堵感,主観的温度感覚,鼓膜温,心拍数は類似した経時変化を示したため,本研究で用いたサンプルのNa濃度の影響は限定的だと考えられる。
著者
高木 絢加 谷口 彩子 駒居 南保 村 絵美 永井 元 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.19-25, 2014
被引用文献数
1

炭酸水の口腔内刺激 (清涼感) に着目し, 炭酸水の飲水が実体温をどの程度変化させるのか, その反応は炭酸の口腔内刺激のみでも起こるのかどうかを明らかにするために, 等温・等量の炭酸水と水を用いた飲用試験と偽飲 (Sham-feeding;SF) による口腔内刺激のみの試験を行った。炭酸水の飲水 (炭酸水) , 水の飲水 (水) , 炭酸水の偽飲 (炭酸水SF) , 水の偽飲 (水SF) の4試行をrandomized crossover designで実施した。前夜10時より絶食した若年女性13名に, 室温を26℃に保持した実験室で異なる日の朝9時にサンプル (15℃, 250 mL) を負荷した。心電図 (心拍数, 心拍変動) をサンプル負荷前20分間および負荷後40分間測定し, 深部体温 (鼓膜温) , 末梢体温 (足先温) を高感度サーモセンサーで連続測定した。鼓膜温は水・炭酸水ともにSFでは変化せず, 飲水で一過性に低下した。足先温は, 飲水 (水, 炭酸水) で約2.5-3℃低下し, 水SFでは約1℃の低下であったのに対し炭酸水SFでは約2.5℃の低下を認めた。心拍数は, 炭酸水, 炭酸水SFで負荷直後に一過性に上昇した。結果より, 炭酸水の口腔内刺激 (味, 炭酸刺激) のみでも足先温や心拍数を変化させることが示された。
著者
高木 絢加 山口 光枝 脇坂 しおり 坂根 直樹 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.193-205, 2012
被引用文献数
1

邦人若年女性の約半数が日常的に四肢などに冷え感を有していることが報告されている.我々はこれまでに,若年女性の冷え感と低いエネルギー摂取量や体温・熱産生に関与する交感神経活動が関連していることを見出している.この結果に基づき本研究では,「若年女性の冷え感は,体熱産生が低いために,深部体温は保持されるものの末梢体温が低下し,その自覚症状として表れている」との仮説を立て,以下の実験による検証を試みた.被験者は,「四季を通じて日常的に四肢などに強い冷え感を自覚している女性(冷え群)」と「四季を通じて日常的に四肢などに冷え感をほとんど自覚したことのない女性(非冷え群)」各10名(18-21歳)とした.前夜から絶食した被験者に半袖半ズボンの検査衣を着用してもらい,異なる2日の午前8時30分に,体組成と安静時エネルギー消費量測定,もしくは体温と温度感覚(冷え感),交感神経活動(心拍変動解析)測定を26℃の実験室で行った.深部体温の指標として鼓膜温,末梢体温の指標として手先と足先の皮膚温度を,高感度サーモセンサーで60分間連続測定した.冷え感はビジュアルアナログスケールを用いて15分間隔で測定した.冷え群では非冷え群と比較して,体温・熱産生に関与する交感神経活動が有意に低く,除脂肪体重あたり安静時エネルギー消費量も低値傾向を示した.鼓膜温は全測定ポイントで2群で差がなかったが,冷え群では60分後の体温較差(鼓膜-手先,鼓膜-足先)が開始時と比べて有意に増加した.足先の冷え感スコアと鼓膜-足先の体温較差には,有意な正の相関を認めた.以上の結果から,日常的こ強い冷え感を有する若年女性は,(1)低い安静時エネルギー消費量,(2)深部体温には差がないが26℃・60分の曝露で深部-末梢体温較差が増加,(3)体温較差が大きいほど冷え感を強く感じるといった特徴を有することが示唆され,本研究の仮説が支持されたと考えられる.
著者
湯面(山本) 百希奈 是兼 有葵 高木 絢加 新屋 奈美 落合 なるみ 能瀬 陽子 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.152-162, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
13

【目的】フィリピン共和国では,2016年の教育改革でカリキュラムに健康(栄養の内容を含む)が追加されたが,指導案や教材に乏しく栄養の授業は十分に行われていない。そこで同国の栄養の授業推進に資することを目的として,日本の栄養教諭課程学生3名が中心となり同国内関係者と協力して現地小学校で栄養の授業を実践した。【方法】PDCAサイクルに基づき実施した。①Plan:アセスメントで文献調査とフィリピン共和国ボホール州タグビララン市現地調査を行い,栄養課題抽出後「栄養バランスの是正」を優先課題に決定し,学習指導案と教材を英語で作成した。関係者と現地で協議し修正とスタッフ研修を行った。②Do:同市立A小学校2年生1クラス(32名)で,3G FOODS(3食品群)でバランスを学ぶ栄養の授業を単回実施した。③Check(経過・影響評価):授業終了時に,児童の授業満足度と理解度を質問紙とワークシートで調べた。同時に,授業参観者(現地教師・JICA隊員等)による授業評価(現地のカリキュラムや児童への適合度)を実施した。④Act:評価結果を関係者と共有した。【結果】児童の授業満足度(楽しかった)は100%,理解度(ワークシートの問題への正答率)は91%と高かった。授業参観者による授業評価では,授業,内容ともに同国の教育カリキュラムや児童の理解度等のレベルに適していると評価され,今後活用したいとの意見も得られた。【結論】結果より,フィリピン共和国の栄養の授業推進につながる実践ができたと考えられる。