著者
丸田 恭子 園田 至人 内田 裕一 高橋 利幸 福永 秀敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.491-495, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
4 7

症例は89歳女性である.四肢のしびれと筋力低下を訴え入院した.右視神経萎縮があり視力は手動弁,四肢・体幹の全感覚消失と四肢に中等度の筋力低下を認めた.間質性肺炎が認められ,MRIでは第2から第6頸椎レベルにかけて連続性脊髄病変があり,後索から灰白質中心にかけてガドリニウムにて造影された.抗核抗体640倍(speckled type),抗DNA抗体33.1 IU/ml,抗SS-A抗体40.4,抗SS-B抗体171.9,抗RNP抗体39.5と高値を示したことから,全身性エリテマトーデスやSjögren症候群による縦断性脊髄炎を考え,ステロイドパルス療法を施行した.症状は軽快し,頸髄の異常所見は消失した.その後,抗アクアポリン4抗体陽性が判明し,頸髄病変が再燃したためセミパルス療法を行い,プレドニゾロン10 mg/日を継続している.全身性エリテマトーデスやSjögren症候群による縦断性脊髄炎が報告されているが,視神経脊髄炎においては各種の自己抗体の上昇をともなう場合があり,視神経脊髄炎関連疾患も考察して抗アクアポリン4抗体を測定することが診断および治療の上で重要と考える.
著者
高橋 利幸 大塚 雅恵 後藤 健太 天野 京絵 指方 梢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101691, 2013

【はじめに】訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)において、利用者とその利用者を取り巻く環境を調整することは必要不可欠な役割である。しかし、環境調整は様々な要因によりセラピスト本意のアプローチができないことも多い。いかにその必要性を伝え、利用者に適切な調整を行えるかが重要である。本研究では、環境調整の中でも手すりの設置に焦点を置き、利用者の家屋にある手すりと転倒との影響を調査した。同時に、より有効な手すりの設置を提案できるように現在の設置状況から比較検討を行った。【方法】対象は平成23年4月から平成24年10月までの期間に訪問リハを提供している利用者41名である。内訳は男性18名、女性23名、平均年齢は84.1±22.0歳である。p条件は、「訪問リハ実施期間中に利用者の使用しているベッドからトイレまでの動線内で起きた転倒」として、動線内に設置された手すりとの関連をみた。動線内を車椅子移動している者とトイレ移動を行っていない者は除外した。 手すりの有効性に関して、手すり設置の有無と転倒の有無でカイ2乗検定を行った。統計解析にはSPSS Statistics19を用い、危険率5%未満を有意とした。手すりの設置状況の検討は、転倒の有無から転倒群14名、非転倒群27名に分類し、各調査項目との関連性をみた。調査項目は、動線内の手すり設置(以下手すり項目)、認知症高齢者の日常生活自立度に1以上で該当しているか(以下認知症項目)、移動に見守り以上の介助が必要か(以下介助項目)、動線内の段差(以下段差項目)、歩行補助具の使用(補助具項目)を挙げた。各調査項目(カテゴリー)をそれぞれあり、なしで名義尺度に変換し、数量化3類を用いて統計処理し、両群のカテゴリースコアの散布図を比較検討した。【説明と同意】対象者には研究趣旨を文章と口頭にて説明し、本人・身元保証人の署名にて同意を得た。なお、本研究は国際医療福祉大学の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】利用者の家屋にある手すりの有用性に関して、手すり設置の有無と転倒の有無では有意差を認めた(p<0.05)。続いて、数量化3類で得られたカテゴリースコアから手すり設置と各調査項目との関係性を散布図で示した。転倒群では、抽出された成分1(横軸)と成分2(縦軸)から散布図を作成し、累積寄与率は62.15%であった。非転倒群でも同様に散布図を作成し、累積寄与率は56.61%であった。【考察】各利用者の家屋にある手すりは、既に設置されていたものや家族が取り付けたもの、セラピストが環境調整を実施して取り付けたものなど経緯は様々だが、本研究において転倒予防に関与していたことが明らかになった。手すりの設置に関しては、取り付け位置が一般的に定量化され、専門業者を介さずとも個人に適した取り付けが容易にできるようになっている。そこで、個人因子や環境因子を考慮しながら環境調整を提案することが、セラピストの専門性として求められると考える。カテゴリースコア散布状況から、転倒群では手すり項目と補助具項目をグループ化した。ここから、手すりと歩行補助具を併用する際はその使い分けを明確化し、移動を単純化させることが重要であると推察された。非転倒群では、手すり・認知症・介助項目をグループ化した。これにより、介助方法とそれに関わる手すりの提案が適切に行われている傾向にあると推察された。一方で、非転倒群の散布図では手すり項目と補助具項目において横軸と縦軸を介して対照的な位置づけとなっている。両群を比較検討し、手すりの設置に関して歩行補助具との併用を最小限にし、移動動作をより単純化させることが重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】訪問リハでは、在宅生活や社会参加まで多面的にかかわり、その能力を最大限に生かすために環境への配慮にも目を向けることが重要である。しかし、環境に対するアプローチは利用者とその周囲の意見に影響を受けやすいため、関わり方の工夫や、信頼関係を築き上げことも重要である。その上で、根拠に基づく妥当な指導や提案を提供し、訪問リハサービスの質の向上につなげていきたいと考えている。
著者
北川 賢 長田 高志 金子 仁彦 高橋 利幸 鈴木 則宏 中原 仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.737-744, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
30

症例は18歳男性.約半年前に両眼視力低下,1か月前に右下肢麻痺と感覚異常を自覚.入院時,中心フリッカー値は両眼で低下.MRIは頸髄,胸髄に造影効果を伴う散在性のT2延長病変あり(頭部は異常なし).抗アクアポリン4抗体陰性,髄液オリゴクローナルバンド陽性.“視神経脊髄型多発性硬化症”を疑ったが,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(myelin oligodendrocyte glycoprotein; MOG)抗体陽性であった.多発性硬化症を疑う病態から抗MOG抗体を認めた際の対処法は,2017年改訂のMcDonald診断基準にも詳細な言及はなく,今後の知見の蓄積を要すると思われる.
著者
松本 有史 金子 仁彦 高橋 利幸 中島 一郎 久永 欣哉 永野 功
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.729-732, 2017 (Released:2017-11-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

症例は発症時65歳の男性.右肩・上腕の感覚障害が一過性に出現し,MRIにて頸髄C2/3右背側に1椎体程度の小病変を認めた.約1年3か月後に右頬・後頸部・後頭部に電撃痛が出現し,MRIにて頸髄C1右背側に後索と三叉神経脊髄路核に及ぶ卵円形の病変を認めた.視神経や中枢神経の他の部位には病変を認めなかった.血清の抗aquaporin 4抗体が陰性,抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体が陽性であった.ステロイドの投与で症状は改善した.視神経脊髄炎spectrum disordersの診断基準は満たさず,抗MOG抗体陽性の再発性脊髄炎として貴重な症例と考えた.