著者
北川 賢 長田 高志 金子 仁彦 高橋 利幸 鈴木 則宏 中原 仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.737-744, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
30

症例は18歳男性.約半年前に両眼視力低下,1か月前に右下肢麻痺と感覚異常を自覚.入院時,中心フリッカー値は両眼で低下.MRIは頸髄,胸髄に造影効果を伴う散在性のT2延長病変あり(頭部は異常なし).抗アクアポリン4抗体陰性,髄液オリゴクローナルバンド陽性.“視神経脊髄型多発性硬化症”を疑ったが,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(myelin oligodendrocyte glycoprotein; MOG)抗体陽性であった.多発性硬化症を疑う病態から抗MOG抗体を認めた際の対処法は,2017年改訂のMcDonald診断基準にも詳細な言及はなく,今後の知見の蓄積を要すると思われる.
著者
鈴木 潤 菅野 直人 西山 修平 金子 仁彦 三須 建郎 竪山 真規 遠藤 俊毅 青木 正志
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.571-575, 2012 (Released:2012-08-27)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は30歳男性である.受診半年前より頭部MRIで異常信号を指摘されていた.1カ月前より歩きにくさ,尿の出にくさが出現し当科受診.神経学的には両下肢の中等度の筋力低下,胸部以下の温痛覚低下,排尿困難,便秘,陰萎をみとめた.腰髄MRIでは円錐部に辺縁の造影効果をともなう浮腫性病変があり,頭部MRIでは無症候性の散在性白質病変をみとめた.末梢血ではみられなかったが脳脊髄液中には好酸球の増加が明らかであり,これはステロイドパルス後に変性像が観察された.寄生虫感染や骨髄増殖性疾患が否定的であり,特発性に好酸球が病態に関与する再発性脳脊髄炎と考えられた.急性期および寛解維持にステロイドが著効する点が特徴的であった.
著者
松本 有史 金子 仁彦 高橋 利幸 中島 一郎 久永 欣哉 永野 功
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.729-732, 2017 (Released:2017-11-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

症例は発症時65歳の男性.右肩・上腕の感覚障害が一過性に出現し,MRIにて頸髄C2/3右背側に1椎体程度の小病変を認めた.約1年3か月後に右頬・後頸部・後頭部に電撃痛が出現し,MRIにて頸髄C1右背側に後索と三叉神経脊髄路核に及ぶ卵円形の病変を認めた.視神経や中枢神経の他の部位には病変を認めなかった.血清の抗aquaporin 4抗体が陰性,抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体が陽性であった.ステロイドの投与で症状は改善した.視神経脊髄炎spectrum disordersの診断基準は満たさず,抗MOG抗体陽性の再発性脊髄炎として貴重な症例と考えた.
著者
田野 大人 金子 仁彦 菊池 昭夫 長谷川 隆文 武田 篤 青木 正志
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.308-311, 2013-04-01 (Released:2013-04-19)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

症例は74歳男性である.61歳時に動作緩慢で発症,認知機能障害,垂直性核上性眼球運動障害,仮性球麻痺,パーキンソニズムをみとめ,精査の結果進行性核上性麻痺と診断した.ドパミン作動薬の急激な増量ならびに過剰投与による開顎ジストニアをみとめたが,ドパミン作動薬の漸減・中止により開顎ジストニアは軽快した.進行性核上性麻痺症例の中にはドパミン作動薬が有効な例もあるが,本例のようにドパミン作動薬の急激な増量ならびに過剰投与が各種ジストニアの原因となることがあり注意が必要である.