著者
川脇 沙織(田中沙織) 大竹 文雄 成本 迅 山田 克宣
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

満足度・幸福度が生物学的指標で記述できるかを検証した。経済的な満足度を測定する実験課題の作成および脳活動データ、経済学・社会・生物学的属性データを収集し、経済学・社会・生物学的属性と満足度に関連する脳活動との関係を明らかにした。頭頂皮質と線条体が主観的効用の表現にかかわり、また島皮質と背外側前頭前野が社会的効用にかかわりかつ性別という個人属性によってその活動が異なることを明らかにした。これらの幸福度に関わる脳部位の具体的な機能の検証を行うためにfMRIによるニューロフィードバック実験を検討し、主観的効用に関わる線条体の活動の変化とそれに伴う意思決定行動の変化を示唆する予備的な結果を得た。
著者
高野 佐代子
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

歌声や発話に関わる声の高さの調節には声帯の長さと張力が深く関わっており、声を高くする際には甲状軟骨の声帯付着部と輪状軟骨の声帯付着部が互いに離れる方向へ運動が生じている。この変化は輪状甲状関節の運動によることが知られているが、この関節運動が回転運動のみなのか、滑走運動も行っているのかについては一致した見解が得られていなかった。また上下方向の滑走運動により声の高さに影響を与えるという理論モデルもあるが、実際の計測結果の報告はない。これまでに輪状甲状関節の運動を詳細に調べるために、MRIを用いて十分な解像度を得られるように撮像装置の改良や撮像方法の開発を行ってきた。本年度は特に3次元パターンマッチングプログラムを作成し、得られたMRIデータから半自動的に正確な位置を推定した。その結果、甲状軟骨はhighでは上方への移動に加え、前方への移動が見られ、また左右方向への移動回転も確認された。輪状軟骨はhighで上昇し、後方への回転に加え、後方への移動も見られた。輪状甲状関節の上下の滑走は0.5mm以下と小さく、前後方向の滑走に比べると影響は小さいと考えられる。前後方向の滑走には左右差が見られ、最大約1.2mmの運動が確認された。以上の結果から、関節の滑走が起こらないとする従来の報告と異なり、中音域における輪状甲状関節の運動は、輪状軟骨の回転と滑走からなると考えられた。これらの結果をMaveba2005において発表した。今後は被験者の数および発声の範囲を増やして関節運動を計測し、、雑誌論文に投稿する予定である。
著者
河内山 隆紀
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,複雑な手指運動学習課題における運動技能の両手間転移に関する神経機構の解明を目標としている。本年度は,主に昨年度構築した実験システムを用いて実験を行なった。被験者は,健常な男女40人であり,複雑な手指運動学習課題である健身球の回転運動課題を課した。両手間転移が評価できるように被験者を4群に分け,すなわち,右手から左手への転移を評価する群とその逆を評価する群に加え,それぞれに転移を生じない統制群を設けた。脳活動計測は,昨年来より共同研究を行っている生理学研究所の磁気共鳴画像装置(MRI)を用いた。MRIを撮像中に(1)ビデオ監視システムによる球の回転運動計測と(2)被験者の腕より導出した筋電図(EMG)計測を行ったが,解析の結果より被験者の行動は球の回転運動計測から評価することとした。その結果,行動学的には,学習に伴う,球の軌道分散が減少し,また回転角加速度の上昇が見られた。また脳活動計測データより,転移前では,運動学習に伴う,小脳、運動前野、補足運動野、体性感覚野、後上頭頂葉の活動減少が見られたが,転移後のデータにはそのような変化は確認されなかった。また,転移後の運動では,補足運動野と運動前野の活動が転移前に比較して上昇していることが確認された。以上の結果より,転移の成立は,転移前の補足運動野と運動前野で生じた運動学習がプライミング的な役割を持ち,それが転移後の当該領域の脳活動上昇を導き,さらには行動学上の促進効果の表出をもたらしたことが予想される。現在,行動学的データと脳活動計測データの相関分析などを継続中であり,それらの結果を踏まえた研究成果を今年度中に専門雑誌へ投稿予定である。
著者
山田 玲子 石川 保茂 宮森 吉昌 山田 恒夫 山本 誠子 水口 志乃扶 立石 浩一 伊庭 みどり 北村 美里 江口 小夜子 楊 シュイ 飯野 義一
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

音韻、語彙、構文といった様々な要素に分けて外国語の学習実験を行う環境を構築し、要素間の相互関係、特に学習の順序効果を調査した。その結果、同一処理レベル内では順序効果はなかったが、処理レベルが異なる音韻学習と語彙学習の間で有意な順序効果があり、学習初期段階に低次処理を習得することの重要性が示された。この結果に基づき、低次から高次へと習得していく「ボトムアップメソッド」を学習モデルとして提案する。また、その学習モデルの効果を最適化するためのカリキュラムモデルとして「反転学習の概念モデル」を作成し、効果があることを確認した。さらに、学習解析の手法で個別に最適化する方略について整理、考察を行った。
著者
小川 健二
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

ヒトは,自らの身体状態のイメージ(身体像)を脳内で動的に推定しており,さらに自己の身体像は他者認知の基盤ともなっていると考えられる(ミラーニューロンシステム仮説).また身体像は,日々変化する環境,あるいは身体や道具の特性に適応する必要があり,このためには運動指令や環境変化を予測可能な脳内の内部モデルの学習が不可欠である.そこで本研究は,このような身体像の基盤となる内部モデルの神経表象を明らかにするため,ヒトが2種類の感覚運動変換に適応した後の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)で計測し,それぞれの変換条件を表象する脳部位の特定を試みた.先行研究から,ヒトは複数の運動スキルを同時並行的に学習可能な点が示されているが,これは個々のスキルに対応した複数の内部モデルが脳内に獲得されているものと考えられる.実験ではジョイスティックを使った視覚トラッキングを用い,実験参加者は2種類の相反する回転変換(+90度または-90度)に同時適応した.そして,運動中のfMRI活動に対してマルチボクセルパターン分析(MVPA)を用い,変換条件が識別可能か検討した.また回転変換条件と,低次の運動キネマティクスとの違いを明示的に区別するため,2種類のターゲット軌跡パターンを設け,異なる変換条件と軌跡パターンの組合せに対する識別器の汎化精度を調べた.結果から,感覚運動野,補足運動野,および小脳前部の活動パターンを使って回転変換の識別が可能であった.本研究から,感覚運動関連野および小脳で異なる感覚運動マッピングが表象されていることが明らかとなった.
著者
武田 祐輔
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、脳波や脳磁図から運動意図に関連する脳活動を抽出し、ブレイン-コンピュータ・インタフェース(BCI)の精度向上に役立てることを目的とした。運動意図に関連する脳活動を抽出するために、運動想像中の脳波から、様々な未知のタイミングで現れる波形(非同期波形)を推定し、その性質を明らかにした。そして、非同期波形の機能的役割を推測するための方法を確立した。さらに、レスト中の脳活動データから繰り返し現れる時空間パターンを推定する手法を提案した。
著者
佐藤 匠徳 赤沼 啓志
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1.臓器・組織の再生に必須な「Angiocrine因子」を同定した。2.臓器間を結ぶ新規の「臓器間血管網」を同定した。3.心筋梗塞における線維芽細胞特異的な細胞内エネルギー代謝機構の阻害をターゲットとした薬剤が梗塞後の線維芽細胞の増殖を抑制し、心臓の線維化を最小限化し血管形成を促進することで、心機能の向上を誘導することを示した。4.血管新生における、神経細胞の新たな役割とそのメカニズムを明らかにした。5.心機能の異常に伴う合併症の発症に関与している因子群を同定し、それらの作用機序に関する知見を得た。