著者
柿澤 敏文 佐島 毅 鳥山 由子 池谷 尚剛
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.91-104, 2007
被引用文献数
1

2005年7月に、全国盲学校71校に在籍する児童生徒に対して視覚障害原因等の質問紙調査を実施し、3,746人の回答を得た。1970年以来5年ごとに実施している調査結果と比較し、その推移を検討した。盲学校に在籍する児童生徒数はこの5年間に219人減少する一方、盲学校に占める重複障害児童生徒の割合は漸次増加している。視覚障害原因は、先天素因(57.10%)、中毒(17.59%)、原因不明(9.02%)、全身病(6.30%)、腫瘍(5.87%)、外傷(2.80%)、感染症(1.31%)の順に多く、1970年度以来、第1位は先天素因である。眼疾患の部位と症状は、網脈絡膜疾患(48.02%)、眼球全体(21.73%)、視神経視路疾患(15.48%)、水晶体疾患(4.70%)の順であった。このうち、網脈絡膜疾患・視神経視路疾患の増加と水晶体疾患・眼球全体の減少が顕著である。視力分布は、在籍児童生徒のおよそ4割が0.02未満で、その割合の増加傾向が認められた。小学部以上の文字使用者は2,981人(85.44%)、文字指導困難は440人(12.61%)であった。文字使用者のうち、点字使用は865人で、その割合は1990年度から減少傾向が続き、逆に普通文字使用は増加している。
著者
鳥山 由子
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.66, pp.99-102, 2004-03

筆者は、長い間、附属盲学校で化学を担当していました。化学というと、「リトマス試験紙」「爆発」などの言葉を思い浮かべる人が多くて、盲学校では不可能なものと思われています。しかし、実際は、目の見えない生徒もガスバーナーを ...
著者
中村 満紀男 二文字 理明 窪田 眞二 鳥山 由子 岡 典子 米田 宏樹 河合 康 石田 祥代
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、インクルーシブ教育の社会的背景と理論的基盤について、アメリカ合衆国・英国・北欧について検討した。インクルーシブ教育(インクルージョン)は、先進風・途上国を間わず、国際機関や各国の中央政府が支持している現代における世界的な教育改革運動であるが、その真の意味は必ずしも正確に把握されていない。同時に、インクルーシブ教育運動が世界的に拡大してきた背景とそれを支えている理論についても、共通的基盤と多元的部分に整理して解明されていない。この複雑さが整理されないまま、インクルーシブ教育が差異ではなく、障害のみに焦点化して捉えられる場合、日本における特別支援教育に例示されるようにインクルーシブ教育のモザイク的理解に陥ることになる。こうして、インクルーシブ教育とは、社会的・経済的・教育的格差、文化的・宗教的差異、エスニシティの相違によって生じる社会からの排除を解消し、社会への完全な参加を促進し、民主制社会を充実・実現するために、通学者が生活する近隣コミュニティに立地する通常の学校において共通の教育課程に基づき、すべての青少年を同年齢集団において教育することである。またインクルーシブ教育は、これらの目的を達成するための方法開発も併せて追求している点にも特徴がある。このように、教育改革運動としてのインクルーシブ教育は、差異やそれに基づく排除を解消するための、政治・経済・宗教・文化等、広範囲に及ぶ社会改革運動であり、画期的な理念を提起していて成果もみられるが、既成の枠組みを打破するまでに至っていない。同時に、理念の普遍化が実現方法の画一化に陥っていて、理念とは裏腹の排除を生んでいる例など、今後の課題も多い。