著者
相澤 卓 金 泰正 吉川 慎一 間宮 良美 秋山 昭人 大野 芳正 大久保 雄平 三木 誠 橘 政昭
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.463-468, 2002-03-20
被引用文献数
6 4

(目的)近年,医療費抑制などの目的で種々の疾患においてクリニカルパスの導入が試みられている.当院でクリニカルパスを用いて治療したTURP(経尿適的前立腺切除術)症例について検討した.(対象・方法)平成11年6月より12年3月までの間にTURP目的で入院した69症例のうち32例にクリニカルパスを使用し,治療を計画した.これらの患者の入院期間,医療費給付点数等を各症例について計算し,同時期に入院し,クリニカルパスを使用しなかった37症例と比較した.(結果)クリニカルパス導入症例では平均入院期間±標準偏差は12.7±2.8日であり,平均医療費給付点数±標準偏差は48,424.2±4,437.5点であった.クリニカルパスを使用しなかった症例では平均入院期間±標準偏差は14.7±5.2日であり,平均医療費給付点数±標準偏差は55,365.5±16,805.1点であり,入院期間はやや長く,医療費給付点数もやや高い傾向にあった.(考察)クリニカルパスを使用することで効率的な診療ができ,医療費抑制にもつながることが示唆された.また,それぞれの患者の個別性にも注意を払い,クリニカルパスを作成していかなけばならないと考えられた.
著者
福井 準之助 山口 建二 仲間 三雄 富田 康敬 原田 勝弘 小俣 和一郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.1561-1566, 1985-10-20

71歳,16歳,23歳女性に生じた3例の心因性尿閉を報告する.全症例共,神経学的検査で異常なく,器質的下部尿路閉塞も認められなかった.2症例で尿閉は"emotional stress"の後に生じた.症例1では両側VURと軽度の肉柱形成膀胱を認めたが,症例2と症例3では通常の泌尿器科検査では異常がなかった.全症例で膀胱容量は500ml以上で尿流動態検査にて排尿中の外括約筋のaction potentialの増大を認めた.精神科的考察では,症例1はdepressionの1つの型であり,抗うつ剤の投与で尿路症状の改善をみた.症例2はヒステリーであり,精神安定剤と自律神経訓練法により尿路症状の改善をみた.症例3は神経分裂病によるもので,種々の治療に対し抵抗性であった.結婚と共に症状の消失をみたが,その後離婚し,再び残尿の増大を認められた.心因性尿閉の治療は,泌尿器科医と精神科医との協力の下でなされるべきである.
著者
田代 和也 岩室 紳也 中條 洋 波多野 孝史 古田 昭 野田 賢治郎 川島 淳
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.434-438, 1997-03-20
被引用文献数
3

(目的と背景)ESWL後に残石なしとなった症例の上部尿路結石の再発率を知るため検討を行った。(対象と方法)対象は1989年7月から1994年12月までにESWLを施行し,残石なしとなった単一部位結石で6ヵ月以上経過観察しえた395例であった。再発確認は原則KUB,時に超音波断層で行った。検討項目は全体の再発率および性別,患側,結石の数,部位,大きさ,結石既往症の有無,基礎疾患の有無,水腎症の有無に関して検討した。また,同時に対側再発率についても検討した。再発期間は残石なしとなった日から起算し再発が確認された日までの実測非再発率で算定した。(結果)全体の同側非再発率は1年96.5%,3年78.8%,5年65.3%であった。対側の非再発率は1年98.1%,3年92.5%,5年87.2%であった。因子別5年非再発率は結石の数で単発71.1%,多発31.6%(p<0.01),既往例別てばなしが77.1%,ありが35.7%(p<0.01),基礎疾患別でなしが67.7%,ありが35.7%(p<0.01)で統計学的有意差を認めた。しかし,性別,患側,部位,大きさ,水腎症の有無は同側再発に影響を認めなかった。(結論)上部尿路結石のESWL後の同側再発では結石の数,既往例,基礎疾患のあるものが危険因子と考えられた。また,ESWLは従来の開放性手術に比べ再発率を増加させる可能性が危惧された。