著者
曽根 淳史 古川 洋二 中塚 繁治 田中 啓幹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.902-906, 1989-06-20
被引用文献数
1

急速な転帰をとった膀胱原発絨毛癌の一剖検例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は70歳男性,1986年6月10日,肉眼的全血尿を主訴に来院した.膀胱鏡で後壁に母指頭大の乳頭状腫瘍と左側壁に米粒大の非乳頭状腫瘍を認め,生検の結果,未分化癌であったため強く入院を勧めたが拒否し放置していた.1987年1月30日に全身倦怠感,呼吸困難および体重減少を主訴に再来した.入院時,左女性化乳房を認め,血中hCG-βは101ng/mlと異常高値を認めた.腫瘍はすでにほぼ膀胱全体を占める程度に増大していた.入院後17日目,肺水腫及び心不全のために死亡した.剖検では膀胱腫瘍の大きさは10×10×3cmで,病理組織学的にsyncytiotrophoblastを認め,さらにhCG-βの免疫組織学的染色により同細胞内にhCG-β陽性顆粒が認められた.本症例は本邦第8例目と考えられた.
著者
笠井 利則 守山 和道 辻 雅士 上間 健造 桜井 紀嗣 赤澤 誠二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.526-529, 2000-05-20

症例は72歳,男性,1997年5月27日,左陰嚢内に無痛性腫賑を認め当科に紹介された。左精巣腫瘍と診断し6月3日,左高位清掃摘出術を施行した。病理診断はNon-Hodgkin's lymphoma(NHL),diffuse,mixed type,B cellであった。胸腹部CT,Gaシンチでは他部位に病変を認めなかった。約3年1カ月前に右精巣原発NHL(pT3NOMO,stageIEA)と診断され,化学療法(CHOP療法5コース)と放射線療法(inverted Y irradiation)が施行されていた。臨床経過から対側に発症した異時性両側精巣原発悪性リンパ腫と診断した。1年以上経過して発症する異時性両側精巣原発悪性リンパ腫は非常に稀であるため,それぞれの腫瘍のIgH遺伝子(IgJ_HDNA)再構成を調べされらの帰属につき検討した。
著者
工藤 誠治 稲積 秀一 鈴木 唯司 森田 秀 高橋 信好
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1063-1066, 1989-07-20

患者は,28歳の男性で,1987年10月,腰痛を主訴に,某医受診し,精査目的にて同年11月11日,当院紹介入院となった.入院時の検査成績では,著明な腎機能低下が認められた他,超音波検査並びに,胃部CT撮影にて,両側腎皮質の厚い石灰化が認められた.腎生検では,一部に骨髄細胞を伴った骨形成の病理所見が得られた.その後,外来にて経過観察中であったが,1988年6月3日,再入院となり,現在,血液透析施行中である.腎における異所性骨形成は,比較的稀な疾患であり,しかもこれまでの報告例は,全て片側腎に限られていた.今回,我々は,両側腎における異所骨形成を認め,同時に慢性腎不全を呈する1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.両側腎における異所性骨形成は,我々の調べ得た限りでは本邦での他の文献発表は,認めなかった.
著者
金子 尚嗣 恩村 芳樹 平野 順治 菅野 理 川村 俊三
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.732-736, 1989-05-20

症例は29歳,女性.昭和52年頃より徐々にCushing症候群の症状が出現してきた.昭和55年9月に当院に紹介入院し,両側副腎腺腫によるCushing症候群の診断で,二期分割手術を予定し12月22日に右副腎摘除術を施行した.右副腎には径1.8cmの黒色結節と多数の黒色小結節を認め,病理組織診断はprimary adrenocortical nodular dysplasiaであった.術後ステロイドの補充を行わなかったが,副腎不全症状はみとめられたかった.しかし,3カ月後に副腎不全症状が出現し,以後4カ月間デキサメサゾンを投与した.その後Cushing症候群の症状なく経過していたが,昭和61年11月には再びCushing症候群の症状が明かとなり,昭和62年6月1日に左副腎摘除術を施行し,左副腎に右側と同様の所見を認めた.本症例の様な経過を示した結節性過形成例の報告はなく極めて稀と考えられる.また,本症例での血中ACTHとcortisolの変動にはACTHが必ずしも完全に抑制されていない時があること,また結節よりの自律分泌にも変動があると推測されることなどから下垂体と副腎の二元支配が疑われた.
著者
森田 隆
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.1293-1298, 1984-08-20

最近、上部尿路の閉塞を知る手段として、WhitakarによるPressure Flow Studyが行なわれるようになって来た。上部尿路は大きく腎孟と尿管から成り、腎孟がある一定の内腔を有するのに対し、尿管は1本の管であり、両者の流体力学的特性は当然異なると考えなければならない。そこでPressure Flow Studyを理解するための基礎的検討として、尿管内に一定量の生理食塩水を流した場合の尿管の抵抗を測定した。8頭の成犬を用い、5Fr.ポリエチレンカテーテルを腎瘻の要領で腎孟尿管移行部まで挿入しハーバード社注入器で0.43、1.08、2.16、5.40、10.80ml/minの注入量で尿管内に生理食塩水を持続注入した時の尿管内圧を記録して、尿管抵抗を評価した。またノルアドレナリン、アセチルコリンを投与して尿管蠕動が頻発した状態においても検討した。尿管蠕動が発生していない状態の犬尿管全長の低抗値は、5Fr.40cmのポリエチレンカテーテルの低抗値とほとんど同じ1.16〜1.25cmH_2O/ml/minであった。しかし、ノルアドレナリン、アセチルコリンを投与して尿管蠕動を発生させると、尿管内流量の多少によって尿管抵抗値は著明に変化した。即ち2.16ml/min程度の流量まで、すなわち尿管がbolusを作って閉じている状態では尿管抵抗は著明に高く、尿管蠕動の果たす役割が重要と思われた。しかし、尿管内流量が5.4ml/min以上で、尿管が円柱となって尿が輸送される状態では、尿管蠕動が頻発していても、尿管低抗値は蠕動の発生していないコントロールの状態とほぼ同じで、この場合は尿管の壁のtonusが尿管低抗値を決定すると考えられた。
著者
寺沢 良夫 福田 陽一 鈴木 康義 森田 昌良 加藤 正和 鈴木 騏一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.85-92, 1992-01-20
被引用文献数
7 2

1987年4月から1991年3月までの4年間で, 当院健診センターにおける腹部超音波検査受診者は延人数19,933人で, このうち腎細胞癌と診断し, 手術した症例は16人であった.超音波検査での腎細胞癌の検出率は, 0.08% (1,245人に1人の割合) であった.男女比は15:1, 左右比は9:7, 年齢は38〜64歳 (平均50.8歳) であった.摘出腫瘍径は, UICCのTNM分類でT_1が7人 (44%), T_2が9人 (56%), 最小腫瘍径は1.2×1.3cmで, 小腎細胞癌が多く, 全例生存している.腎細胞癌の早期診断には健診センターにおける腹部超音波検査が最も有効な検査法と考えられた.
著者
木村 元彦 笹川 亨
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.677-684, 2007-07-20
被引用文献数
3 1

(目的)電磁誘導方式でX線照準であるESWL新旧2機種による治療効果や透視時間,疼痛の違いを評価し,新機種の有用性を解析するとともに,ESWL機として望まれる要素を検討する.(対象と方法)Siemens社Lithostarにて2,985結石(L部:腎691,尿管2,294), Lithostar Multilineにて639結石(M部:腎153,尿管486)の治療を行った.3ヵ月後までに完全排石または残石4mm以下となったものを「有効」と定義し有効率を算出した.(結果)外来のみで行ったものはL:2,547例(85.3%),M:608例(95.1%)であった.尿管結石の有効率はL:92.2‰M:82.7%,腎尿管合計の有効率はL:89.6‰M:81.4%とL部で有効率が有意に高かった.尿管結石では,LM両部において,U1に比べU3で有効率が高かった.尿管結石の平均治療回数はL:1.62回,M:1.64回とL部で回数が少なかった.腎結石の有効率はL:81.0%, M:77.1%と差がなかった.透視時間はU2を除きすべての区分で短縮され,腎尿管合計の平均ではL:3.67分,M:2.76分であった.鎮痛剤が必要であったのはL:50.8‰M:腿7%でM部で滅少した.(結論)Multilineでは有効率こそ前機種を上回らなかったが,透視時間が短縮し鎮痛剤の頻度も減少した.Endourologyの十分なバックアップを前提条件に,Multilineは外来治療として十分に簡便・安全であり一定の有用性が確認された.
著者
寺沢 良夫 福田 陽一 鈴木 康義 森田 昌良 加藤 正和 鈴木 騏一 今井 恵子 高橋 寿 鈴木 富夫 関野 宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2137-2145, 1993-12-20
被引用文献数
6

1985年4月から1992年9月までの7年6ヵ月において,当院での血液透析症例1,556人に,腹部超音波検査(US)を行い,腎癌を36人(41胃癌)診断し,手術で組織学的に確認した.血液透析症例の腎癌の検出率は2.3%(43人に1人の割合)で,健常人発生の胃癌(当院健診センターで延27,933人のUS検査のうち22人の腎癌,0.079%)の29倍高頻度発生であった.36人の内訳は,萎縮腎発生15人,ACDK (acquired cystic disease of the kidney)発生18人,腎移植後の固有腎発生3人で,ACDKの8人が1側腎多発,5人が両側腎多発であった.腎癌の診断率はUS100%,CT68%,血管造影55%で血液透析症例における腎癌の診断にはUSが最も優れた検査法であった.
著者
間宮 良美 平田 亨 栃木 真人 成田 佳乃 秋谷 司 古堅 進亮 石橋 啓一郎 小川 正至 三木 誠
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1969-1974, 1993-11-20
被引用文献数
7

上部尿路結石に対するESWLは徐々に外来施行での治療が中心となり,我々の施設では78.6%,最近2年間に限れば90%近くと大半を占めるようになった.そこで,その有用性・安全性・問題点などを見極めるために,外来ESWLを行った最初の500腎について検討した.対象は1989年3月から1992年1月までに,LithostarでESWLを行った600例636腎のうち,外来のみで治療を行った481例500腎(両側19例)で,性別は男367・女114例,年齢は16〜77歳であった.結石の部位は腎結石227・尿管結石273腎で,結石の大きさは90%以上が長径20mm以下の結石であった1腎あたりの平均治療回数及び衝撃波数は1.4回・6,988発で,全体の74%が1回の治療のみで,3回以上を要したものは9%であった.また,補助的処置を要したのは23腎(D-Jステント留置が5腎,尿管カテーテル挿入が18腎)のみで,474腎(94.8%)は補助的処置なく実施可能であった. 3ヵ月後の治療成績を評価可能であった470腎についてみると,完全排石率は腎結石70.3%・尿管結石84.5%,全体では78.1%と満足すべき結果であった.合併症として,実施帰宅後に疼痛のため当院または近医にて鎮痛処置を受けたものが4.6%,38℃以上の発熱が2.5%などが認められたが重篤なものはなかった.しかし,その実施にあたっては特に術後合併症の可能性についての十分な説明と,慎重な症例の選択が必要と考えられた.
著者
内藤 克輔 久住 治男 鹿子木 基二 加藤 正博 中嶋 和喜 塚原 健治 小林 徹治 黒田 恭一 松原 藤継
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.1019-1031, 1982-08-20

ヒト泌尿器悪性腫瘍の単層培養の研究を行い,3つの腫瘍より上皮性細胞の活発な増殖が認められた。いずれも140継代培養を重ね,細胞株として樹立された。70歳男子および30歳女子のclear cellを主体とした腎細胞癌由来の細胞株はそれぞれKH-39,KN-41,また44歳男子の膀胱移行上皮癌由来の細胞株はKW-103と命名された。これら3株をヌードマウスに異種移植し,移植28日後に100%に腫瘍形成を認めた。KH-39およびKN-41は単層培養細胞と異種移植腫瘍の光顕的,電顕的所見より腎細胞癌由来と考えられた。KW-103もまた光顕的,電顕的所見より膀胱移行上皮癌由来と考えられた。染色体分布は44〜47継代時に行つた。3株共に2個のmaker chromosomesを持ち,hyperdiploidyの核型を示した。種族細胞の染色体数モードはKH-39で58ないし59,KN-41では58ないし59,KW-103では57であつた。marker chromosomeのcentromere indexはKH-39では15.1と22.4,KN-41では15.2と22.7,さらにKW-103では16.2と24.1であつた。重複培養法による増殖曲線より得られたdoubling timeは,KH-39,KN-41およびKW-103ではそれぞれ16.0,20.9,16.0時間であつた。
著者
安本 亮二 浅川 正純 尾崎 祐吉 堀井 明範 梅田 優 田中 重人 森 勝志 西島 高明 山口 哲男 川喜多 順二 西尾 正一 前川 正信
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1765-1768, 1988-11-20
被引用文献数
2

最終濃度3,000μg/mlになるように作成したHPC-PEPを8例に,Saline-PEPを3例に投与し,両群における,1)尿中PEP濃度の経時的推移,2)PEPの血液内への移行,さらに,3)尿中PEP濃度を用いた薬物動態力学的パラメーターの違いを検討した.HPC-PEP法では,尿中PEPの時間的推移は投与後6時間後では61.0μg/ml(15〜90μg/ml),12時間後では16.4μg/ml(0.09〜73μg/ml),1日目では18.3μg/ml(0.3〜105μg/ml),2日目では13.1μg/ml(0.24〜50μg/ml),3日目では6.25μg/ml(0.07〜53μg/ml),4日目以降は平均値0.03μg/ml以下でいずれも測定限界以下であった.一方,Saline-PEPを膀胱内へ注入した場合,投与後3時間後では0.05μg/ml(0.04〜0.06μg/ml)を示したが,それ以降3日目まですべて測定限界値以下であった.薬物動態力学理論で解析すると,Saline-PEP法では半減期が平均4.18時間であるのに対し,HPC-PEP法では平均51.0時間と有意に延長しており,PEPの膀胱内での貯留性が示唆された.以上より,HPC-PEPの膀胱内注入療法は薬物動態の検討より,従来のSaline-PEP法より優れている臨床的に有用な膀胱内注入療法と考える.
著者
吉永 英俊 平田 祐司 藤山 千里 市木 康久 井口 厚司 真崎 善二郎 南里 和成
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.304-307, 1995-02-20
被引用文献数
2

過去6年間に7例の成人巨大尿管症を経験した.年齢は46〜67歳(平均53.7歳)で,すべて女性であった.偶然発見例が4例あり,残り3例はそれぞれ腎盂炎,血尿,嘔気嘔吐で受診した.全例が片側性で,左5例,右2例であった.Pfister-Hendrenの重症度分類でgrade I 1例,grade II 5例,grade III 1例で,grade II以上の6例に再建術(Tapering and Reimplantation)を行った.尿漏などの合併症もなく,術後平均15日目に尿管ステントは抜去した.術後平均観察期間は25.4ヵ月でgrade IIの5例は著明に改善し,grade III 1例は軽度の改善に留まった.成人の場合積極的治療の要否には議論のあるところであるが,上記成績は再建術の有効性を示すものと考えられた.
著者
青 輝昭 内田 豊昭 横山 英二 向井 伸哉 宋 成浩 西村 清志 藤野 淡人 小柴 健
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1404-1410, 1993-08-20
被引用文献数
2 1

膀胱全摘出術後の尿路再建術としてMainz pouch techniqueの変法で尿禁制を保つappendix stomaの手術を10例に施行した.10例中8例は完全に尿禁制を保つことができ,容易に自己導尿を習得できたが,2例はストーマの狭窄のためカテーテル留置を要した.術後観察期間は3〜24ヵ月(平均14.7ヵ月),pouch容量は350〜900ml(平均565ml)であった.1日3〜7回(平均4.4〜5.4回)の自己導尿で,患者の満足も十分得ることができた.Appendix stomaは術式も比較的容易で,手術時間も短時間ですみ,ステープルも不必要であり,ニップルの滑脱の危険もなく,カテーテル挿入も簡単であることから,従来の方法に比して極めて有用な尿路再建術であり,術後のQOLにも十分貢献できる術式であると考えられた.