著者
福井 準之助
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.707-710, 1986-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1

18歳から88歳までの952名の健康女性に対し, 尿失禁についてのアンケートを配布した. 分析の結果, 32%の女性に尿失禁が認められ, 未産婦では19%, 経産婦では41%に尿失禁が存在した. 40歳以後の経産婦では, 尿失禁の発現頻度が40歳未満の女性より有意に高率であった. 閉経, 夜尿の既往, 尿路感染の既往, 排尿症状等の有無と尿失禁との関係を調べたが有意差がなかった. 尿失禁の発生機序はほとんどが腹圧性尿失禁と考えられた.
著者
川西 泰夫 田村 雅人 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1284-1293, 1992-08-20
被引用文献数
3

インポテンスの症例,70例に対して深陰茎背静脈結紮術を施行した.手術によってDICC検査における勃起発現流量,勃起維持流量とも低値となりDICC検査上の改善を認めた、自覚的には70例のうち39例が性交可能となり,塩酸パパベリンによる勃起機能検査では61例で完全な勃起が得られるようになった.しかし,観察期間が長くなるとともにインポテンスが再発し有効率は低下した.インポテンスの再発はDICC検査の推移から他の静脈からのvenous leakageが増大することによるものと考えられた.術後の成績をKaplan-Meier法に準じて累積有効率で評価した.一旦性交可能となった症例も1年以内に約50%が性交不能に陥り,残りの約50%の症例はその後3年目までは性交可能な状態がつづき,50ヵ月では約30%の症例で有効性が保たれた. 深陰茎背静脈結紮術は静脈性インポテンスを完治させるものではなく再発率の高い治療方法である.しかし,重大な副作用を伴わないこと,外来通院で施行可能であること,その手術成績が広範囲な静脈を結紮する手術方法と比較し,遜色がないことから深陰茎背静脈結紮術は静脈性インポテンスに対する第一選択の手術法であると考える.
著者
塩野 裕 岸本 幸一 古田 希 三木 健太 波多野 孝史 五十嵐 宏 大石 幸彦 清田 浩
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.707-709, 2002-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1 2

症例は3歳, 男児. 生下時より左停留精巣を指摘されていたが, 精巣の下降を認めないため, 手術目的に当科を紹介受診された. 左停留精巣の診断で手術行ったところ, 左側に精巣を2個認め多精巣症と診断された. 術中の生検では悪性所見を認めなかったため, 重複精巣を陰嚢皮下に固定し, 手術を終了した. 多精巣症は自験例が本邦21例目であった.
著者
梅田 弘幸 嘉村 康邦 石橋 哲 山口 脩
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.441-444, 1998-03-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18
被引用文献数
3 2

多精巣症は極めて稀な奇形で現在まで約70例が報告されているのみである. 我々は4個の精巣を持つ多精巣症に合併した胎児性癌を経験したので報告する. 多精巣症に合併した悪性腫瘍は5例, また4個の精巣を持つ多精巣症は3例報告されているのみである. 停留精巣や精巣念転などの手術時や他疾患にて泌尿器科受診時に偶然発見されることが多いことを考えると, 泌尿器科受診の機会がなく, 生涯診断されない多精巣症が少なからず存在することが予想される. 多精巣症が高い悪性素因を有するかどうかは明かとなっていないが, 多精巣症は停留精巣を伴うことが多く, また, 停留精巣は精巣腫瘍の発症率が高いことを考えると, 多精巣症は余剰精巣の摘出または生検により, 厳重な経過観察が必要と思われる.
著者
水流 輝彦 影山 進 成田 充弘 岡田 裕作
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.738-741, 2010-09-20

28歳,男性.左陰嚢内無痛性小腫瘤を主訴に受診.身体所見では左精巣上体尾部に無痛性腫瘤を触知し,精巣・精管は正常であった.超音波検査にて精巣実質と等信号の内部均一な径16mmの球状の腫瘤を認めた.左精巣上体腫瘍の診断で陰嚢切開を行った.腫瘍は精巣上体尾部近傍に位置し,精巣白膜のような白い膜で覆われていた.術中迅速標本では悪性変化を認めない精巣組織であり,多精巣症と診断された.精巣上体,精管との交通がなかったため余剰精巣は摘除された.多精巣症は比較的まれな先天奇形であり,文献的には海外も含めると100例以上の報告がある.余剰精巣の手術摘除の適応に関しては一定の見解はない.陰嚢内に余剰精巣が存在する場合は術中の生検所見で異形成を認めた際は摘除が推奨される.余剰精巣が温存された際は慎重に定期的な診察と超音波検査が必要である.しかし,陰嚢外に存在する余剰精巣は悪性化の危険性が高くなるため摘除が必要である.
著者
里見 佳昭 福田 百邦 穂坂 正彦 近藤 猪一郎 吉邑 貞夫 福島 修司 井田 時雄 広川 信 森田 上 古畑 哲彦 熊谷 治巳 塩崎 洋 石塚 栄一 宮井 啓国 仙賀 裕 福岡 洋 佐々木 紘一 公平 昭男 中橋 満
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.853-863, 1988-05-20
被引用文献数
20

1965年1月より1985年12月までの21年間に横浜市立大学病院及びその関連病院に於いて経験した腎癌550例の遠隔成績と予後因子について検討し,次の結論を得た.1. 全症例の生存率は,5年生存率48%,10年生存率36%,15年生存率27%と、術後5年をすぎても長期にわたり死亡する予後不良の癌である.2. 40歳未満の若年者腎癌では術後2年以上経てから死亡する例はなく予後が比較的良好である.3. 予後不良因子としては,発熱,体重減少,食欲不振,全身倦怠などの症状のほか,赤沈亢進,CRP陽性,α_2-globulinの上昇,AL-P上昇,貧血などがあげられた.ツベルクリン反応陰性,LDH上昇,レ線上の腎の石灰化像などは予後不良因子ではなかった.4. 経腰的腎摘除術と経腹的腎摘除術の遠隔成績はほぼ同じであり,症例を選べば手術は経腰的腎摘除術で十分な場合もあると考えた.5. 4分類法のgrade分類は予後を比較的よく反映した.Robsonのstage分類ではstage IとIIの間に差がなく,stage分類法に欠陥あることを指摘した.6. 腎癌にはslow growing typeとrapid growing typeがあり,前者は予後良好であると安心しがちであるが,それは誤りであり,前者は緩慢なる経過を取るだけであり,術後5年経てから転移や死亡症例が多くなり,長期的にはrapid growing typeの症例の生存率に近づくと理解すべきである.
著者
中村 亮
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.172-188, 1961
被引用文献数
10
著者
森 義則 川口 理作 島田 憲次 生駒 文彦
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.1799-1811, 1983-10-20
被引用文献数
2

1974年から1982年までの9年間に兵庫医科大学泌尿器科において,201例の小児泌尿器科疾患,患者に対して内視鏡手術が施行された.その内訳は,後部尿道弁32例,前部尿道弁4例,先天性球部尿道リング状狭窄135例,後天性尿道狭窄16例,膀胱頚部狭窄8例および尿管瘤6例であった.10Charriereまたは13Charriere幼小児切除鏡を使用した.後部尿道弁および前部尿道弁に対しては TURによる弁の切除が施行されたが,結果はきわめて満足すべきものであった.先天性球部尿道リング状狭窄に対しては直視下内尿道切開が施行されたが, VUR,夜尿症,再発性尿路感染の各々に対して良い結果がみとめられた.後天性尿道狭窄のうち瘢痕組織の強いものでは数回の直視下内尿道切開を要したが,ほぼ満足すべき結果であった.膀胱頚部狭窄に対する TURの効果がはっきりみとめられたものはなかったが,これは小児の膀胱頚部狭窄は他の原因による二次的なものがほとんどであるためと思われた.その他尿管瘤に対する内視鏡手術の適応についても述べた.
著者
荒川 孝 久保 星一 真下 節夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.174-182, 1992-02-20
被引用文献数
4

1984年12月から1989年12月までの約5年間に,11例の単腎サンゴ状結石に対し体外衝撃波結石破砕術(以下ESWL)を中心とした結石破砕治療を試みた.8例が結石にて対側の腎摘をうけたかまたは無機能となっており,3例が腎結核にて腎摘をうけている.男性6例,女性5例で平均年齢はそれぞれ60.0歳,48.6歳であった.結石の大きさは,最大がX線写真上85×44mm,最小が30×30mmである.11例中術前にシスチン結石の診断をえている1例に対してのみ経皮的腎結石破砕術(以下PNL)を先行させたが,他の10例はESWLから破砕治療開始とした.ESWLのみで治療しえたものは3例で,他の8例中6例に経皮的腎瘻造設術(以下PCN),2例にPNLがそれぞれ併用となった.3例では明らかな合併症は認めなかったものの,他の8例中7例で38.5℃以上の発熱を見,内2例では,敗血症にまで及んだ.さらに5例では血清クレアチニン値が2.0mg/dl以上に上昇したが,いずれも治療終了後に正常範囲内に回復した.死亡例の経験はなかった.以上のごとく単腎サンゴ状結石においてさえもESWLを中心とした結石破砕治療は可能と思われる.しかしながら,当疾患においては破砕片の尿管への嵌頓が即,急性腎不全,敗血症に直結することが予測されるため,より一層の経過観察が必要と思われる.
著者
岡田 清己 遠藤 克則 野垣 譲二 川田 望 吉田 利夫 佐藤 安男 森田 博人 熊谷 振作 北島 清彰 岸本 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1000-1005, 1986
被引用文献数
1

過去12年半にわたり経験した腎外傷(皮下損傷)122例を集計し,その即時手術の適応に関し検討を加えた.外傷度分類は腎挫傷,軽度腎裂傷,高度腎裂傷,腎断裂傷,腎茎部損傷に分類した.これは術前の臨床症状と画像診断にて分類した群と,術中の手術所見を合わせて分類した群とを比較すると約4分の1は誤謬を生じていた.今後画像診断学の進歩により診断率は高まるものと期待している.今回の臨床的検討より次のことが要約される.腎挫傷は待期療法が選択される.軽度腎裂傷も手術の必要はなく,待期療法で観察することが望ましい.高度腎裂傷の場合,待期療法では腎感染が増悪し,腎障害が進行し,手術の時期を逸してしまうことがある.そのため,即時手術が必要である.腎断裂傷,腎茎部損傷は待期的に観察せずに即時手術を行うべきである.特に重要なことは,高度腎裂傷との診断が得られたら,即時手術を行うことである.
著者
北村 愼治 藤永 卓治 大川 順正 三軒 久義 吉田 利彦 山口 眞司 高田 実 高尾 哲人
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.1324-1332, 1982-10-20
被引用文献数
44

転移性副腎腫瘍の1例を報告した。患者は55歳男性で,約1年半前,肺扁平上皮癌の為,右肺上葉切除術を受けた。その後,微熱と貧血が続き,又,コンピューター断層撮影により左腎上部に腫瘤像がみられた為,当科へ入院した。超音波断層撮影工血管撮影等により,左副腎腫瘍と診断され,左腎・副腎摘出術が施行された。その組織像は,肺原発の転移性副腎腫瘍であつた。転移性副腎腫瘍は,臨床的には見逃される事が多いが,剖検的には比較的高頻度に認められている。そこで著者らは,昭和49年から53年迄の5年間の日本病理剖検輯報に基いて,125,581剖検例中の転移性副腎腫瘍の統計的検討を行ない,特にその原発巣に関して検討を加えた。転移性副腎腫瘍の診断には,画像イメージ診断法が有効である事を強調した。
著者
松田 忠久 斉藤 雅人 阿部 昌弘 橋本 哲也 小林 裕之 渡辺 泱
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1417-1422, 1987-08-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

1982年6月から1985年10月までに, 京都府立医科大学泌尿器科学教室を受診した腎腫瘤症例で, 腹部CT, 腎超音波検査, 腎血管造影などにて診断が確定し得なかった10例に対して, 選択的腎生検を施行した.選択的腎生検にて得られた組織診断は, 腎細胞癌6例, 乳頭状腎細胞癌1例, 移行上皮癌1例, 血管筋脂肪腫1例, 膜性増殖性糸球体腎炎1例で, それにより各々の症例の治療のために極めて重要な情報が得られた. また生検を契機とした腫瘍細胞の播種をはじめとした合併症は, 認められなかった.よって腎腫瘍に対する選択的腎生検は, 従来の諸検査では診断できなかった腎腫瘍の診断に非常に有用であると思われた.
著者
東原 英二 奴田原 紀久雄
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1545-1560, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
148

常染色体優性遺伝嚢胞腎 (ADPKD) は進行性の腎機能低下が主要な病態であるが, その予後は従来いわれているように「診断後10年で腎不全に到る」ものでもなく, 腎不全が不可避でもない. 本邦での透析導入時平均年齢は52~56歳であるが, 透析に移行しない者も含めると, おおよそ平均73歳で終末期腎不全に到る. 60歳代で透析を受ける割合は約40%であり, 本邦のADPKDの予後は欧米よりも若干良好である可能性がある.ADPKDの遺伝子は第16染色体の短腕上のα-globin 遺伝子の近くに存在することが確かめられている. この遺伝子 (PKD1) によるADPKDと, PKD1の関与が証明定れないADPDKでは, 腎機能の予後が異なることが報告定れている.高血圧は約60%に認められる. 嚢胞の圧迫によって腎動脈が狭細化し, レニン―アンギオテンシン―アルドステロン系が刺激定れることが高血圧発症の端緒であり, 片側性腎血管性高血圧と異なり両腎が侵されているので, 圧Na利尿がおこらず, Naが体内に貯留し高血圧となると考えられている.肝嚢胞の合併頻度は57%で高齢になるに従い増大し, 肝嚢胞の有る者ほど腎機能は悪い. 肝嚢胞と膵嚢胞 (7%) の合併は有意に相関する. 経皮的嚢胞穿刺を行っても腎機能は改善せず, 出血や感染などの合併症もあるので激しい疼痛や管理の困難な感染の治療を目的とする以外は実施すべきではないと考えられる. その他ADPKDには, 腎結石 (10~18%), 大腸憩室 (80%), 頭蓋内動脈瘤 (8%), 心臓弁膜の閉鎖不全 (20~30%) などの合併症がある.
著者
白井 將文 滝本 至得 石井 延久 岩本 晃明
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.666-673, 2001-11-20
被引用文献数
3 1

(目的)われわれはEDが生活にもたらす影響やEDに関する受療行動とその阻害要因等について明らかにするため,一般市民に対してアンケート調査を実施した.(対象と方法)2000年4月,全国の30〜79歳の既婚男女を対象に郵送でアンケートを実施し,男性2,034人(回収率37%),女性1,820人(同38%)より回答を得た.(結果)男性回答者のうち29.9%がEDであることを自覚しており,また女性回答者のうち夫のEDを認識している割合は30.1%であった.これらの男女では,性交回数の減少や性生活に対する満足度が低く,EDの男性では23.6%が,またEDの夫を持つ女性の16%が夫婦生活に影響をもたらしていると答えている.しかし,これらED男性のうち医療機関に相談した者はわずか4.8%であった.このように医療機関を訪れない理由をみると「日常生活にさほど影響がない」「困ったことがない」「セックスに関心がない」などの回答が多くを占め,また受療阻害要因として「恥ずかしい」「どこの病院に行ったらよいかわからない」「費用が高い」などが多かった.最後に,EDに対する保険適用については「制限つきで保険適用すべき」を含め,男女ともに80%以上がED治療に対し何らかの保険適用をすべきと考えていることが判った.(結論)EDはかなりの頻度で認められたが,適切な治療を受けている者はわずか4.8%であった.一方,80%以上の男女がED治療に保険を適用すべきと考えていることが判明した.
著者
仲野 正博 松嵜 理登 成田 伸太郎 渡辺 淳一 森川 弘史 村田 浩克 小田 裕之 小松 秀樹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.11-16, 2005-01-20
被引用文献数
1 3

(目的)恥骨後式前立腺全摘除術における硬膜外麻酔併用腰椎麻酔(硬麻併用腰椎麻酔)の有用性を検討した.(対象と方法)2003年7月より2004年2月までの間に硬麻併用腰椎麻酔下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例を対象とした. 2002年4月より同年12月までの間に硬膜外麻酔併用全身麻酔(硬麻併用全身麻酔)下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例と比較した.純粋な麻酔による影響のみを検討するために,術中合併症のあった症例が含まれない様に期間を設定した.手術は全例,同一術者が行った.(結果)出血量は,硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に少なかった(p=0.024).術後平均飲水開始日は,硬麻併用腰椎麻酔下群は0.4日,硬麻併用全身麻酔下群は1.1日であった(p<0.0001).術後平均食事開始日は,硬麻併用腰椎麻酔下群はO.7日,硬麻併用全身麻酔下群は1.5日であった(p<0.0001).術中平均血圧の最高値は硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に低かった(p=0.002).(結論)硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は,硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘除術と比較して術中の出血量が少なく,血圧変動が小さかった.また,術後腸蠕動の回復が早かった.硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は,術中出血量の減少と術後早期回復が期待でき,全身麻酔関連の合併症が予防できることなどから硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘徐術より利点が多いと考える.