著者
関根 昭一 桜井 叢人 伊藤 本男
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.1402-1405, 1995-08-20

尿管扁平上皮癌の1例を報告した.患者は62歳の主婦で, 31歳のとき尿路結核のために左腎摘除術, 右尿管皮膚瘻術をうけ, 定期的に尿管カテーテルの交換に通院していた.1994年3月8日, 尿管狭窄のためカテーテル交換が不能になり緊急に右腎瘻術に変更した.その3カ月後, 以前尿管ストーマがあった部位に圧痛と硬結があらわれたので切除したところ組織学的に扁平上皮癌と診断された.姑息的ではあったが, 右尿管摘除術を行った.しかし周囲臓器への浸潤のため一部を切除したに止まった.ペプロマイシンとUFTを投与したが効果はみられず, 患者の容態は徐々に悪化している.尿管皮膚癌術後に扁平上皮癌が尿管に発生することは稀で, 自験例では慢性的な感染とカテーテルの刺激が発生要因になったものと考えられる.
著者
野口 正典 松岡 啓 野田 進士 江藤 耕作
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.1154-1160, 1984-07-20
被引用文献数
3

陰嚢奇形そのものは少なく、また、その中でも会陰部副陰嚢と呼ばれる陰嚢奇形は非常に稀である。われわれは、不完全型陰茎前位陰嚢を合併した会陰部副陰嚢の1例を経験したので、報告する。症例は、3歳の男児で身長96.4cm、体重16.6kg、栄養状態良好、正常な発育を呈しており、1983年2月14日、外性器の異常を訴え当科へ入院した。会陰部左側に陰嚢様の腫瘤を認めた。縫線は陰茎、陰嚢では正常な位置に認め、会陰部腫瘤の右側を囲むような走行であった。両側の睾丸は腫瘤前方のそれぞれの陰嚢内に認めた。また、不完全型陰茎前位陰嚢の合併も認められた。染色体検査、排泄性腎孟造影、尿道膀胱造影などを含めた臨床検査所見に異常所見は認められなかった。1983年2月25日、Glenn-Andersonの方法に準じた陰嚢形成術、ならびに会陰部副陰嚢切除術を施行した。病理組織学的に、摘出物は正常陰嚢皮膚と診断された。術後経過良好で満足すべき結果が得られた。会陰部副陰嚢に関して、現在までに報告された7例を集計し、若干の文献的考察を加えた。会陰部正中線上の副陰嚢は陰唇陰嚢ひだの三重発生の結果であり、また会陰部左側の副陰嚢は陰唇陰嚢ひだの二重分割後の異常移動によるものと想像した。
著者
森田 隆
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.52-60, 1991-01-20
被引用文献数
1

糖尿病にみられる膀胱機能障害は,末梢神経障害に起因する。膀胱の収縮には副交感神経ムスカリン受容体が重要な役割を演じているため,私は,Streptozotocinの静注により発症させた糖尿病ラット膀胱において,ムスカリン受容体の特性を調べ,正常膀胱と比較した。^3H-QNBで標識される膀胱ムスカリン受容体の量は糖尿病群では対照群に比し有意に多いことが判明したが,^3H-QNBの解離定数は両群とも同様であった。ムスカリン受容体刺激剤や抑制薬剤は,^3H-QNBの結合を抑制したが,抑制定数は糖尿病群と対照群で同様であり,強さの順番はbethanechol>pirenzepine>carbamylcholine>acetylcholine>atropineであった。これらの事実は,ラット膀胱のムスカリン受容体のサブタイプはM1ではないであろうこと,糖尿病時にはムスカリン受容体の量が増えることを示唆している。ムスカリン受容体刺激剤は対照群に比べ,糖尿病群で膀胱体部muscle stripの有意に欠きた収縮反応を引き起こした。ED_50値の順番は糖尿病群,対照群ともbethanechol>carbamylcholine>acetylcholineであり,抑制定数の結果とよく一致していた。この結果は,糖尿病ラット膀胱のムスカリン受容体の生化学的変化と直接的に関連することを示している。
著者
吉川 慎一 金 泰正 吉田 哲也 米瀬 淳二 泉谷 敏文 福井 巌 石川 雄一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.788-791, 1998-09-20
被引用文献数
2

症例は44歳,男性.尿閉を主訴に某院に入院.CTにて膀胱内に突出する前立腺部腫瘤が経尿道的生検にて移行上皮癌(TCC)と判明し紹介された.初診時,陰茎は半勃起状態,全周性に弾性硬で自発痛と高度な圧痛を伴いpriapismと診断した.陰茎海綿体針生検を施行し,前立腺移行上皮癌T4N0M1(陰茎転移)と診断した.4者併用化学療法(IFEP療法)を2コース施行し,平成9年1月30日膀胱全摘術・陰茎全摘術及び回腸導管造設術を施行した.病理学的には前立腺浸潤と陰茎海綿体及び右閉鎖リンパ節転移を伴う膀胱原発の移行上皮癌で,前立腺の腫大は主に腺性過形成によるもので異型性過形成を伴っていた.
著者
大橋 伸生 斯波 光生 上谷 恭一郎 高村 孝夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.639-646, 1971

1) Seventy days peritoneal dialysis was performed for seven months in a thirty year old woman who was suffering from acute renal failure following 'cold wave' neutralizer (potassium bromate) poisoning. After twenty two days of total anuria and twenty days of oliguria, urine flow resumed and creatinine clearance increased to a level of 6.5ml/min. on the one hundred and twenty-ninth day. However, she needed periodic peritoneal dialysis. Mental disorder (schizophrenia) found out since the fourtieth day and loss of hearing disturbed the treatment. Finally she died of chronic renal failure on the two hundred and seventh day at a mental hospital. 2) Thirteen cases of potassium bromate poisoning were reported in Japan and seven cases died of renal failure (mortality rate, 54%). 3) Eight cases among fourteen survivors with prolonged oliguria for more than three weeks recovered renal function sufficient to maintain usual life.
著者
小川 由英
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.1553-1558, 1981-12-20

キシリトール大量輸液により蓚酸カルシウム結晶が組織に沈着することが報告され,キシリトールが蓚酸代謝に関係することが示唆された.蓚酸カルシウム結石群12人と対照群7人にキシリトールを投与し,蓚酸代謝を調べる目的で尿中及び血漿蓚酸を測定した.10時間空腹状態とした患者に5%キシリトール500mlを2時間で点滴したところ,尿中蓚酸排泄は直ちに増加した.キシリトール点滴開始より3時間での尿中蓚酸排泄量の増加は結石群が2.92±1.59mg(SD)で,対照群が2.25±1.48mg(SD)であった.一方尿中蓚酸濃度は点滴中は低下し,点滴終了後は上昇した.キシリトール投与前の血漿蓚酸値は結石群が2.64±0.43mg/lで,対照群が2.29±0.92mg/lであった.キシリトール負荷終了時の血漿蓚酸値は結石群が2.64±0.62mg/lで,対照群が2.81±0.56mg/lであった.キシリトール負荷試験の結果より結石群と対照群の間に蓚酸代謝上の相違は認められなかった.
著者
永松 秀樹 筧 龍二 平賀 聖悟 加藤 幹雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.996-1002, 1987-06-20

過去3年間に当科で経験した神経因性膀胱70症例につき治療経過を中心に検討を加えた.対象の年齢は13歳から87歳(平均58.4歳),男女比2.2:1で,発症後6ヵ月以上経過していた例が約半数を占めた.神経因性膀胱の分類は,脳膀胱16例,脊髄膀胱25例,末梢神経障害膀胱21例,その他および不明8例であり,原因疾患は骨盤内手術,脳血管障害,脊髄損傷の順に多かった.初診時の泌尿器科的合併症は,尿路感染27例,前立腺肥大症12例,腎機能障害および尿道カルンクルス各3例などで,その他61%に残尿を認めた.膀胱内圧曲線の分類は,弛緩型膀胱48例(69%),正常型7例,無抑制膀胱6例,痙性膀胱5例,いわゆる抑制膀胱と無緊張性膀胱各2例であった.治療法は保存療法単独63例(90%),手術療法併用7例(10%)で,保存療法では薬物療法を69例に施行し,残尿のみられた例では,自己導尿を主体とする間歌的導尿を30例に併用した.手術はTUR-P 5例,膀胱瘻造設2例で,うち1例にLapides' cutaneousvesicostomyを施行した.間歇的導尿例の平均残尿量は治療前205ml,治療後84ml,平均残尿率は治療前56.5%,治療後28.9%で共に有意(p<0.001)の改善を認めた.また,薬物療法と間歇的導尿法でカテーテルフリーとなったものは13例(43%)で,保存療法単独でも残尿の減少と尿路感染の消失に有効であったが,カテーテルフリーを目標とすれば十分な成績とはいえなかった.
著者
白井 純宏 川上 茂生 吉田 正貴 上田 昭一 中村 武利 本田 由美
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.847-850, 1999-10-20
被引用文献数
3 1

透析患者に合併した膀胱肉腫様癌の1例を経験したので報告する.症例は65歳女性.平成8年3月,慢性糸球体腎炎による腎不全のため血液透析導入となった.平成9年6月より肉眼的血尿が出現し,膀胱鏡検査にて右側壁から後壁にかけて広範囲に隆起性病変を認め,TUR-Btによる病理組織診はsarcomaであった.臨床病期T3bN0M0,StageIIIの診断にて同年9月10日,膀胱子宮全摘術を施行した.最終的な病理組織診断は移行上皮癌(Grade3)の成分と異型紡錘形細胞の増殖をみる肉腫様の部分とで構成された肉腫様癌(sarcomatoid carcinoma)であった.透析患者に合併した膀胱原発の肉腫様癌は極めて稀であり,調べ得た限りでは本症例は本邦2例日である.
著者
郷 秀人
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1675-1680, 1993-09-20
被引用文献数
12 11

1992年1月から11月にかけ,副腎腫瘍患者8例に対し,腹腔鏡下に副腎摘除術を施行した.右側2例,左側6例で,内分泌非活性腫瘍の1例を除き残り7例はいずれも原発性アルドステロン症であった.術前画像診断による腫瘍の大きさは,10〜20mmと比較的小さいものばかりであった.手術は,5ないし6本のトロッカーを刺入し行った.全例患側副腎を摘除することができた.手術時間は2時間45分から9時間32分(平均4時間53分)であった.術中重篤な合併症はなく,出血も平均207mlと少なく,輸血を必要とした症例はなかった.術後の回復は開放性手術に比べ,かなり早く,順調であれば,第1病日に経口摂取し,遅くとも第3病日までには歩行を開始した.ある程度腹腔鏡操作に慣れていれば,本術式は安全に行える手技であり,患者への侵襲も少なく,非常に有効な方法と思われた.
著者
菅野 理 平野 順治 平野 和彦 久保田 洋子 沼沢 和夫 川村 俊三
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.523-527, 1984

悪性褐色細胞腫に2年6ヵ月間ラベタロールを投与し血圧を良好にコントロールできた1症例を報告する。患者は35歳男性で、末梢冷感、発汗発作、頭痛を主訴に1980年8月9日入院した。術前検査はNora-drenarineのみが高値で、かつ遠隔転移が確認されず、異所性良性褐色細胞腫と診断し手術を施行したが、摘出不可能であった。そこで術後よりLabetalolを投与し、血圧のコントロールを行っていたが、1年3ヵ月後に肺及び骨転移をきたし悪性褐色細胞腫と診断した。Endoxan、Aclacinon、Vincristineによる化学療法で、肺転移巣は6ヵ月間不変であったが、その後増悪し、D1Cを合併し1983年3月15日死亡した。褐色細胞腫の血圧のコントロールにLabetalolは有効であると考えられた。
著者
宮林 慶介
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.421-432, 1931-08

Um die Tatsache zu beweissen, dass die ganze subepitheliale Bindegewebeschichten der harnableitende-Organen nach der intravenosen Karmininjection moglichst fruhzeitig, wie Tepeloff und Schuchow behauptet, als allen Bindegewebsteile anderer Organen durch Kalminmasse diffuso Imbibition zeigen kann, und dass diese Karminimbibition nicht von solchen Karminmasse, welche durch den Harnwegenschleimhaut aus der Harnwegenlumen ruckresorbierte Karminmaase bedingt, wie Schuchow zeigt, sondern bloss durch vasculare Zirculation beschaffnete Karminmasse bedingt ist. Nach eingehender experimentelle Untersuchung zeigt der Schluss wie folgt. (1). Schon 5 Minuten nach der intravenosen Karmininjection in der Kaninehenohrvenen bemerkt man deutlich ausgepragte, blassrosa bis rotliche, diffuse Karminfarbung der subepithelialen Bindegewebsschichten der Ureter. Harnblaso, Urethra, Nierenbecken; babei findet man noch keine deutliche Karminfarbung in der Subepithelialen oder interstitiellen anderer Organen. Diese Rotfarbung crleicht GO' -120' nach der Injection an die hochsten Punkt und danach allmahlich sich ausgeht. (2). Granulare Karminspeicherung der ganzen reticulo-endothelialen Systeme, Hiscyociten und Epithelien treten sehr spats nach diesen diffusen Karminfarbuug auf. (3). Diese diffuse Karminfarbung der subepithelialen Bindegewebsschichten ganzen Haruabeitende-Organen bedingt nicht durch die aus der Niere sezernierten Karminmasse, sondern bloss durch vascularen Zirculation beschaffnete Farbstoffe. (4). Die Schleimhaut-Epithelzellen ganzen Harnableitende-Organen werden von der Karminmasse in der Harnwegelumen, welche nicht nur aus der Niere sezernierte, sondern in der Lumen injizierten, nicht gefarbt, solange sie Vitalen Tatigkeit ethalten.
著者
波戸 定吉 小室 秀一郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.85-99, 1934-02

Bis-heute wurden als Kontrastimittel bei intravennoser Pyelographie Uroselectan B, Abrodil, und Perabrobil u. a. m. abgewadt. Bedauerlicherweise waren jedoch die Verbrauchskosten zu hoch. Neuerdings hat nun Dr. Y. Sugii, Assistent-Professor an der kaiserl. Universitatsklinik zu Tokyo ein neues Sohattenmittel hergestellt, welches unter dem Namen. "Sugiuron", in den Handel gekommen ist. Um uber die Wirkung des Mittel bei praktischer Anwendung sicher zu sein wurde es an 1O Fallen vor dem offentlichen Verkauf versucht. Die Versuchsfalle sind folgende: