- 著者
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長谷場 徹也
伊藤 代次郎
- 出版者
- The Society of Agricultural Meteorology of Japan
- 雑誌
- 農業気象 (ISSN:00218588)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.3, pp.269-277, 1982-12-10 (Released:2010-02-25)
- 参考文献数
- 28
- 被引用文献数
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葉の熱収支式を解いて, 葉温と気温もしくは相対湿度との関係を求めた。この際, 熱及び水蒸気の葉面境界層輸送係数には, 浮力, 葉面温度分布, 群落内気流の乱れ及び葉の揺れの効果を考慮した。また, 気孔開度は, 日射量, 気温及び相対湿度の関数として与えた。気孔開度が日射量によるとともに気温の上昇に伴って飽和曲線的に大きくなる場合に, 気温が低いと葉温は比較的高いが, 湿度が一定で気温が上昇すると, 葉気温差はほぼ直線的に小さくなって, ある気温で葉温は気温と等しくなり, それ以上の気温で葉温は気温より低くなる。この“equality ternperature”は日射が強く相対湿度が高くまた風が弱いほど高くなる。さらに, equality temperature は作物の生まれた土地の温度条件に関連する遺伝的特性としてきまること, ならびに, equality ternperature は光合成の適温に重要な意味を持つことが示唆された。気孔開度は日射量と気温とに依存するが, 相対湿度に対しては一定の場合, 高湿になるに従い, 葉温は直線的に上昇する。次に, 気孔が低湿時に開く場合も, 葉温は湿度の上昇に伴ってほぼ直線的に上昇するが, 高湿時には気孔が相対的に閉じて葉温はやや高くなる。低湿時に, 気孔が閉じる場合には, 葉温は相対的に高くなる。実測値から得られた葉温と各気象要素とのそれぞれの関係は葉の熱収支のシミュレーションの結果とほぼ一致した。