著者
鈴木 宜之 薄倉 淳子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.884-887, 1999-11-05

少数多体系は粒子の種類, 相互作用によって個性豊かな性質を示す. ランダムに抽出されたサンプル(基底関数)の中から最適なものを選ぶ, 即ちくじ引で当たりくじを拾うstochasticな変分計算によって, 少数系の束縛解を高精度で得ることができる. この簡単な処方箋を紹介し, 回転運動を表すグローバルベクトルと組み合わせた相関ガウス基底を用いた応用例や, ポジトロニウム分子の励起状態に関する新たな結果について報告する.
著者
秋葉 圭一郎 上妻 幹旺
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.89-93, 2010-02-05

光子は最も速く伝播し堅牢な量子情報のキャリアであるが,光子を止めることができないことから,情報処理を行うにあたって光子の量子メモリが必要となる.我々は量子情報処理において多用されているパラメトリック下方変換光を電磁誘起透明化により冷却原子集団に保存し再生することに成功し,またその際の非古典性の保持を確認した.本稿ではこの実験について紹介する.
著者
粕谷 伸太 川崎 雅裕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.666-668, 2002-09-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
10

近年になって再び,Qボールと呼ばれるノントポロジカル・ソリトンが注目されるようになった.それは,超対称性標準模型の中に自然に組み込まれ,宇宙のバリオン数と暗黒物質を同時に説明できる可能性が示唆されたからである.ここでは,この枠組がどのようにうまくいっているのか,また,観測(実験)と矛盾がないのか,について述べる.
著者
伊藤 直紀 須藤 靖 北山 哲
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.349-357, 2004-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
36

Galaxy clusters have been observed mainly in the optical and X-ray regions, and played an important role in probing the universe in addition to the cosmic microwave background (CMB) and the three-dimensional distribution of galaxies. In recent years, another method of observing galaxy clusters in mm and sub-mm bands, the Sunyaev-Zel'dovich (SZ) effect, has made significant progress. This is based on the inverse Compton scattering off the CMB photons due to the high-temperature intracluster gas, which was proposed in early 1970's. This method has a remarkable advantage that the observed flux is independent of the distance to the cluster. Recent significant progress in detectors promises that the SZ effect will indeed lead the cluster observation in this decade. This article presents a summary of the past and the present researches in the SZ effect and discusses the future prospects, with particular emphasis on theoretical and observational achievements in Japan.
著者
益田 義賀
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.323-331, 1996-05-05

ここに古ぼけた一枚の写真がある(図1). 1954年7月3日付の読売新聞の複写である. "第二群像"という特集記事で, 「汗ダクで零下273度を創る」と題して「東北大学金属材料研究所極超低温グループがクロムカリ明バンの断熱消磁によって, この世ならぬ極超低温の異常世界で起こる興味深いいろんな珍現象を追及しはじめた.」と面白おかしく報じている. 日本の新聞記事に絶対零度が現れたのは, おそらくこれが最初であろう. 写真には, 日本の低温物理を背負って立つことになる, 30歳になるやならずの連中の顔が並んでいる. 日本の低温研究の夜明けである.
著者
長野 正道
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-830, 2002-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1

多数のリミットサイクル振動子について,それらの"振動運動を記述する変数の一部を個々の振動子の変数の線形結合で置き換える"という,振動子間結合による「新しい」リズム同期化法を見出した.この振動子間結合の方法は,粘菌細胞の生体センサーである受容体が持つ機能を数学的に一般化することにより得られた.