著者
会誌編集委員会
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.80-80, 2017-02-05 (Released:2018-02-05)

物理学70の不思議素粒子の世代はどこまでもくり返すのか?
著者
黒田 登志雄 横山 悦郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.541-548, 1990-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
25
被引用文献数
1

雲の中の過冷却水滴の凍結によって球形の氷単結晶がまずつくられ, そこから雪の形態形成が開始される. その後の成長にともなって, 球から六角プリズムへ, さらには複雑な樹枝状形態へと時々刻々と新しい形がつくりだされるしくみをシミュレーションを交えて考察する. また, 氷結晶の表面融解が雪の晶癖変化や気相成長機構にどのように関連しているかを示す. さらに, 土の凍結によって地面が数10cmも隆起する凍上現象に土粒子と氷結晶の間に存在する擬似液体層が重要な役割を果たしていることにも言及する. これらの問題は, 非線形非平衡な系における形態形成の動力学の観点から, あるいは表面・界面物理の新しい問題として重要である.
著者
鳥居 祥二 槙野 文命
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.8-16, 2001-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
20

宇宙線の研究は,粒子の生成・消滅という素粒子物理学または原子核物理学と,粒子の加速・伝播という宇宙物理学の視点から行われている.観測される宇宙線の組成やスペクトルは両者が複雑に絡み合った現象である.広いエネルギー領域で多種類の粒子の識別とエネルギーの決定を行う必要があり,様々な検出器が考案されて,地上および気球,人工衛星による観測が実施されている.国際協力で建設が進められている宇宙ステーションは,各国が宇宙空間に露出した宇宙線観測に適したサイトを準備しており,特色ある観測装置の搭載が計画されている.本稿ではこれらの装置の概要とその観測計画について解説する.
著者
福島 正己 吉田 滋
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.924-932, 2000-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
21

地球に降り注ぐ宇宙線には極めてエネルギーの高いものがあって,1020電子ボルトを超えるものが,これまでに8例発見されている.超高エネルギーの宇宙線は,3Kの背景放射に遮蔽されて3億光年より長い距離を伝播することはできないから,これらの宇宙線は銀河系近傍の天体で加速されたと考えるのが自然であるが,その到来方向には加速源となる高エネルギーの天体が見つからない.この矛盾を説明するために,宇宙紐,磁気単極子,寿命の長い超重粒子などの崩壊による2次粒子起源説,あるいは特殊相対論の破れなど,宇宙論や素粒子論に関連した仮説が提案されている.宇宙線望遠鏡(Te1escope Array)計画は,米国ユタ州の砂漠に空気シャワーの発生する大気蛍光を検出する反射望遠鏡群を設置し,数万平方キロの領域に到来する超高エネルギーの宇宙線を観測する.これによって宇宙線のエネルギー・到来方向・粒子種を精密に決定し,超高エネルギー宇宙線の発生起源解明を目指す.
著者
金 信弘 増渕 達也
出版者
日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.440-444, 2009-06

米国フェルミ国立加速器研究所の陽子反陽子衝突型加速器テバトロンを用いて行われている大型国際共同実験CDFとD0でのヒッグス粒子探索の結果と今後の展望について報告する.The CDF and Dzero experiments at Tevatron protonantiproton collider at Fermi National Accelerator Laboratory in Batavia, Illinois, USA, have recently set the upper limit of the Higgs particle mass to 185GeV/c^2 by measuring the top quark mass and the W boson mass precisely. They have also excluded the existence of the Higgs particle with a mass of 170GeV/c^2 at 95% confidence level through direct search for the Higgs particle. The Tevatron experiment will have two or three times more data of which analyses will make the allowed Higgs mass region narrower and may result in finding evidence for Higgs particle production.
著者
板倉 数記
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.148-156, 2004-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
21

「陽子は3つのクォークからできている」という一般的な"常識"は,強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に根差した現在の理解からすると,甚だ曖昧で不正確なものである.実際,非常に高いエネルギーでの散乱で弱結合理論になるQCDは,この素朴な"常識"からはほど遠い陽子の姿を予言する.すなわち,高エネルギーの極限では,陽子は「グルオン」というクォークとは異なる構成要素が高密度に飽和した状態になり,この現象は陽子に限らず,如何なるハドロン(陽子,中性子などのバリオンと中間子の総称)にも,原子核にも現れる普遍的なものである.この状態は,あたかもガラスのようにゆっくりと変化するランダムな「色」の荷電分布を背景にして,「色」を持つグルオンがボーズ凝縮のように高密度に凝集したものであるので,「カラーグラス凝縮」と呼ばれている.本橋では,この「カラーグラス凝縮」の生成過程と性質,記述方法,実験的証拠の有無などについて,最近の理論的発展を解説する.
著者
大槻 勤
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.551-554, 2005-07-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17

β崩壊の一つの形式である軌道電子捕獲崩壊[Electron Capture (EC)崩壊]核種の半減期は物理的・化学的環境をパラメータ(化学形, 圧力, 温度等の関数)としてどのように変化するか?これはSegreらが1947年に提唱した古くからの問題である.しかし, 環境の変化が半減期に最も影響しやすいと予想されるEC崩壊核種7Beでも, わずかな半減期の変化(0.15%程度)の報告がなされているにすぎなかった.特殊な内部環境を持つとされるフラーレン(C60)に7Beを内包させた試料と, 金属ベリリウム(Be metal)中に7Beをドープした試料を用いて半減期の比較測定を行った.7Beの半減期はBe metal中よりもC60中の方が0.83%程度短くなることが分かった.本稿では実験概要と結果を考察を含めて紹介する.
著者
梶村 皓二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.288-293, 1991-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
40

低温STM/STSが開発されたことによって, Giaever以来行われてきた超伝導体のトンネル分光法が原子スケールの空間的分解能という新機能を得た. この手法により, 超伝導体に侵入した磁束量子の渦糸(Vortex)内の素励起と酸化物超伝導体の異方的な局所状態密度が初めて明らかにされた. 一方, STMはその原理から絶縁性有機物質に適用するのは難しいと思われているにもかかわらず, 導電性基板表面に吸着・固定させて原子・分子配列の構造観察が行われ, DNAの塩基配列解読への挑戦にまで及んでいる. STM像が得られる機構についても考察する.
著者
松永 是
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.227-232, 1990-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
22
被引用文献数
2

最近, 各種の生物に磁性物質が含まれていることが明らかにされ, 種々な分野にわたって研究が進められている. 生物が合成する磁気微粒子の生成機構については, いまだに解明されていないが, 様々なキャラクタリゼーションが行われている. その結果によると, 磁気微粒子は単磁区構造を示し, その大きさも50~150 nmと小さく, さらにそのまわりは有機薄膜で覆われていることがこれまでに確認された. ここでは「生物と磁石」について動物および微生物で得られた知見を紹介し, さらに特に研究が盛んに行われている走磁性細菌について, その磁気微粒子の抽出法, キャラクタリゼーション, およびその応用について述べる.
著者
鹿児島 誠一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.249-256, 1990-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27

臨界温度はまだ10K程度にすぎないが, 酸化物高温超伝導体と並んで, 科学的・技術的な可能性を秘めているのが有機物の超伝導体である. そもそも有機物を相手として超伝導を調べるねらいは何なのか, また, 他の超伝導体と比べてどのような新しい知見が得られているのか, 酸化物高温超伝導体との比較も含めて, 有機超伝導の研究の現状と展望を紹介する.
著者
富田 憲一 渡辺 秀治 丸山 貴昭
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.430-434, 2011-06-05
参考文献数
12

共鳴Hartree-Fock法は,フェルミ粒子系の波動関数を非直交スレーター行列式の重ね合わせで構築し,全行列式の軌道を最適化することで大きな多体効果を取り込む.同時に,スレーター行列式の構造から量子揺らぎを視覚化し,複雑な量子多体効果の背後にある物理を浮き上がらせる.複数の分野で利用されている本手法の概要と2次元ハバードモデルに適用した結果について報告する.
著者
中村 卓史
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.448-455, 1995

最近キロメートルサイズの本格的なレーザー干渉計型の重力波検出器の建設がはじまり,2000年頃には3台以上が稼働しはじめて,重力波の本格的な観測体制がスタートする.ここでは,最も有望な重力波の源と考えられている連星中性子星の合体に焦点を絞って,歴史的経過を含めて易しく解説する.
著者
福島 正己
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.20-27, 2005-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31

1020電子ボルト(eV)を超える巨大なエネルギーを持った素粒子が宇宙から飛来し,AGASAやHiResなどの空気シャワー観測装置で検出されている.これらの宇宙線は銀河系外の高エネルギー天体で発生し,長距離の宇宙空間を伝播して地球に到達したと考えられるが,到来方向には起源となる候補天体が見当たらず,その起源は謎である.またAGASAによる観測は,宇宙背景放射との衝突から期待されるエネルギー限界を超えてスペクトラムが続いていることを示しているが,HiResの観測はエネルギー限界の存在とほぼ一致している.「極高エネルギーの宇宙線は何処で生まれるのか」,「宇宙線のエネルギーに限界はあるか」を巡って続く議論に終止符を打つべく,大規模な観測装置の建設が南米アルゼンチンと米国ユタ州で始まった.宇宙ステーションからの観測も計画されている.新たな観測によって,極高エネルギー宇宙線の発生起源と伝播機構が解明され,標準的な素粒子と天体の理論を超える新たな物理への糸口となることが期待される.
著者
山本 喜久
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.928-934, 2005-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31

本稿では, 物理学と工学の境界領域で量子力学が本質的な役割を演じ, そして成功を収めたいくつかの事例を取り上げる.具体的には, 核磁気共鳴, レーザー, 量子情報, の3つの分野を概観する.この3つの分野に着目したのには2つの理由がある.その第一は, 過去60年にわたって, 時系列的に発展してきたこれら3つの分野の基本概念・原理には驚くほど共通するものが多いことである.第二の理由は, これらの分野で基礎研究から応用へ至る道筋で, 新しい時代を切り開いてきた研究者間のバトンタッチのあり様にも, やはり共通したものがあり興味深いからである.
著者
松永 義夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.26-33, 1976-01-05 (Released:2008-04-14)

元素を組み合せることによって, 無機固体の種類が著しくふえ, 新しい物性が出現するように, 分子を構成単位とする化合物, すなわち分子化合物を取上げることによって, 分子性結晶の分野は大きく拡げられる. その主体は電荷移動型と呼ばれるタイプに属し, 成分分子を選ぶことによりイオン性, 共有結合性, 更には金属性を帯びた結晶さえ得ることができる. また, 水素結合や陽子移動の要素を共存させると, 顕著に性質の異なる多形, 甚だしい物性の変化を伴う相転移を作り出す可能性も開ける.