著者
南部 陽一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.452-460, 1973

おことわり : この小文の読者は見なれない日本語の術語に出くわして当惑されるかも知れないがこれは筆者が意識的に試みたことである. 将来研究者がこの方面にもっと関心を払い, 自然淘汰の結果, 生の外国語に代る適当な術語が多く通用するようになれば幸いである.
著者
鈴木 洋一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.203-207, 2005

2004年のスーパーカミオカンデのハイライトは, 大気ニュートリノ振動の振動パターンの確認である.また, 大気, 太陽ニュートリノともに, SK-I(96年4月から2001年7月)の最終結果のまとめを行った.以下では主にニュートリノ振動に関連する最近の結果, SK-II(2002年10月から)の現状, そしてSK-III(2005年に予定されている全面復旧後の測定器)の準備状況を報告する.
著者
南方 久和
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.743-749, 1998-10-05

最近スーパーカミオカンデ実験グループによってニュートリノ振動現象の証拠が発見された. これはニュートリノという粒子が質量をもつことを意味し, 弱い相互作用に関する大発見にとどまらず, 素粒子の標準模型の彼方を初めてプローブした画期的成果である. 本稿では, この発見に導いた宇宙・天体起源のニュートリノ観測におけるニュートリノ振動現象の包括的説明を与え, この事実から帰結されるニュートリノ質量の物理について主に理論的観点から解説する. スーパーカミオカンデ実験の最新結果については, 本号「話題」欄の梶田氏の記事を参照していただきたい.
著者
藤田 光孝 吉田 満帆
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.945-952, 1995-12-05
参考文献数
20
被引用文献数
1

炭素は,固体としてグラファイトとダイヤモンド,そしてフラーレン固体の多形を持つだけでなく,アモルファスカーボンとしても活性炭やカーボンブラック,カーボンファイバー等,様々な姿で我々の周りに存在している.そのような炭素材料の持つ多形性をミクロな視点で眺めると,それらはspからsp^3すなわち2配位から4配位迄の結合形態の混在と,熱力学的に安定なグラファイトの6員環ネットワークへの,5員環や7員環などの欠陥の混入という,炭素原子ネットワークの2種類の乱れに起因していると考えられる.これは同じIV属のシリコン原子には見られない,炭素の極めて特異な性質である.フラーレン分子群の発見は,その後者を特にクローズアップさせたと言うことができるであろう.我々は,炭素ネットワークのとり得る多形性を,多面体の観点で眺めることにより,その幾何学的構造を系統的に議論する.更に,負の曲面を持つ多種多様なフラーレンネットワークにおいて,ミクロなレベルの構造に関する幾何学的パラメータによって,その電子状態がいかに多様性を持って変化するかを示す.
著者
坪田 誠
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, 1998-08-05
著者
会誌編集委員会
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.594, 2016-09-05 (Released:2017-01-09)

物理学70の不思議フェルミ粒子系の数値計算はなぜ難しい?:負符号問題

1 0 0 0 OA 光るシリコン

著者
金光 義彦 小川 哲生 舛本 泰章
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.979-986, 1994-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
43

電子工学・固体物理学・無機化学の各分野で一大研究領域を形成しているシリコンに,ある発見がきっかけとなって新たな研究分野が生まれた.ちょうどこれらの境界領域にある新分野のキーワードは「光るシリコン」である.可視光の波長領域で非常に強く光る,この魅惑的な「光るシリコン」をなるべく易しく紹介することにしよう.
著者
末松 大二郎 松岡 武夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.586-593, 1988-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
4

四つの力ならびに物質と時空とを統一する理論として最近注目を集めている超弦理論と, そこから導かれる低エネルギー有効理論について概括する. 超弦理論は高次元時空において定義されており, 4次元以外の余分な次元の空間がコンパクト化される結果として4次元理論が得られる. 導出される低エネルギー有効理論は, このコンパクト空間の位相構造と密接に関係している. いわゆる標準模型を含むなど, 低エネルギー有効理論として満すべき現実的条件と, コンパクト空間の位相構造との関係や超弦理論の実験的検証の可能性について述べる.
著者
伊敷 吾郎 西村 淳 花田 政範 百武 慶文
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.436-440, 2015-06

ブラックホールが熱力学的性質をもつ,という話をご存じだろうか.例えば,ブラックホールに対してエントロピーを定義することができ,実際ブラックホールの合体などの過程において,そのエントロピーが増大することは,古くから知られている.また,ブラックホールの周辺で粒子と反粒子が対生成するような量子効果を考えると,いわゆるホーキング輻射をとおして,ブラックホールが少しずつエネルギーを放出していることがわかる.この性質をもとに温度を定義することもできる.通常,熱力学的に振る舞う系は,非常に多くの力学的自由度からなっており,その系を巨視的に見ることによって初めて熱力学的性質が現れる.ではブラックホールの場合,その力学的自由度は何なのか.そもそも,アインシュタイン方程式の解として導かれるブラックホールが,どうしてエントロピーをもつのか.その起源は何なのか.この問いに答えるには,ブラックホールの内部構造を理解する必要がある.しかしブラックホールの中心には特異点が存在するため,重力の古典論である一般相対性理論では答えることができない.それ故この問題は,一般相対性理論を超えた重力の量子論的定式化の言わば試金石として,現在に至るまで盛んに議論されてきた.超弦理論は,重力を含む4つの基本的な相互作用と物質粒子を統一的に,量子論的に記述する理論である.しかし,従来の超弦理論は摂動論的に定式化されたものにすぎず,ブラックホールの熱力学的性質を理解するのは困難に見えた.ところが1990年代に入って状況は一変する.超弦理論におけるソリトン解が発見され,それがブラックホールを表すことがわかったからだ.特に1997年,Maldacenaはこのような考えを発展させて,ブラックホールの内部構造を超対称ゲージ理論で記述できると主張した.この超対称ゲージ理論は,ソリトン解のまわりの超弦の励起に対する有効理論として導かれる.また,この超対称ゲージ理論が定義される時空は平坦であり,ブラックホールが存在する時空よりも低い次元をもつ.このためMaldacenaの主張は,ブラックホールなどをホログラムのように記述できるとするホログラフィック原理を具体的に実現するものとも見なせる.この考え方を応用して,様々なゲージ理論の強結合領域における性質を,ブラックホール的な時空における古典論的計算から明らかにする研究も精力的に行われている.Maldacenaのもともとの主張を検証するには,超対称ゲージ理論の強結合領域での解析が必要となるため,一般には非常に難しい.これまでに得られている証拠の多くは,高い対称性や可解性のおかげで解析的な計算が可能な場合に限られていた.しかし,より一般的な場合に対して第一原理に基づく検証を行うには,超対称ゲージ理論の数値シミュレーションが最も直接的な方法であり,2007年頃からそうした研究が発展してきた.特に最近の研究では,これまでほとんど手がかりがなかった,ブラックホールが小さく,その地平面付近でも重力の量子論的な効果が無視できない場合について検証がなされた.
著者
綿村 哲
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.756-762, 2000-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
9

アインシュタインの一般相対性理論と場の量子論を統合する理論体系は,幾何学そのものの拡張を必要としているのか? 量子重力理論の最も有力な候補と思われている超弦理論の最近の発展に伴い,非可換空間または量子空間と呼ばれる拡張された"空間"が理論の中に自然に現れることが分かってきた.このことは,アインシュタイン理論におけるリーマン幾何学の役割を,量子重力においては非可換幾何学という体系で置き換えなければならないことを意味している.本稿では,非可換空間上の場の理論を見ながら,非可換幾何学とはどのようなものなのか,なぜそれを考える必要があるのかを解説する.
著者
五十嵐 彰
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.16, no.9, pp.590-591, 1961-09-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
12
著者
西川 哲治
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.306-316, 1959-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
40
著者
江沢 洋
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.30-37, 1970-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
34

正準交換関係の表現という立場から量子力学を見ると, 自由度が有限の場合と無限の場合のあいだに本質的なちがいが発見される。このことを, ここでは測度論の力をかりて説明し, 続いて, Bose の多体系に対するBogoliubovの処法の必然性など, 無限自由度の量子力学系におこる興味ふかい現象を述べる。
著者
平川 浩正
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.102-108, 1984-02-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
44

Newton の万有引力の法則は簡潔でみごとな形をしているが, くわしくはどこまで正しく成立っているのであろうか. この法則の実験的な基礎について概観する.
著者
川合 知二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.667-674, 1997-09-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
49
被引用文献数
1

走査トンネル顕微鏡(STM)の極微な針先によって, 固体表面分子の電子状態が実空間で観測でき, DNA塩基など1分子の識別が可能になってきた. 驚くことに, 吸着DNA分子を針先で一つ一つ移動操作することも可能になりつつあるが, そこには針先1原子と吸着1分子との波動関数の重なりや, 場合によっては極度に集中した電界など"極微表面"に特有な支配原理がある, この表面分子の世界では, 分子間および表面との相互作用に起因した華麗な2次元超構造が形成されることもSTMによって明らかになってきた. "極微な表面の科学"として, STMによるDNA分子の"識別", "操作", "自己組織化"の元となる原理を基礎から説き起こし, 研究の現状と今後の発展性について述べる.
著者
佐甲 徳栄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.358-365, 2013-06-05
参考文献数
11

前期量子論の時代に,フントによって経験的に導かれたフントの規則は,同じ軌道配置を持ちスピンが異なる一群の状態間のエネルギー順序を予測する三つの規則であり,原子構造を理解するための基本法則として,物理・化学を専攻する者ならば,学部の講義において,一度は必ず触れることのある法則である.一方,この規則が成り立つ起源については,数十年に及ぶ議論の歴史にもかかわらず,未だ統一した見解が得られていない.本稿では,例外が少なく,原子のみならず,分子や量子ドットについても成り立つことが知られている第一規則に着目し,これまでの歴史を振り返りつつ,この規則の起源について,著者の最近の研究結果に基づいた解説を行う.