- 著者
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篠原 好幸
- 出版者
- 社団法人 有機合成化学協会
- 雑誌
- 有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.138-146, 1977-02-01 (Released:2009-11-13)
- 参考文献数
- 40
- 被引用文献数
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フェノールは合成樹脂, 合成繊維, 農医薬, 界面活性剤等の原料中間体として有機化学工業における重要な基礎物質の一つである。現在全世界で約300万トン以上使用されている。フェノールはF.F.Rungeによって1834年コールタール中より発見され, Karbolsäaure (石炭酸) と命名された。19世紀後半における有機化学工業の発達にともない, フェノールはコールタール中のタール酸より分留により工業的に製造されるようになった。フェノール誘導体の伸張はタール分留のみによる供給に不足をきたし, 合成法が研究され, ベンゼンスルフォン化法 (硫酸法) が1890年代にドイツで企業化された。フェノールは軍用火薬ピクリン酸の原料としても大量使用され, 第1次, 第2次大戦において合成フェノール工業は急速に拡張され, 硫酸法の改良, 塩素化法の企業化等の技術的な発達を促した。第2次大戦中アメリカで発達した石油化学工業はフェノール合成法にも原料, 技術の面で大幅な進展を遂げ, ラッシヒ法の工業化, クメン法の発見, 工業化技術の完成, トルエン法の企業化と目覚ましい展開を見るに至った。現在全世界のフェノールは90%以上が合成法により供給され, コークス炉ガス, コールタール, 石油よりの回収いわゆる天然フェノールは10%以下である。また合成法の80%はクメン法によって生産されている。本稿はフェノール合成法の概略について歴史的に振り返り, 技術的経済的問題についても述べたい。