著者
前島 信
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.97-110, 1971

この論文の目的は,待ち行列系に費用の概念を導入した上で,系を特長づける要素を逐次的に変化させることによって,系の最適な制御を考えることである.その要素としてはサービス機構をとりあげ,とくに現時点の行列の長さとサービス率とに依存して,次の時点のサービス率をきめるような政策を考え,単位時間当りの期待総費用を最小にするようなサービス率を変更する行列水準を決定する問題を考察する.行列水準によってサービス率を変える場合,ある客のサービス中に行列がサービス率変更水準に達したら,すぐサービス率を変えるか,あるいはサービス中の客だけは前からのサービス率でサービスを行ない,次の客から新しいサービス率にするかを区別しなければならない.そのことを指摘した上で,今まで一般的なかたちではとりあげられていない後者のタイプについて述べ,次に2つのモデルの違いを数値例を使って検討する.さらにこの問題がセミ・マルコフ決定過程で定式化できることについての考察もつけ加えておく.
著者
二宮 嘉行
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.117-130, 2000-03-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本論文では確率場の変化点検知に関する検定を扱う.特に例として,正規分布に従う二元配置のデータにおける交互作用の変化点をとりあげる.このような検定では,帰無仮説のもとで尤度比統計量が,同一の正規分布に従いかつ正の相関をもつ複数個の確率変数の最大値となることが多々あり,棄却域を構成するためにはその統計量の裾確率の評価が必要となる.この裾確率の導出は多重積分の数値評価を必要とし,場が大きくなると計算が困難になる傾向をもつ.そこで正確な裾確率を得ることはあきらめ,かわりに裾確率の上限を容易な計算で与えることを考える.これは保守的な検定を構成することを意味する.まず,本来は異なるタイプの裾確率を評価するチューブ法に工夫を加え,今の問題に適応させることによって上限を得る.次に,これと過去の結果である一次Bonferroni不等式,改良Bonferroni不等式とを組み合わせ,正確な裾確率により近い上限を得る.この手法をチューブ適用法と名付け,Bonferroni不等式による方法と比較するため,ある正の相関をもつ正規定常確率場の最大値の裾確率と,上で述べた検定統計量の裾確率とを各手法で評価する.そして,特に確率変数間の相関が高い時にチューブ適用法が有効であることを確認する.
著者
杉浦 成昭
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.95-116, 1980-12-15 (Released:2009-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

昭和55年度共通1次試験の得点分布は正規分布が適合しないことが今年2月上旬新聞に報じられた.そこで正規分布の不適合はどの位か,よりよく適合する分布は何か調べたところ分布は負に歪んでいて,Johnson systemのSB分布が割によく適合することがわかった.SB分布により2つの母数を与えれば得点の順位と偏差値のわかる表を与えた.
著者
Manabu Kuroki Masami Miyakawa
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
Ouyou toukeigaku (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.107-121, 2002-11-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

本論文では,変数間の因果関係が線形構造方程式モデルと因果ダイアグラムで記述できる場合に,いくつかの処理変量に対して外的操作をおこなったときの反応変量への因果的効果を同時介入効果と呼び,これを推測する問題を考える.Pearl and Robins(1995)によって定義された同時介入効果はノンパラメトリックな分布として与えられている.そこで,本論文では,その平均と分散に着目し,線形構造方程式モデルの下でこれらの特徴量の明示的表現を与える.次に,この同時介入効果の平均と分散を線形回帰モデルを用いて推定するためにはどのような回帰モデルを設定すべきかを考え,同時介入効果の平均と分散がその回帰モデルの母数によってどのように表現されるかを明らかにする.
著者
佐々木 豊史 宮崎 浩一 野村 哲史
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.113-128, 2006-12-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本研究は,ヨーロピアン・コール・オプションの評価において,次の2つの問題にアプローチするものである.第一の問題は,原資産収益率プロセスが生成する確率分布として正規分布以外の分布を採用した場合に,その確率分布を仮定したオプション価格を,正規分布と高次キュムラント(3次,4次)を用いた確率分布を仮定したオプション価格によってどの程度近似できるか?第二の問題は,ジャンプ成分を含む原資産収益率プロセスが生成する確率分布(MertonのJump-Diffusionモデル,以下MJDモデル)に基づくオプション評価においてどの程度の強さで中心極限定理が働くか?について高次キュムラントの観点から考察することである.第一の問題に対しては,MJDモデルが生成する確率分布を,4次までのキュムラントを用いたEdgeworth展開によるオプション評価近似式を導いたうえで,正確なオプション価格との比較を数値実験によって試みる.第二の問題に対しては,MJDモデルによる一日の原資産収益率を表す確率分布をN回畳み込んだ確率分布がN日の原資産収益率の確率分布であることに着目して,オプションの残存期間Nが大きくなるに従って中心極限定理が働き,MJDモデルによるオプション価格がBS価格に近づくスピードを数値実験により確認する.また,このオプション価格の収束において3次,4次のキュムラントの影響がどの程度であるかも合わせて検討する。数値実験結果からは,本オプション近似評価モデルの精度は,オプション満期がごく短い場合を除いて相応に高いこと,また,オプション評価において中心極限定理が働くものの,オプションの満期が100日以下の場合には,高次キュムラントの影響を無視することはできないことがわかった.
著者
大塚 雍雄 吉原 雅彦
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.29-39, 1976-12-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
2
被引用文献数
3 5

2変量の関係について,なめらかな曲線をあてはめることが不都合な場合,あるいは,あてはめるべきモデルが未知の場合に,連続的ないくつかの直線的傾向,すなわち,折れ線をあてはめる方法を検討した.折れ線としては,最高2つの折曲点をもつ3つの直線のあらゆる組合せを対象とした.折曲点が未知の場合には,折曲点を点として与えるか,あるいは区間にあると仮定するかによらて,折曲点の求め方は2つの方法に分けられる.いずれの方法も,手法的には線形モデルによる推定,検定方法を用いる.2つの方法について数値例をもって示すとともに,稲め登熟歩合の推移に関する適用例を述べた.
著者
宮津 和弘 佐藤 忠彦
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.161-182, 2015
被引用文献数
1

本研究は,心理的財布と関連して,消費者の心的構成を考慮した購買点数の生起メカニズムをモデル化し,その現象を明らかにすることを目的とする.本研究では,①消費者の購買時における心的状況を表す心的負荷,②心的負荷と閾値パラメータの大小関係で心理的財布の切換が生じる構造を表現する階層ベイズ閾値ポアソン回帰モデルによる購買点数生起メカニズムの2つをモデル化する.モデルの推定は,マルコフ連鎖モンテカルロ法で実施する.小売店舗のID付POSデータを用いて実証分析した結果,消費者の購買意思決定には購買時の心的状況が間接的に影響し,心理的財布の違いによって購買点数の生起メカニズムに差があることを示した.また,副次的であるが,提案モデルを用いると消費者ごとの給料日が推定できることも示した.

1 0 0 0 OA 訂正とお詫び

出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.70-70, 1990 (Released:2009-06-12)
著者
矢島 美寛
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-19, 1994-09-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
99
被引用文献数
1 1

長期記憶モデルは系列相関の強い定常時系列データを解析する目的で,Mandelbrot and Van Ness, Granger and Joyeux, Hosking等によって提案された.従来のポピュラーなモデル,自己回帰移動平均モデルを,補完,代替するモデルとして注目を浴び,1980年代以降理論,実証両側面に於て盛んに研究されている.本稿では長期記憶モデルの由来,現在までに得られている理論的結果,実際データへの応用を概説するとともに,今後の課題について議論する.
著者
Qi 旗 坂本 亘 白旗 慎吾
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.135-150, 1998-03-16 (Released:2010-03-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

回帰分析は統計的データ解析の本流を成し,多くの分野で適用されている.回帰関数としては通常単一の滑らかな関数を考えることが多いが,回帰関数がある点を境に折れ曲がっているように見えることがある.そのような場合は,回帰関数として単一の関数を想定するよりも,独立変数に2つの相があり,各相で異なる回帰関数を当てはめる方が自然であろう.本論文では回帰関数として1次式を考え,単純直線回帰を帰無仮説,ある未知の点(変化点)を境にして連続ではあるが折れ曲がった2相直線回帰を対立仮説とした検定問題に対する尤度比検定を考える.この場合,検定統計量の厳密分布を求めることは現実には困難であり,漸近的にも標準の漸近理論の仮定が成立せず,したがって対数尤度比検定統計量にカイ2乗近似を用いることができない.この点に関し多くの研究者により様々な議論が展開されてきたが,現在のところ実用的な結論は得られていない.本論文ではそれらの議論を検証し,尤度比検定統計量の実用に耐える近似帰無分布を導いた.さらに,誤差分散の大きさ,独立変数の配置により帰無分布がどう変わるか,また検出力がどう変わるかを調べ,棄却点が分散の大きさにはあまり依存しないことを示した.また,高い検出力を持つ配置が経験的に得られた.
著者
南 美穂子
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.73-78, 1996-11-25
被引用文献数
3
著者
樋口 伊佐夫 佐藤 文昭
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.159-167, 1981-03-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
8

放射線の生体に及ぼす危険度の評価に,発がんによる寿命短縮の重要なことが認識されつつあるが,これに関する定量的研究はまだあまり見られない.筆者らは,その一人佐藤らによって得られた,マウスについての一連の系統的な実験結果から,電離放射線の危険度に関する知見を得るため,まず寿命短縮に対する個々の死因の寄与を計測することを考えた.いまあるきまった照射条件の場合について調べるものとする,考察の対象となるマウスの集団は非照射群(対照群)と照射群とから成る,その各々について,平均寿命ならびに各死因ごとの死亡発生率と死亡時の平均年令が実験データから得られるので,問題は二群間における平均寿命の差に対する各死因の寄与を,それらの情報を用いて算出することである.このためには単純に死因別に,平均死亡年令と死亡発生率の積の二群間における差をつくればよさそうに見えるが,実はそのような量を測っても有用な情報とはならないことが多い.筆者らは,寄与を表わす量として,いくつかの式を試行錯誤的に実験データに適用してみた結果,解釈がつきやすく役に立ちそうな量として,本文の式(4),(5),(14)によって定義されるGtを得た.それをこのような場合の寄与として用いることを提案ずる.この量の導出にあたっては,特定のデータへの適用の妥当性を指針としたが,結果の式には一般的な意味づけもできるので,適用し得る場合が少くないと思われる.
著者
宮川 雅巳
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-79, 1989-01-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
12

推定量の偏り,分散,さらに一般的な誤差の尺度をノンパラメトリックに推定するために,ジャックナイフ法,ブートストラップ法など様々なリサンプリング方式が提案されている,本稿では,ジャックナイフ法に関連した直交配列表を用いたリサンプリング方式とその影響分析への応用について提案する.このリサンプリング方式の基になるのは,Hartigan(1969)のTypical Value Theoremであり,本方式で得られるリサンプルはtypical setを形成し,かつ釣合型となる.また,本方式による影響分析では,個々の観測値が注目する統計量に与える影響を,分散分析の加法モデルにより主効果と交互作用としてとらえる点に特徴がある.2つの数値例を通じてその実用性を検証する.