著者
飯田 孝久
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.147-153, 1994
被引用文献数
1 9

時間や資源に制限がある場合に,因子数の大きい実験を行う方法に,2水準の過飽和実験がある.その一つとして,L12の各列とそれらの2列交互作用列に因子を割付けるWuの計画がある.しかし,この計画では因子間に交互作用が存在した場合に,それらが他の主効果と完全に交絡する場合がある.本論文では,L12の11列に一般平均を加えた12列を6列ずつの集合に分け,各々の集合から1列ずつ取り出した2列の間の交互作用列である36列からなる計画を提案した.これにより,主効果が他の列と完全に交絡することを避けることができた.また,このような配列が2通りあることがL12の5列の同値類から示すことができた.この計画の性質として,内積の平方の平均による評価が,今までに提案された2水準過飽和実験と比較してもそれほど悪くないことが確認できた.さらに,因子間に交互作用がありそうな因子については,因子の割付けに工夫すれば,その影響を抑えることができることを示した.これらの性質は,L12の3列および4列間の関係の一意性から導くことができた.
著者
王 敏真 清水 邦夫 上江洲 香実
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.29-44, 2013-08-30
参考文献数
13
被引用文献数
1

東北地方太平洋沖地震およびそれ以前72時間の地震の緯度・経度・マグニチュードデータの解析を例に取り,方向統計学の利用について述べる.緯度・経度データから生成される角度データに対して,累積和プロット,累積平均方向プロット,ランク累積和プロットを用いて変化点の検出を試み,検定による変化点の検出と比較する.また,角度データについてJones-Pewsey の分布をフルモデルとし,ハート型,von Mises,巻き込みCauchyの各分布をサブモデルとしたときのモデル選択と分布の適合を議論する.マグニチュードデータについては指数分布を特別な場合として含む分布の利用を提案し,分布の適合を検討する.マグニチュードと角度の結合分布としてシリンダー上の分布について考察し,データへの分布の当てはめを行う.さらに,ディスク上の修正Möbius分布の適用可能性について議論する.
著者
松井 秀俊 三角 俊裕 横溝 孝明 小西 貞則
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1-2, pp.25-45, 2016 (Released:2016-12-01)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

非線形混合効果モデルを用いた,経時測定データに対するクラスタリング手法について考察する.本論文では,基底関数展開に基づく非線形混合効果モデルを適用することで,経時観測データを平均効果関数および個体ごとの変動を表したランダム効果関数を用いて関数データとして表現する.次に,ランダム効果関数集合に対して,自己組織化マップやウォード法等の手法を適用してクラスタリングを行う.提案した手法を,微小粒子状物質データ,気象データおよび台風経路データへ適用し,有効性を検証する.
著者
野間 久史
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.67-86, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
40
被引用文献数
4 1

一般的な調査・実験研究において,欠測はほとんど避けられない問題であり,統計解析において,適切な処理を行わなくては,バイアス・推定精度の低下が起こり得る.ほとんどの研究において,欠測は複数の変数にまたがって,個人ごとに異なるパターンで起こることが一般的であるが,このような条件下で,汎用的な統計ソフトウェアで実行することができる不完全データの解析手法は,現状ではわずかしかない.連鎖方程式による多重代入法(multiple imputation by chained equation; MICE)は,このような条件下で有効な解析を行うために開発された方法であり,その実践的な有用性から,近年,多くの統計ソフトウェアに実装され,さまざまな研究領域において普及しつつある.本稿では,非統計家を含めた,データ解析に携わる実務家・研究者を対象として,邦文によるMICEについての実践的な解説を行う.また,Clark and Altman (2003, J. Clin. Epidemiol. 56, 28-37) による卵巣がんの予後因子研究を事例として,Rのパッケージ mice を用いた解析方法について紹介する.
著者
清水 邦夫
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.55-59, 1988-09-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
丹後 俊郎 阿部 一洋 狩野 紀昭
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-18, 1990-10-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
15

ある人間集団の状態推移を分析する方法として,マルコフモデルがよく適用されている.このモデルでは個々の人間の状態推移の差異,つまり個人差を考慮していないが,実際には無視できない場合も多い.本稿では,推移確率が個人別の変量であってディリクレ分布に従うことを仮定する.個人ごとの推移確率は経験ベイズ推定量により推定する.個人差の有無の検定はスコア検定によって行う.具体例として状態数2の場合について,前立腺癌患者の状態推移のデータにモデルを適用する.また,シミュレーションによって個人ごとの推移確率の経験ベイズ推定量の性質を検討する.
著者
栗林 和彦 山本 成志 後藤 昌司
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-46, 1994

ロジスティック・モデルのあてはめには,通常,最尤法が用いられるが,小標本での解析結果の信憑性が問われていた.この場合の代替法として正確推測法があり,最近のコンピュータならびに計算アルゴリズムの発展によって実行可能性の問題に解消の兆しが見えてきた.<BR>本稿では,多変量シフト・アルゴリズムに基づく正確推測法の手続きを明らかにして,そのプログラムを開発し,正確推測法の適用可能性を吟味した.その結果,正確推測法は,小標本で説明変数がカテゴリー個数の少ないカテゴリー変数(2値変数も含む)である場合の最尤法の対照あるいは代替として利用できることを明らかにした.
著者
安宅 和人
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.71-87, 2015 (Released:2016-06-29)
参考文献数
6

多くの人がコンピュータを持ち歩くようになり,帯域が爆増した結果,コミュニケーション,調べ物,調達・物流,犯罪対応など世の中のほぼすべてが質的に変容した.富の創出もICT(情報通信技術)分野とその利活用に中心が移った上,現在の利益レベル以上に未来への期待を生み出すことが重要になった.今後この流れは止め難く,ほぼ全ての産業がICT化していく.ビッグデータの出現,計算能力の爆増,情報科学の進化が同時に起きている現在は「人間を退屈な数字入力,情報処理作業から開放」する情報産業革命のさなかにある.この革命的な変化の中で日本のビジネスが勝ち抜くためには,デバイス・領域を超えたマルチビッグデータ,強力なデータ計算力と情報処理技術,質と量で世界レベルのICT人材の3つが不可欠であるが,現状はいずれも国力に見合ったものとはいいがたい.特に人材は新卒層,専門家層のみならず,マネジメント層に至るまで深刻な状況.このような高スキル人材を,大きなスケールで生み出せ,再教育できるのは高等教育機関をおいて他に無い.アカデミアへの期待は大きい.
著者
井元 清哉 小西 貞則
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.137-150, 1999-03-31 (Released:2009-06-12)
参考文献数
22
被引用文献数
6 2

複雑な非線形構造を有するデータからの情報抽出を,B-スプラインに基づく非線形回帰モデルを通して行うとき,モデルのパラメータ推定は罰則付き対数尤度法に基づいて行われる.その際,平滑化パラメータと節点の個数の選択が,曲線推定において本質的である.従来は,その選択規準として,交差検証法と一般化交差検証法が主に用いられてきた.本論文では,平滑化パラメータと節点の個数の選択を情報量の観点から行い,曲線を推定する方法を提案する.また,実際のデータの分析および数値実験を通して提案する方法と従来の手法とを比較し,その特徴と有効性を検証する.
著者
加藤 拓巳
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.71-83, 2019 (Released:2020-04-21)
参考文献数
43

品質は,材料特性や製造技術等の客観的な要素と,美しさや心地よさ等の主観的な要素に分けられる.後者は,知覚品質と呼ばれ,近年は機能的な要素以上に重要視されている.自動車業界でも,知覚品質は大きな競争力の1つになっている.しかし,知覚品質の重要性は広く認識されながらも,主観的であるがゆえに,定量的な効果の推定は不透明なままであった.そこで,本研究の目的は,車のエクステリアの知覚品質が顧客の支払意思額に与える影響を評価することである.知覚品質の要素は,色,素材,仕上げのうち,これまで取り上げられた例の少ない仕上げを対象とした.仕上げは,「見切り線の有無」と「合わせ幅」の2つとし,同じスタイリングでありながら仕上げレベルが異なる2つの車を用意し,ランダム化比較試験によって検証を行った.ランダム化比較試験を行うにあたって,単純ランダム化で2群に割り当てた後,事前のリクルーティング調査で聴取した性別,年齢,世帯年収,保有メーカー,運転頻度,情報接触頻度等の項目で,各群の同質性を確認した.支払意思額は,仮想市場評価法の自由回答方式で聴取した.得られた支払意思額をブルンナー・ムンツェル検定で評価した結果,2つの車の間での差は有意となった.統計的な手法による定量評価は,商品の機能的な要素に着目されることが多いが,デザインの仕上げという感覚的な要素でも支払意思額という消費者視点で評価が可能である.
著者
奥井 佑
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1-2, pp.1-16, 2019 (Released:2019-11-02)
参考文献数
27

近年,細菌の検出数を示す16S rRNAデータを用いて, 疾患等の臨床アウトカムと関連する菌種を 特定する統計解析が広く行われるようになった. それに対応して解析手法も多く提案されるようになり, 解析手法の一つとして潜在ディリクレ配分モデル(LDA)が用いられている. 教師情報を利用したLDAとして, 教師ありトピックモデル(SLDA)やディリクレ多項回帰モデルを 伴うLDA(DMR)が提案されている一方で, それら手法は細菌データに対して応用されていないとともに, 一定の割合を持つトピックが抽出されないことが多くある. これら問題に対処するため,本研究ではDMRを 拡張したノンパラメトリックベイズトピックモデルを提案し, 既存のDMRやSLDAと予測性能を比較評価した. ノンパラメトリックベイズモデルでは, 潜在変数について無限の値を仮定し, 各潜在クラスが占める割合に傾斜性を 持たせることが可能となる.本研究では共変量値を もとに棒折り過程を生成する手法を トピックモデルに応用することで,共変量と関連するトピックを 抽出するノンパラメトリックベイズトピックモデルを考案した. 提案法について実際の細菌データに適用し性能を 評価したところ,トピック割合が比較的大きくなおかつ アウトカムと関連するトピックが抽出されるとともに, アウトカムに対して既存の手法を上回る予測性能を 持つことが示された.
著者
柳澤 幸雄 大隅 昇
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.51-71, 1980-01-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

数多くのクラスタリングの技法のうち連結性または距離の順位性のみに依存するsingle linkage法とcomplete linkage法を取り上げ,技法とクラスターの関係を"凝塊性"の立場から測るいくつかの基準量を用意し,クラスター数の評価を行う問題をとりあげる.さらにそれを利用して技法の性質,あるいは技法ごとのクラスター化の過程を推し測る方法として"感度分析"の考え方を導入する.そして布置の明確な人工データを用いて,感度分析の効用を実験により具体的に検討する.この実験を通して,感度分析が技法の性質と安定性,データの凝塊性の検討に有効であることを示す,
著者
濱崎 俊光 磯村 達也 大瀧 慈 後藤 昌司
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.179-190, 1999-03-31 (Released:2009-06-12)
参考文献数
33
被引用文献数
2 1

本稿では,Box & Cox(1964)が提案したベキ変換について,これまでに提案されている諸種のベキ変換の変型を概観した.また,正確に恒等変換(無変換)を含むように変換公式を修正したベキ変換の性質を,無構造データと有構造データの場合にわけて尤度関数とパラメータの推定値について修正を施さない通常の変換と比較し検討した.ベキ変換パラメータに依存したシフトは,無構造データの場合に平均のみに影響を及ぼし,有構造データの場合では変換後に想定されるモデルに定数項を含めることでモデルに固有のパラメータへの影響を回避できた.

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著者
小野瀬 宏
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.129-130, 1993-03-08 (Released:2009-06-12)
参考文献数
3
著者
辻谷 将明 左近 賢人
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.15-29, 2005-08-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
34
被引用文献数
2

従来,生存時間解析ではCox比例ハザードモデルが広範に活用されてきた.特に,共変量の値が時間とともに変動する時間依存型データが含まれる場合,その近似解法としてMayo updatedモデルやヨーロッパnew versionモデルが広範に活用されてきた.しかし,それらのモデルには,べースライン生存関数やベースライン累積ハザード関数の推定などに問題点が残されている.本稿では,部分ロジスティック回帰モデルを援用した部分ロジスティックモデルおよびニューラルネットモデルを提案し,ブートストラップ法による統計的推測を系統的に行う.実際例として,PBC(原発性胆汁性肝硬変)データを取上げる.肝移植を念頭においた,観測期間の任意時点における6ヶ月後の条件付き生存率の予後予測を通じ,提案手法を既存手法と数値的に比較する.
著者
柳本 武美 清水 央子
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 1983-06-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
26
被引用文献数
3 1

2次元分割表で,一方の元が順序づけられた目的変数を表わし,他方の元が説明変数によって個体を分類した群を表わすとする.離散型比例ハザードモデルは柔軟で扱いが容易な回帰型モデルを与える割には,未だ良く研究されていない.本稿では明確にモデルを定式化し,推論の規準としての部分尤度と全尤度を比較して,後者の有用性を主張する.またモデルが実用的であることを例をあげて示す.
著者
岩崎 学 阿部 貴行
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.49-60, 2006-07-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
8

打ち切りとトランケーションは,共に不完全データをもならす要因として,実際のデータ解析で遭遇することが多い.本論では,観測値xがある値c以下でのみ値が観測される場合について,切断点cを変化させることによる推定値への影響を考察する。cがパラメータの推定値に及ぼす影響を,尤度方程式から導かれる陰関数を用いて評価する.特に,応用上重要な指数分布および正規分布について,数値例を交えて詳しく議論する.陰関数の吟味により,打ち切りとトランケーションでは切断点cの影響が逆向きであること,およびトランケーションの場合にはcの影響が観測データ数に依存しないことを示す.