著者
遠山 緑生 白鳥 成彦 大久保 成 木幡 敬史 和泉 徹彦 田尻 慎太郎
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.67-88, 2012-03-20

嘉悦大学では、デジタルネイティブ世代へのICT リテラシー教育内容を再検討し、2010 年度からの新カリキュラムの主要科目としてICT スキルズ・ICT ツールズ・ICT メディア・ICTコモンズの4 科目を開講した。この4 科目は「デジタルネイティブ世代を意識した、コンピュータ<で>教えるICT 教育」をコンセプトとする。4 科目全体の目標は、いわゆる初年次教育の一環として、PC やネットの利用をきっかけとしつつ、広く知的生産において必要とされるリテラシーの育成と、知的生産を通じたコミュニケーションの経験を積んでもらうことにある。ICT を活用した情報の<入力-編集-出力>という一連のプロセスを標準形とし、これを4 科目それぞれの特色を持つ様々な形のプロジェクト課題として実践する。本論文ではこれらの科目に関して、その概要と目標を述べるとともに、現在の科目編成に至る過程で行われた議論をまとめ、紹介する。
著者
古閑 博美
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.145-157, 2003-10-01

今また、論語が注目されようとしている。それは、「心の乱世」と呼ばれる現状があることと無縁ではない。社会や教育の荒廃は、人びとの行動や精神に悪影響をおよぼし、取返しのつかない状況を生む。大学教育の現場で、学生の学力低下や態度不良が指摘されるようになって久しい。社会人としてふさわしい態度を形成するうえで、徳行や礼が実行されない環境を放置してよいはずがない。歴史的経緯からも、論語は、日本にもたらされた当初から教育的価値の高い書物として活用されている。古典に親しむ教育を検証し、かつて実行された日本のよき教育的指導のあり方を、再び学ぶ必要があると思われる。筆者の実践から、現代の大学生であっても、礼をともなった交誼のあり方に心地よさを感じている者が少なくないと断言できる。政治経済・福祉・教育を取り巻く情勢は厳しい。少子化に歯止めが期待できない今日、大学の今後も決して楽観できるものではない。しかし、人間が作った社会である以上、人間がその現実を直視したうえで是正し、よりよいものにしていくしかない。論語に学ぶ意味も、まさにその点にあると思う。
著者
南 憲一
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.23-44, 2011-03-20
被引用文献数
1

意思決定は、Simonにより「プログラム化しうる意思決定」と「プログラム化しえない意思決定」に分類される(Simon,H.A.,1977pp.45-49)。Ansoffは、企業における意思決定を、戦略的な意思決定、管理的な意思決定、日常業務的な意思決定の3つのカテゴリーに分類して示している(Ansoff,H.I.,1988pp.4-9)。島田は、組織を意思決定のネットワークと捉え、企業における意思決定の連鎖を(社長、部長、課長の分類で)公式組織における目標の展開として捉えている(島田達巳=高原康彦、2007pp.50-51)。また、意思決定のプロセスをSimonは、情報活動、設計活動、選択活動、再検討活動として示している。一方、白井とBarabbaはビジネスモデルの創造や評価にシミュレーションを適用する方法を提案している(白井宏明、2001pp.8-10、Barabba,V., et al.,2002)。本研究では、経営における特に「プログラム化しえない意思決定」の支援ツールとしてシミュレーションを用いることを提案する。具体的に、経営教育におけるビジネスゲームでのシミュレーションの適用例を、島田の意思決定の連鎖とSimonの意思決定のプロセスに合わせて示す。そして、Simon、島田の問題解決のプロセスを実習において適用した効果について考察する。
著者
内藤 勝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.85-107, 2003-10-01

最近の中国経済は、農工において発展が著しい。DGPは1兆2000億ドル(2000年)で世界第6位、しかし、12億7513万人の人口を抱えているので1人当たりの所得は847ドル(約9.3万円前後。1元は15円で計算した。)にすぎない。農林業のGDPに占める割合は17.4%である。1999年の食糧生産(米、小麦、トウモロコシ、コウリヤン、粟、その他の雑穀、いも類)の総計は5億839万tを記録している。(但し、2000年は減反政策により4億6212万tに減じた。)その内小麦は1億1440万t、米(籾)は2億0499万tを生産し米麦とも世界第1位である。その他、トウモロコシ1億262万tで世界2位、大豆1370万tで世界第4位である。かつて大躍進運動(1958〜60)の失敗と自然災害(華北の旱害、華南の水害)によって多数の餓死者を出した中国農業とは根本的に異なる。特に1978年以降、改革開放政策により農家生産請負責任制(以下個別経営と呼ぶ)が盛んになり最近(2000年)は、野菜、果物生産の増加も著しい。野菜は約4.2億tで世界1位、果物も約6.2億tで世界1位である。野菜の生産額は2500億元(3.7兆円)を上回り食糧についで2番目の額に急成長している。しかも、90年以降世界へ野菜が輸出され始め2000年のわが国への野菜輸出量は、139万tで15.8億ドルに昇る。1991年以降、我が国の農産物輸入はアメリカを抜いて中国が第1位となった。特に、華北平原(黄河がつくった中国東部の平原を指す。)からの野菜の輸入が急増している。そこで、この生産増加の要因が何処にあるのか?それを水と農法の面から考察した。特に、低エントロピー源としての水は、農業及び工業いや人類の生存にとって欠くことができない。中国農業は80年代に入るや灌漑設備が充実してきた。華北平原では黄河流域の地下水を電気ポンプで揚水する方法が90年代より急激に広まった。乾緑地帯に水が導入された事は、画期的なことであった。華北における成長要因は自由化政策による野菜、果物の需要の増加、その生産を可能にした地下水による灌漑の整備と言えよう。他方、地下水消費の増加は黄河の断流をもたらし塩害をまねいている。ここに農産物貿易の問題点がある。尚、本稿は2001〜2年にわたる山東省青州市近辺の農業調査をまとめたものである。(筆者は1980年遼寧大学の王將方氏、瀋陽大學の翁麗霞氏と瀋陽近辺の調査をしたことがある。それは個人農場制初期の調査である。あれから10年の中国農業の変化も視点に入れ考察した。)
著者
中村 博幸 内田 和夫
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1-13, 2009-03-30

大学教育が転換を迫られて久しい。それは、学問の成果を伝授する大学から、学生が学習を進めるための大学への転換であり、大学自体も3つの類型へと分化する。大学・学生類型によって、学生の特性とそれに応じた教育の重点は異なる。カリキュラムの重視が要請される。教育目標とそれに沿った科目構成と科目内容、学生類型にマッチし、学習階梯をしっかり組んだものが求められる。初年次教育の重視も大事となる。「生徒から学生になること」を目標に、接続教育、転換教育、導入教育、の視点を踏まえる必要がある。それが2年次以降の学生生活の充実につながる。 ゼミナールは、卒業論文の執筆も含め、研究プロセスの体験に教育目標がある。それが4年間のゼミナールで達成されるよう学習階梯をしっかり組むべきである。1年と2年のゼミナールでは、大学での学びの考え方と習慣の獲得、リサーチ・スキルの習得、研究プロセスの体験・習得が柱となる。2年次のプレゼミナールは専門プレゼミナールと位置づけ、所属コースの専門分野の基礎を学び味わいつつ、リサーチ・スキルの習得、研究プロセスの体験・習得を再度積み重ねるものと考えると役割が整理できる。これからのゼミナールの視点と方法としてはアクティブ・ラーニングという考え方が重要となろう。
著者
Clay Simon
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.83-93, 2002-03-30

本稿は東京にある聖オルバン・アングリカン/エピスコパル教会においてシリーズで行われた公開講座「キリスト教と文化」の講座の一つとして、2002年1月27日に行った講演をもとに加筆、修正したものである。この講演で論じたことは16世紀及び17世紀の日本におけるカトリック伝導研究の入り口部分であり、今後はこの研究を更に進めて特に当時の日本人のキリスト教改宗者の果たした役割について研究を深めたい。
著者
小山 裕
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.115-131, 2009-03-30

平成20年12月、明治以来100年以上続いた民法第34条に基づく公益法人制度が、準則主義と公益認定による新たな制度に衣替えした。この世紀の改革とも言える公益法人制度改革がいかに始まったのかについては、あまり知られていない。公益法人制度改革は、平成12年の「行政改革大綱」によるものとしばしば誤解されるが、実はそこで予定されていたものではなく、内閣官房行政改革推進事務局公益法人室スタッフの問題提起によって、新たに政府の方針として浮上したものである。その背景には、先行して行われていた行政委託型公益法人に関わる改革、KSD事件を契機とする国所管公益法人の総点検及び中間法人法の成立があるが、この時代背景がなければ、公益法人という官の世界では「重宝な道具」と考えられていた制度を、官の裁量による公益の認定と法人設立の許可(主務官庁制)から、準則による法人格の取得(準則主義)と第三者委員会による公益性認定へという劇的な変革が行われることはなかったであろう。本稿は、「行政改革大綱」から公益法人制度抜本改革への取組みが閣議決定された平成14年3月までの内閣官房の動きを示したものであるが、これは改革前史のほんの序章にすぎない。