著者
大平 明彦
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.47-51, 2015-03-25 (Released:2015-05-25)
参考文献数
4

モノビジョン法に基づく屈折矯正眼鏡の,後天性の両眼複視に対する軽減効果について報告する.眼筋麻痺による複視に悩む3名の高齢患者にモノビジョン眼鏡を処方した.これらの患者は斜視手術あるいはプリズム眼鏡の適応のない症例であった.眼鏡の屈折度数は,優位眼は遠方視に合わせ,非優位眼は近方視にあわせた.3患者とも眼鏡による複視の軽減を明瞭に自覚できた.1名は外出時には常用したが,2名は随時使用にとどまった.モノビジョン眼鏡は,複視を改善する他の方法では満足できなかった患者には試みられてもよい方法と考えている.

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著者
後関 利明 吉川 眞男 谷川 篤宏 近藤 峰生
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.76-80, 2014-03-25 (Released:2014-07-11)
参考文献数
5
著者
鈴木 利根
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.22-27, 2014-03-25 (Released:2014-07-11)
参考文献数
20
被引用文献数
5

重症筋無力症は神経筋接合部が障害される自己免疫疾患である.抗アセチルコリン受容体抗体や抗MuSK抗体が病因と深く関わり,その他にも抗横紋筋抗体などの関連自己抗体が近年報告されている.発症年齢は幼児期と高齢者に2峰性に頻度が高いとされるが,高齢発症の重症筋無力症患者が最近は増加傾向にある.高齢発症者では抗アセチルコリン受容体抗体や抗横紋筋抗体の陽性率が高いことなどから,若年発症者とは病態が異なるとの示唆もある.重症筋無力症の至適治療に関して基準になるエビデンスはいまだないが,抗コリンエステラーゼ阻害薬に比べて,この20年間は副腎皮質ステロイド薬や,免疫抑制剤,胸腺摘出などの免疫治療の比率が増加している.
著者
鈴木 幸久 清澤 源弘 若倉 雅登 石井 賢二
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.405-410, 2017-12-25 (Released:2018-01-29)
参考文献数
14

眼瞼痙攣は,眼輪筋の間欠性または持続性の不随意な過度の収縮により開瞼困難をきたす疾患である.局所性ジストニアの一型であり,病因についてはまだ解明されていないが,脳の機能的異常が原因と考えられている.眼瞼痙攣患者の自覚症状の訴えは,「まぶしい」,「眼を開けていられない」など多様で,特に初期では眼輪筋の異常収縮がみられないことも多い.眼瞼痙攣と鑑別を要する疾患として,ドライアイ,眼瞼ミオキミア,片側顔面痙攣,開瞼失行症などが挙げられるが,これらの疾患は眼瞼痙攣に合併することもある.診断は,問診,視診,既往歴などから総合的に判断するが,特に明らかな眼輪筋の異常収縮がみられない症例に対しては,速瞬,軽瞬,強瞬などの誘発試験を用いると有用である.また,薬剤性眼瞼痙攣も存在するためベンゾジアゼピン系薬などの服薬歴の聴取も必要である.ポジトロン断層法と18F-フルオロデオキシグルコースを用いて本態性眼瞼痙攣患者21例,薬剤(ベンゾジアゼピン系)性眼瞼痙攣患者21例,ベンゾジアゼピン系薬を使用している健常人24例の脳糖代謝を測定した.本態性および薬剤性眼瞼痙攣群では,健常群63例と比較して両側視床の糖代謝亢進がみられ,薬剤使用健常人においても視床の糖代謝亢進がみられた.眼瞼痙攣では,基底核-視床-大脳皮質回路の賦活化によって視床の糖代謝亢進がおこっており,それが病因の一つになっていると推測した.
著者
清澤 源弘 小町 祐子 髙橋 真美
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.411-420, 2017-12-25 (Released:2018-01-29)
参考文献数
15

眼瞼痙攣治療を成功させる10のヒントやコツをまとめた.1)痙攣の状態の把握には「自己評価表(若倉表)」を用いる.原発性眼瞼痙攣でも薬剤性眼瞼痙攣でも多くが陽性を示す.瞬目テストは患者に「軽瞬」「速瞬」「強瞬」をさせる.治療歴の聴取もおこなう.2)涙液の質と量の評価.ドライアイ症例には点眼治療とプラグ挿入が有効.3)MRI画像診断:眼瞼痙攣は基本的に正常.片側顔面痙攣では血管圧迫がよく見つかる.4)「眩しさ」「痛み」への治療として遮光眼鏡を処方.5)眼輪筋へのボトックス投与.重症度と反応を診て,量を増減.副作用を十分説明する.6)内服薬の併用,Clonazepam(リボトリール®)などの内服薬を投与する場合もある.「抑肝散加陳皮半夏」や「抑肝散」投与も可能.7)症状を軽減する知覚トリックを利用する方法で,クラッチ眼鏡も有効.8)最終手段として眼輪筋切除術がある.9)医療者側からの積極的な働きかけが有効.「眼瞼・顔面けいれん友の会」の紹介や,「目と心の健康相談室」の利用もすすめる.10)患者のニーズを把握するよう努めることが肝要.原点に戻り苦痛を除く工夫を怠らない.
著者
青松 圭一 中尾 雄三 浦瀬 文明
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.326-330, 2014

症例は近医からの紹介で51歳女性の保育士.視力低下,眼痛,羞明の症状出現の前に,手足の関節痛,頬部の発赤の伝染性紅斑を疑わせる症状があった.両側視神経乳頭浮腫を認め,眼窩部MRIではSTIR 法にて両側視神経の腫大と高輝度信号を認めた.血清学的検査では抗ヒトパルボウイルスB19IgM抗体価の上昇が確認された.治療はステロイドパルス療法を1クール施行.治療前の視力右眼(0.7),左眼(0.3),中心フリッカー値両眼13Hzは,治療後視力右眼(1.2),左眼(1.2),中心フリッカー値右眼37Hz,左眼35Hzまで回復した.発症約3か月後には抗ヒトパルボウイルスB19IgM 抗体価の低下を確認できた.視神経症(炎)の原因疾患の一つとしてヒトパルボウイルスB19感染症も鑑別にあげるべきと考える.
著者
中村 誠 上田 香織
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.293, 2017-09-25 (Released:2017-10-06)
参考文献数
22

日本神経眼科学会は,厚生労働省網脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班と合同で,レーベル遺伝性視神経症(Leber hereditary optic neuropathy:LHON)の指定難病認定を目的に,認定基準策定ならびに全国疫学調査を行った.認定基準は,特徴的な主徴候と検査所見を基にLHONを確定例,確実例,疑い例,保因者に区分した.日本眼科学会専門医制度認定施設ならびに日本神経眼科学会会員在籍施設の合計1,397施設に対して,2014年1年間に新規で発症し,ミトコンドリアDNA 3460, 11778, 14484変異のいずれかを有するLHON確定例と確実例の症例数ならびに男女の内訳をアンケート調査した.その結果,新規発症患者数は117人(95%信頼区間:81~153人)と推計された.11778変異例が86.4%,男性が90%以上を占め,ともに海外に比較し,高い割合であった.発症年齢の中央値は30歳を超えており,既報よりも高齢であった.認定基準の策定と患者数の特定は,当初の目的達成に加えて,一般眼科医の啓蒙ならびに研究者や企業の治療開発意欲の促進に資するであろう.
著者
若倉 雅登
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.25-32, 2017-03-25 (Released:2017-03-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1

ロービジョンや視覚障害は,専ら眼科で測定される視力や,視野などの視機能検査をもとに定義される.ここには,左右眼の信号が統合できない複視や,混乱視は入らないが,これらは生活の質を落とすばかりでなく,二次的な精神症状を惹起させる場合もある.また,自己制御不能の羞明,眼痛,霧視は,しばしば高次脳機能障害として生ずる,視覚ノイズと考えられる.羞明と眼痛は,一部共通する神経伝達の異常と考える仮説が提唱されている.これらの症状は,眼瞼痙攣をはじめとして,頭頚部外傷後遺症,脳脊髄液減少症,抗精神病薬,サリン中毒などを含む神経薬物中毒,パニック障害などの一部の精神疾患でみられる.私は,こうした中枢性の視覚ノイズの発現機序として,例えば視床が感覚入力におけるローパスフィルターに例えられているように,視覚情報処理過程に存在する各種のフィルター機能を想定し,その脱落や低下によってさまざまな視覚ノイズが発現する概念を提唱した.これらの中枢性視覚ノイズは,神経眼科学に残された大きなテーマであると同時に,非常に重篤な日常の視覚生活能力低下になるにもかかわらず,社会医学的には,保険や福祉サービスから完全に抜け落ちてしまっているもので,大問題であると考えられることを論じた.
著者
若杉 安希乃
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.298-305, 2014-09-25 (Released:2014-12-17)
参考文献数
19

漢方薬の処方決定は,本来,漢方医学的診断によって「証(しょう)」が決まり,証に随って行われる.そのため,西洋医学の診断名における疾患を対象に漢方薬を選択することは,本来の漢方治療とは言えない.漢方医学においてもエビデンスが必要とされ,漢方薬を病名投与した臨床研究が増加している.眼科疾患に対して漢方治療を実践するための試み,および眼科検査の活用の可能性について紹介し,漢方治療が眼科領域に定着することを願う.
著者
鈴木 武敏
雑誌
神経眼科 = Neuro-ophthalmology Japan (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.138-141, 2001-06-25
被引用文献数
4