著者
上村 俊一 佐藤 邦忠 小野 斉 三宅 勝
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.85-92, 1977-09-30 (Released:2008-05-15)
参考文献数
38

1.54例のホルスタイン種乳牛と1例の短角牛の計55例に,副腎皮質ホルモンによる流産ならびに分娩誘発を試みたところ,妊娠日数60~135日の6例中3例が無効だったほかは,いずれもデキサメサゾン,ベタメサゾン10~20mg,1~3回注射で流産あるいは分娩誘発に成功したが,67.3%に胎盤停滞が発生した。2.妊娠日数250~275日の3例,277~338日の6例ならびに自然分娩牛(対照)8例の計17例について,分娩前後の血中性ステロイドホルモンをRIA法で測定した結果,奇形児妊娠(長期在胎)牛の分娩前血中エストロジェン値の低いことが注目された。3.分娩予定日の7~10日前に分娩させた6例のウシの1乳期の乳量を,試験前及び試験後の産次の乳量と比較したところ,試験時産次の乳量は試験前産次の乳量より平均600kg近い減乳であったが,試験後産次の乳量との比較ではほとんど増減はなかった。4.分娩誘発が次回受胎率に及ぼす影響を自然分娩牛の場合と比較してみたが,差はみられなかった。
著者
前多 敬一郎 大倉 永也 内田 恵美 束村 博子 横山 昭
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.153-158, 1988 (Released:2008-05-15)
参考文献数
17

乳子による吸乳刺激の代用としての乳腺神経の電気刺激の有用性を検討するため泌乳あるいは発情周期中の雌ラットの乳腺神経をウレタンあるいはチオペンタール麻酔下で電気刺激し,それぞれオキシトシン(OT)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌に及ぼす影響を調べた。泌乳ラットにおける乳腺神経の電気刺激はOTの分泌を促進した。しかし,この電気刺激は発情周期中にあるラットにおいてもそのOTの分泌を増加させた。さらに,伏在ならびに正中神経の電気刺激も泌乳及び正常発情周期中のラットにおいて血中OT濃度を増加させた。これらの神経の電気刺激による血中OT濃度の変化はすべて類似していた。しかし,乳子による吸乳時にみられるような変化とは異なっていた。泌乳ラットにおけるチオペンタール麻酔下における乳腺神経の電気刺激は伏在神経の電気刺激に比較して平均血中LH濃度およびLHパルスの頻度並びに振幅を抑制した。以上の結果から,乳腺神経あるいは他の神経の電気刺激が非特異的に働いてオキシトシン分泌を促進したと考えられる。しかし,LH分泌に関しては伏在神経刺激対照群に比較して乳腺神経の電気刺激により強く抑制されたことから,乳腺神経刺激が吸乳刺激に変わる刺激として用いられる可能性は残されていると考えた。
著者
丸山 宏二
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.145-154, 1991-09-25 (Released:2008-05-15)
参考文献数
32

マストミス Praomys(Mastomys)couchaの膣垢周期と発情周期の連関性を検討し,膣垢により判定した発情周期および妊娠期の各時期における血漿progesterone濃度の消長を追究して以下の成績を得た.1.成熟非妊娠マストミスの大半(70%)の発情周期では,多数の白血球と有核細胞から成る膣垢(LN期)が6~9日間隔で1~3日間にわたり出現した.LN期の2日前には小型の有核および角化細胞に白血球の混在する膣垢が,前日には有核および角化細胞のみから成る膣垢がそれぞれ観察され,LN期出現後は白血球主体の膣垢に移行した.排卵検査の結果,LN期出現の2日前,前日および1日目は,それぞれ発情前期(PE),発情期(E)および発情休止期第1日目(D1)に相当するものと判断された.2.PEおよびEが各1日,Dが5日間から成る7日周期中の血漿progesterone(P)濃度は,E以後増加してD1に頂値となり,D3には基底値に減少し,7日周期で形成された発情周期黄体からのP分泌は3日以内に減退することが知られた.3.Dが11~13日間持続する長周期のD7のP濃度は高く,7日周期D1の1.8倍で,この動物の示す長周期が偽妊娠である可能性が示唆された.4.妊娠中の血漿P濃度は,妊娠1日目から5日目にかけて増加し,以後7日目にかけて減少して12日目までは低く推移したが,13日目以後胎盤徴候の出現に一致して再び増加し,15~19日目にプラトー値に維持された後,分娩日にかけて急減するという二峰性の変化が観察された.
著者
坪田 敏男 金川 弘司 高橋 健一 安江 健 福永 重治
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.203-210, 1985-12-25 (Released:2008-05-15)
参考文献数
6
被引用文献数
11 15

1982年と1983年の2年間にわたって,多頭集団飼育されているエゾヒグマの性行動を観察した。個体識別した雄と雌グマ各20頭においては,特定のクマ同志で交尾をするということはなく,無差別に交尾を行っていた。交尾様式は,乗駕開始(Mounting),腰部の突き(Pelvic thrusting),後肢の痙攣様運動(Quivering),および乗駕終了(Dismounting)の順で行われ,その一連の行動に要する時間は平均23分であった。このうちの後肢の痙攣様運動は射精に伴う運動と推測された。乗駕は,1日の中では朝7時頃と夕方19時頃に多かった。また,繁殖期の中でも6月上旬にそのピークがみられた。雌グマは発情すると雄グマの乗駕を許容するようになり,その継続期間はかなり長くなる傾向を示したが,個体差も大きかった。雄グマは10歳以上になると年齢が進むにしたがいしだいに乗駕回数が減少するのに対して,雌グマは年齢によって雄グマに乗駕される回数に変化はなかった。
著者
岩崎 説雄 塩谷 康生 門司 恭典 中原 達夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.198-203, 1989
被引用文献数
1

牛卵胞卵子の体外成熟および体外受精,ならびに胚の発生過程に伴うグルコース6リン酸脱水酵素(G-6-PDH)活性の変動を明らかにした。さらに牛初期胚を二分し,分離胚の一方でG-6-PDH活性を組織化学的に測定し,他方で染色体検査により性判別を行い,活性の性差を調べ,酵素活性の差を利用した胚の性制御の可能性を検討した。<BR>胚の性差の検討においては,実験1ではランダムに卵巣より卵胞卵を採取し,実験2では卵胞卵を多数有する卵巣より卵巣別に卵子を採取して,体外成熟,体外受精に供した。G-6-PDH活性は組織化学的に測定し,染色強度により強,中,弱,不染の4スコアに区分して表した。<BR>G-6-PDH活性は成熟卵子,前核期卵子から8細胞期にかけて大きな変化は認められなかったが,桑実期では活性を示さなかった。370個の胚より分離した631個の割球を染色体検査に供し,このうち116個(分裂中期核板像を示した胚の58.6%)の胚で核型が判別した。これらのうち正常2倍体の雌胚39個のG-6-PDH活性は,雄胚51個の活性に比べやや低いが有意差は認められなかった。染色体異常を含め,X染色体の数により分類したG-6-PDH活性は一定の傾向はみられなかったが,多倍体胚(XXX,XXXX,XXXXXX)のいくつかは高い活性を示すことが認められた。<BR>以上の成績より,牛初期胚G-6-PDH活性の性差は明確ではないが,多倍体胚のいくつかは高い活性を示すことが認められた。
著者
下向 東紅 徳田 一弥 古賀 新 稲富 秀雄 加納 康彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.133-139, 1990

前立腺の維持と発達を支配する主な因子はテストステロンで,これが前立腺で5&alpha;-レダクターゼによりジヒドロテストステロンに変換されて作用することは,知られている。5&alpha;-レダクターゼは,プロラクチンとテストステロンによって活性化されることが,報告されているが,前立腺の発達におけるプロラクチンの役割は不明の点が多い。<BR>マストミスは,雌にも二本の排泄管を有する,組織学的に機能的な前立腺を持つことを特徴とするネズミ科の動物である。本実験では,この動物雄,雌を供試して,前立腺の発達におよぼす,ホルモンの影響を検討した。供試動物に,去勢,脳下垂体前葉移植,テストステロン投与,プロモクリプチン投与の処置を単独または併用して施した。去勢によって前立腺重量は減少したが,テストステロンのみの投与によって回復したことから,前立腺は雌雄ともにアンドロジェンに依存していることが示された。さらに去勢動物に対する,脳下垂体前葉の移植によっても前立腺重量が回復した。この場合,反応は雄に比べて雌の方が大きかった。テストステロン投与あるいは脳下垂体前葉移植によって,上皮細胞の増殖が起こることも組織学的に認められた。これらの成績から,マストミスの,特に雌の前立腺の維持あるいは発達は,プロラクチンに対して感受性が高いと考えられ,これらの作用の影響を研究するためには,マストミスは,有用な動物であると考えられた。
著者
梶原 豊 後藤 和文 徳丸 元幸 木庭 正光 中西 喜彦 小川 清彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.191-198, 1988 (Released:2008-05-15)
参考文献数
27
被引用文献数
8 8 3

牛卵胞卵子を体外成熟,体外受精後,体外培養することにより得た胚(胚盤胞~脱出胚盤胞)について割球数を算定し,染色体を詳細に分析して,染色体数の異常を調べるとともに性染色体分析による性判別も試みた。体外受精後8~12日目に得た胚盤胞~脱出胚盤胞を供試胚とし,0.04μg/mlのコルセミドと5%仔牛血清を含むTCM 199(25 mM HEPES緩衝)中で90~180分培養した。ついで0.5%クエン酸ナトリウム溶液で低調処理後,メタノール:酢酸:水=3••2••1で一次固定,スライドガラス上で酢酸を滴下することにより二次固定を行い,ギムザ染色後,割球数と染色体解析を行った。主なる結果は次の通りであった。1.胚盤胞,拡張胚盤胞および脱出胚盤胞にみられる平均割球数は,それぞれ68.2±34.7,100.1±51.5,128.1±56.8個と変異は大きいが,ステージが進むにつれ,平均割球数は有意に増加した。2.中期核板出現率は81%前後でステージによる変化はなく,中期核板数は胚盤胞期で平均4.3個,拡張胚盤胞期で5.7個,脱出途中~胚盤胞脱出胚盤胞期で5.1個であった。3.雌雄判別率は胚盤胞,拡張胚盤胞,脱出胚盤胞とステージが進むにつれ53.7,65.1,82.4%と有意に増加した。判別可能であった全胚のうち雌は35個,雄は29個であった。4.染色体数の異常胚率は発生ステージが進むにつれて,やや増加する傾向を示した。また雌胚の方が雄胚にくらべて染色体異常が多い傾向がみられた。