著者
後藤 和文 高橋 陽子 中西 喜彦 小川 清彦
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.27-33, 1988

鶏の受精卵を使って,本来は卵殻内で行われる胚の発生•発育を,台所用ラップを利用した培養器内で行い,ふ卵開始後72時間以降の一連の過程を観察した。いずれの個体もふ化までに至らなかったが,培養器素材とした台所用ラップ2種(ポリエチレン製,ポリ塩化ビニリデン製)の胚発生に及ぼす影響を比較し,また,減菌した粉末状卵殻を添加することによる奇型発生への影響についても検討し,以下の結果を得た。<br>1) 本実験条件下での胚の生存率は,ふ卵開始後10日目で60.7%,15日目で41.1%であり,20日目までにほとんどの胚は死亡した。しかし20日以上生存したものが107例中7例見出され,最長生存日数は23日であった。<br>2) 培養胚の成長状態は,体重,くちばし長,脚部の長さ等を指標とした場合,通常ふ卵区のものに比べ,ふ卵12日目以降,徐々に遅延がみられ,16日目以降では約2日の遅延が認められた。しかし,体肢の大きさとは無関係に,ふ化日に近づくにつれ,通常ふ卵区のものと同時期に,卵黄の腹部への吸収が行われた。<br>3) 培養器素材として用いたポリエチレン製ラップは,ポリ塩化ビニリデン製のものに比して生存率が高かった。<br>4) 卵殻の添加により,くちばし•足指における奇型の発現が低減することを見出した。
著者
中西 喜彦 岡本 正幹
出版者
九州大學農學部
雑誌
九州大学農学部学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, 1964-12
被引用文献数
1

本実験は,幼雛の恒温性の発達に対する低温環境の影響を知るために行なつた.すなわち白色レグホン種(WL),横斑プリマスロック種(BPR)およびこれらの交雑種(BPR×WL)の雄雛を,20~24℃と30~33℃の環境温度で,孵化時から4週齢時まで飼育した.その間,死亡率,直腸温,体重および甲状腺I^131-放出率などを測定した.その結果はつぎのとおりである. 1) 飼育期間中の雛の死亡率は,30~33℃ 区では非常に低いのが認められた.しかし20~24℃区では,どの品種においても高く,低温環境に対する抵抗性の点では,BPRがWLよりも強いことが観察された. 2) 品種による体温の違いは,30~33℃区では認められなかつた.しかし20~24℃区では,WLが1日齢時でのみBPRやBPR×WLよりも有意に高い値を示した. 3) 20~24℃区の雛は30~33℃区の雛よりも,1週間ほど恒温性の発達が早く,約2週齢で成鶏の体温の水準に達した.しかしながら成長の点では20~24℃区のものの方が有意に低い値を示した. 4) 甲状腺I^131-放出率については両温度区の間での差は認められなかつた.一方30~33℃区においては,BPRがWLやBPR×WLよりも有意に高い値を示した.また甲状腺重量は,BPRでのみ20~24℃区の雛が30~33℃区の雛のものより重い値を示した.
著者
中西 喜彦 吉永 健一郎 小川 清彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.81-88, 1985-03-15

雄ミニ豚について, 体尺測定値, 精液採取の状況, 精液性状および精液性状の季節変動について追究した.その結果は次のとおりである.1.体重は12カ月齢で37.8kg, 36カ月齢で76.5kgであった.体高と体長は12カ月齢で47.9cmと93.7cmであり, 36カ月齢で59.2cmと112.0cmであった.2.精液は擬ひん台を用いて, 手圧法で容易に採取できた.精液採取は4〜5カ月齢から可能であるので, ミニ豚は一般豚より数カ月性成熟が早いと思われる.3.射精時間は5分52秒(n=86)であり, 一般豚より1〜2分短かった.濃度精液の分画数で分類した射精型は1回型;52.3%, 2回型;33.8%および3回型;1.9%であった.4.精液量は10〜20カ月齢で134ml(n=57), 液体部量;99.6ml(n=86)および膠様物量;20.6g(n=84)であった.1ml当りの精子濃度は1.5億であり, 液体部のpHは7.8であった.さらに, 28〜38カ月齢では精液量;152.0ml(n=63), 液体部量;120.0ml(n=61)および膠様物量;26.0g(n=59)と精液量は月齢とともに若干増加する傾向が認められたが, 精子濃度やpHは変らなかった.5.精子全長をミニ豚, ハンプシャー種およびバークシャー種で測定した.平均精子長はそれぞれ56.4μm, 55.0μmおよび55.8μmであった.精子長はミニ豚で他の2品種より若干長かった.6.ミニ豚の精液性状の季節変動について2年間にわたって調べた.精液量, 精子濃度およびpHでは季節変動ははっきりしなかった.しかし, 奇形精子率が冬季に増加した.これは制限給餌で飼育しているので, 雄豚が低栄養状態になったためと考えられる.
著者
後藤 和文 高橋 陽子 中西 喜彦 小川 清彦
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.27-33, 1988-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
12

鶏の受精卵を使って,本来は卵殻内で行われる胚の発生•発育を,台所用ラップを利用した培養器内で行い,ふ卵開始後72時間以降の一連の過程を観察した。いずれの個体もふ化までに至らなかったが,培養器素材とした台所用ラップ2種(ポリエチレン製,ポリ塩化ビニリデン製)の胚発生に及ぼす影響を比較し,また,減菌した粉末状卵殻を添加することによる奇型発生への影響についても検討し,以下の結果を得た。1) 本実験条件下での胚の生存率は,ふ卵開始後10日目で60.7%,15日目で41.1%であり,20日目までにほとんどの胚は死亡した。しかし20日以上生存したものが107例中7例見出され,最長生存日数は23日であった。2) 培養胚の成長状態は,体重,くちばし長,脚部の長さ等を指標とした場合,通常ふ卵区のものに比べ,ふ卵12日目以降,徐々に遅延がみられ,16日目以降では約2日の遅延が認められた。しかし,体肢の大きさとは無関係に,ふ化日に近づくにつれ,通常ふ卵区のものと同時期に,卵黄の腹部への吸収が行われた。3) 培養器素材として用いたポリエチレン製ラップは,ポリ塩化ビニリデン製のものに比して生存率が高かった。4) 卵殻の添加により,くちばし•足指における奇型の発現が低減することを見出した。
著者
梶原 豊 後藤 和文 徳丸 元幸 木庭 正光 中西 喜彦 小川 清彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.191-198, 1988 (Released:2008-05-15)
参考文献数
27
被引用文献数
8 8 3

牛卵胞卵子を体外成熟,体外受精後,体外培養することにより得た胚(胚盤胞~脱出胚盤胞)について割球数を算定し,染色体を詳細に分析して,染色体数の異常を調べるとともに性染色体分析による性判別も試みた。体外受精後8~12日目に得た胚盤胞~脱出胚盤胞を供試胚とし,0.04μg/mlのコルセミドと5%仔牛血清を含むTCM 199(25 mM HEPES緩衝)中で90~180分培養した。ついで0.5%クエン酸ナトリウム溶液で低調処理後,メタノール:酢酸:水=3••2••1で一次固定,スライドガラス上で酢酸を滴下することにより二次固定を行い,ギムザ染色後,割球数と染色体解析を行った。主なる結果は次の通りであった。1.胚盤胞,拡張胚盤胞および脱出胚盤胞にみられる平均割球数は,それぞれ68.2±34.7,100.1±51.5,128.1±56.8個と変異は大きいが,ステージが進むにつれ,平均割球数は有意に増加した。2.中期核板出現率は81%前後でステージによる変化はなく,中期核板数は胚盤胞期で平均4.3個,拡張胚盤胞期で5.7個,脱出途中~胚盤胞脱出胚盤胞期で5.1個であった。3.雌雄判別率は胚盤胞,拡張胚盤胞,脱出胚盤胞とステージが進むにつれ53.7,65.1,82.4%と有意に増加した。判別可能であった全胚のうち雌は35個,雄は29個であった。4.染色体数の異常胚率は発生ステージが進むにつれて,やや増加する傾向を示した。また雌胚の方が雄胚にくらべて染色体異常が多い傾向がみられた。
著者
柳田 宏一 小山田 巽 中西 喜彦 東條 英昭 小川 清彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.19-24, 1978-03-19

野草地周年放牧牛における乳量, 乳成分および乳質の分娩季節の違いによる変動について調べた.また, 哺乳牛における体重の増減量の変化を乳量の変化と関連させ検討した.供試牛は, 鹿大農学部入来牧場で昭和43年から昭和52年の間に繁殖に供した母牛実頭数35頭を用いた.すなわち, 泌乳量と乳質については延べ70頭を, 1日当たりの体重変化については延べ169頭(哺乳牛126頭, 非哺乳牛43頭)をそれぞれ対象に測定した.なお泌乳量については, 泌乳前期(0〜3カ月)と後期(4〜6カ月)に分け分析した.1.野草地周年放牧牛の泌乳量は舎飼牛の泌乳量に比較して, 前後期ともに各季節を通して少なかった.分娩季節による泌乳量の違いは, 哺乳前期は季節間で差がなく, 冬季でもかなりの量が維持されていた.しかし, 後期の泌乳量は秋季と冬季の間で有意な差が認められ(P<0.05), 冬季は他の季節に比較して低下していた.これらのことは, 前回で得られた生後3カ月(哺乳前期)の子牛の発育に季節差がなく, その後(哺乳後期)の発育は冬季で著しく低下する事実とよく一致している.2.乳成分についてみると, 比重は冬季に低下し(P<0.05), 脂肪率や無脂乳固形分も秋季から冬季に低下する傾向にあったが, その差は有意でなかった.アルコール陽性乳の出現率は夏季に高くなり季節間で有意な差を示した(P<0.01).3.哺乳牛における1日当たりの体重増減量をみると, 哺乳牛は冬季に同時期の非哺乳牛に比べ著しい体重減少を示し, その程度は, 哺乳後期に比べ前期で顕著であった.
著者
小川 清彦 中西 喜彦 柳田 宏一 根比 長幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.123-134, 1983-03-15
被引用文献数
1

鹿児島県下の草地利用型牧場について, 草地造成面積, 牧場数, 管理主体の性格, 飼養管理, 家畜および草地の問題点, および冬季の貯蔵資料の状況などを分析した.その結果は次のとおりである.1.鹿児島県下の総草地造成面積は1961年から1980年までの間に6,205.0ha造成されている.また, その約半分の3,163.6haが1966年から1970年までの5年間に造成されたが, 現在までも一定の草地造成が行われている.2.牧場数を管理主体別に区分すると, 公共牧場 : 47牧場(2,027.9ha), 農業公社牧場 : 12牧場(399.7ha)および一般牧場 : 230牧場(3,681.2ha)の計289牧場である.3.飼養管理についてみると, 肉用牛では調査した31牧場中周年放牧61.3%, 夏季放牧32.3%および舎飼い6.4%の牧場数になっている, 一方, 乳用牛では14牧場中舎飼い50.0%, 夏季放牧28.6%および周年放牧21.4%の牧場数となっている.4.各牧場の問題点のおもなものは雑草繁茂が肉用牛では74.2%の牧場で, 乳用牛でも50.0%の牧場で指摘されている.さらに, 施肥量の不足や草地利用法のまずさがそれぞれ半数近い牧場で指摘されている.5.冬季飼料の貯蔵状況をみると, 肉用牛で61.3%の牧場で, 乳用牛で28.6%の牧場で不足している.粗飼料確保についてみると, 肉用牛で乾草調製を54.8%の牧場で行い, さらに25.8%の牧場でサイレージを調製している.また, 61.3%の牧場で稲ワラを購入している.乳用牛では乾草調製を42.9%の牧場で行い, サイレージ調製を78.5%の牧場で, また, 稲ワラは57.1%の牧場で購入している.6.繁殖牛の受胎率は, 肉用牛, 乳用牛ともに60%以上の成績を示す牧場数は50%以下と少なかった.これは産草量の不足や牧草貯蔵法の未熟さと密接に関係しているように思われる.