著者
古川 雄祐 平岡 信弥 和田 妙子 菊池 次郎 加納 康彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理學雜誌 = Folia pharmacologica Japonica (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.138, no.1, pp.26-32, 2011-07-01
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

ベンダムスチン(トレアキシン<sup>&reg;</sup>)はプリンアナログ様骨格にアルキル基が結合したハイブリッドな抗がん薬である.作用機序はDNAアルキル化が主体と考えられ,代謝拮抗作用については明確な結論は出ていない.がん細胞に作用させた場合に他のアルキル化薬に比べて多彩な作用を示すのが特徴で,(1)架橋形成~DNA鎖切断によるネクローシス誘導,(2)DNA損傷チェックポイント活性化によるp53依存性アポトーシスおよび活性酸素種(ROS)を介するp53非依存性アポトーシスの誘導,(3)分裂期チェックポイントの阻害による分裂期細胞死(mitotic catastrophe)誘導,(4)DNA修復阻害,(5)遺伝子発現調節,(6)早期のS期停止誘導などが報告されている.このような多様な作用機序を有することが,アルキル化薬を含む他の抗がん薬と交差耐性を示さない,単剤で従来の標準併用化学療法を上回る成績を示すなどの優れた特徴を生んでいると考えられる.ベンダムスチンは1963年に旧東ドイツにおいて開発されたが,90年代に入ってから本格的に臨床試験が行われ,低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(瀘胞性リンパ腫,小細胞リンパ腫),マントル細胞リンパ腫,慢性リンパ性白血病に対する有効性が確立している.現在は再発・難治例が適応となっているが,初発の低悪性度非ホジキンリンパ腫を対象としてリツキシマブ+ベンダムスチンと現在の標準的治療であるリツキシマブ+CHOP(シクロフォスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)を比較する第III相試験が行われ,無増悪生存期間の中央値において前者が有意に優れていた.さらに現在,中悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞性リンパ腫,末梢性T細胞リンパ腫),多発性骨髄腫への適応拡大のための臨床試験が行われている.副作用としては血液毒性,リンパ球減少による日和見感染,消化器毒性(食欲不振,悪心,便秘)などがあるが,重篤なものではない.脱毛,末梢神経障害は認めない.ベンダムスチンは今後,さまざまな悪性腫瘍において第一選択の薬剤となる可能性がある.
著者
菅野 茂 須藤 有二 澤崎 坦 澤崎 徹 加納 康彦 松井 寛二 森 裕司
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.433-439, 1980
被引用文献数
5

東京大学農学部附属牧場コロニーのシバヤギ55頭を対象にRaBA-Super Systemを用い, 血清総蛋白以下16項目の臨床血液化学値の測定を行った。<BR>1) ビリルビン, コレステロール, TTT, ALPおよびCPKのバラツキが著しかったが, 計測不能の項目はなかった。<BR>2) 年齢による差がみとめられ, 血糖, ChE, ALPおよびCPKは育成群が, 血清総蛋白およびアルブミンは成熟群が高値を示した。<BR>3) 雌成熟群におけるGPTおよびBUN値は秋, 冬に比べ, 夏に有意に低い値を示した。<BR>4) トリグリセライドおよびアルブミンについて, RaBA法と用手法の同時比較を行ったところ, 測定法による差がみとめられた。
著者
下向 東紅 徳田 一弥 古賀 新 稲富 秀雄 加納 康彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.133-139, 1990

前立腺の維持と発達を支配する主な因子はテストステロンで,これが前立腺で5&alpha;-レダクターゼによりジヒドロテストステロンに変換されて作用することは,知られている。5&alpha;-レダクターゼは,プロラクチンとテストステロンによって活性化されることが,報告されているが,前立腺の発達におけるプロラクチンの役割は不明の点が多い。<BR>マストミスは,雌にも二本の排泄管を有する,組織学的に機能的な前立腺を持つことを特徴とするネズミ科の動物である。本実験では,この動物雄,雌を供試して,前立腺の発達におよぼす,ホルモンの影響を検討した。供試動物に,去勢,脳下垂体前葉移植,テストステロン投与,プロモクリプチン投与の処置を単独または併用して施した。去勢によって前立腺重量は減少したが,テストステロンのみの投与によって回復したことから,前立腺は雌雄ともにアンドロジェンに依存していることが示された。さらに去勢動物に対する,脳下垂体前葉の移植によっても前立腺重量が回復した。この場合,反応は雄に比べて雌の方が大きかった。テストステロン投与あるいは脳下垂体前葉移植によって,上皮細胞の増殖が起こることも組織学的に認められた。これらの成績から,マストミスの,特に雌の前立腺の維持あるいは発達は,プロラクチンに対して感受性が高いと考えられ,これらの作用の影響を研究するためには,マストミスは,有用な動物であると考えられた。
著者
沢崎 徹 森 裕司 加納 康彦
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.23-38, 1979-01-31 (Released:2010-12-09)
参考文献数
8

1.シバヤギに関する形態学的資料を整備する目的で, できる限り自然に近い状態に保定した雄を用い, 断面解剖学的に検討を加えた。2.胸部, 腹部, 骨盤腔部の各臓器, および筋の解剖学的位置関係を明らかにした。3.これらの成績の詳細は, Fig.2~Fig.14に示した。
著者
高木 省治郎 須田 啓一 小松 則夫 大田 雅嗣 加納 康彦 北川 誠一 坪山 明寛 雨宮 洋一 元吉 和夫 武藤 良知 坂本 忍 高久 史麿 三浦 恭定
出版者
The Japanese Society of Hematology
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2274-2280, 1986

Five patients with malignant lymphoma in whom primary chemotherapy had failed were treated with high-dose chemotherapy using AAABC regimen, total body irradiation, and transplantation of cryopreserved autologous marrow. Complete remission was achieved in all five patients. In these patients, the recurrence of malignant lymphoma did not occur during the follow up time of 2 to 59 months after autologous bone marrow transplantation. Three of them are alive in continuous remission for 33, 49, and 59 months, respectively. In one of these three patients, acute lymphoblastic leukemia developed 44 months after bone marrow transplantation. However, successful chemotherapy resulted in a complete remission of leukemia, he is alive in remission. The remaining two patients died of pneumonia and respiratory failure 72 days and 82 days after bone marrow transplantation, respectively. Our results show that intensive chemoradiotherapy and autologous-marrow transplantation can produce a prolonged remission in patients with malignant lymphoma in whom conventional chemotherapy has failed.